公開日
2018/09/23

補助犬の繁殖犬飼育ボランティアとは

補助犬を育成するためには、パピーウォーカーと呼ばれる犬の飼育ボランティアがありますが、繁殖犬を預かるボランティアもあります。メス犬の場合、団体によっては母犬の出産や子犬のお世話をすることもあるボランティアです。今回は、補助犬の繁殖犬飼育ボランティアについてご紹介します。

補助犬の繁殖犬飼育ボランティアとは

補助犬とは

補助犬(身体障がい者補助犬)は、身体障がい者の自立と社会参加を助けるために、身体の不自由な人の目や手、足となってお手伝いをする特別な訓練を受けた犬のことをいいます。補助犬には、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の3種類の犬がいます。

■盲導犬

盲導犬は、視覚障がいのある人が、街中を安全に歩けるようにサポートする犬のことで、ハーネス(胴輪)を付け、盲導犬使用者に「障害物、曲がり角、段差」を教えてくれます。

■介助犬

介助犬は、肢体不自由のある人の日常生活動作をサポートする犬のことです。落としたものを拾って渡す、手が届かないところにあるものを持って来る、ドアや冷蔵庫、引き出しの開閉、スイッチを押す、歩行介助、立ち上がりや移乗の補助を行います。

■聴導犬

聴導犬は、聴覚障がいのある人に生活の中の必要な音を知らせて、音源まで誘導する犬のことをいいます。インターホン、電話やFAX、キッチンタイマー、赤ちゃんの泣き声、車のクラクション、自転車のベル、非常ベルなどのさまざまな音を教えてくれます。

出典:厚生労働省 身体障害者補助犬

補助犬の育成について

補助犬はペットではありません。身体障害者補助犬法に基づき、日本全国の補助犬の訓練事業者が、特別な訓練を行って犬を育成し、国家公安委員会、国が認めた指定法人で補助犬の認定を受けて「補助犬」となります。

多くの補助犬を育成するには、訓練犬や訓練犬の候補犬となる犬を確保しなければなりません。ブリーダーなどから子犬を購入する、育成団体が自家繁殖を行って子犬を確保する、動物保護管理センターなどで保護された保護犬から適性を判断し育成する(聴導犬の場合)といった方法で、訓練候補となる犬を育てていきます。補助犬の中でも「盲導犬」や「介助犬」の犬種は、ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーが多いです。

繁殖犬と繁殖ボランティア

繁殖ボランティアは、補助犬に適正のあると判断された血統の犬を残すための繁殖犬を、一般の家庭でボランティアさんが飼育するボランティアです。犬種は「盲導犬」や「介助犬」の育成団体ではラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーの繁殖犬が多いです。

補助犬の育成団体は、毎日様々な業務を行います。補助犬使用者のフォロー、犬の訓練やケア、事務作業、広報、イベント、パピーウォーカーの家庭訪問などを行わなくてはならず、全ての犬を施設の中で飼育することは、犬に負担やストレスがかかります。繁殖犬は、ストレスなく心も身体も健康な状態でいることが、後に生まれて来る子犬のためでもあるのです。

繁殖ボランティアは、要請があったら育成団体へ犬を引き渡し団体で交配や繁殖を行い、およそ8歳で繁殖犬を引退するまで、繁殖ボランティアさんのお家で毎日のんびりと暮らします。団体によっては、ボランティアさんが自宅で子犬のお世話をするケースもあります。

繁殖犬なんて生ませるだけでかわいそうと言う方もいるかもしれませんが、繁殖犬は、からだに異常がないか遺伝的な病気がないか検査や適性を行い、性格面も含めて向いていると判断された犬のみが選ばれます。さらに、動物福祉の概念から、人間の都合で無理矢理に生ませ続けることはなく、計画的に繁殖計画を行い、病気になったり、犬の体調や心に異変があった場合は、年齢を重ねる前に繁殖犬を引退します。

繁殖ボランティアは、犬のからだや心の異変にも気がつくことができ、犬のケアをしっかり行える人、犬の命を預かる責任感のある人に向いているボランティアです。

補助犬の繁殖犬飼育ボランティアになるための基本的な条件

各団体によって、繁殖犬飼育ボランティアを募集している場合と募集していない場合があります。日中のお留守番が多く、犬のケアを行えないといったケースでは条件を満たさない場合もあります。

去勢手術をしていないオス犬はメスの匂いを嗅ぐと興奮します。日常でしっかりオスの繁殖犬をコントロールできるボランティアさんでなければなりませんし、知らない犬との交配が起こらないように管理しなければなりません。メス犬は、発情中は出血をするので、マナーパンツを履いていてもお部屋を汚すこともあります。

メス犬は発情中のお散歩も他のオス犬が近づいてこないように、交配予定でない犬と交配をしないように気をつけなくてはなりませんし、発情期がやってきた時期や、からだの変化に気がつき、犬のケアをきちんと行えるボランティアさんでなければなりません。

さらに、補助犬に関わるボランティアは、ただ犬が好きだからという理由だけでなく、身体の不自由な方のサポートをしたいと気持ちと、補助犬がもっと日本に普及して欲しいという気持ちがなければ厳しい言い方ですがやらないほうが良いでしょう。

室内飼育で繁殖犬にたくさんの愛情を注いであげることができ、犬のケアやコントロールができることが、繁殖犬飼育ボランティアの基本的な条件です。各団体によって条件が異なりますので、トラブルを防ぐためにも、条件や団体の育成方針をきちんと確認し、施設の見学会などに参加してみることをおすすめします。

補助犬の繁殖犬の飼育ボランティアに登録する方法は?

繁殖犬飼育ボランティアは、自分の支援する補助犬の育成団体の活動をサポートするための活動ですので、自分が「ここの団体の活動を応援したい」「ここの団体の繁殖ボランティアをやりたい」と納得した上で、登録しましょう。

補助犬の繁殖犬の飼育ボランティアに登録するには、補助犬の各育成団体に直接問い合わせ、説明会や面談を行い、ボランティア登録や会員登録を行う必要があります。ボランティアや会員登録後、繁殖犬を預かる要請が来たら、繁殖犬と面会し、スタッフ指導のもとお試し期間として犬を預かり、繁殖犬の飼育に問題がないかを判断し、問題がなければ、書面の契約書で契約を交わし、繁殖犬の飼育ボランティアとなります。

ボランティアの活動の流れ

要請がない期間

繁殖犬飼育ボランティアは、繁殖の要請があるまでは、ボランティアさんのお家で健康に気をつけて、たくさんの愛情をもらいながら、のんびりと暮らします。犬のからだに悪いものは与えず、高品質の食事を与えて食事の管理を行い、適切な運動をして体重管理を行います。繁殖犬にとって健康管理は大切です。

オス犬の繁殖犬の場合

日常の犬の管理

  • 他の犬とのトラブルがないように、犬をコントロールする
  • 他のメス犬と交配しないように管理する

要請があった場合

  • 交配前はストレスを与えないようにし、食事や健康管理をより気をつける
  • 育成団体に犬を引き渡して、スタッフ管理のもと交配を行う

メス犬の繁殖犬の場合

日常の犬の管理

  • 出血をして発情期がやって来た日付を記録しておく
  • 発情期後の膀胱炎や子宮蓄膿症に気をつける

要請があった場合

  • 交配前はストレスを与えないようにし、食事や健康管理により気をつける
  • 発情期間に他の犬と交配しないように気をつける
  • 育成団体に犬を引き渡して、スタッフ管理のもと交配や繁殖を行う
  • スタッフの指示に従って動物病院で受胎確認やレントゲンの頭数確認を行う

ボランティアさんのお家で出産し子育てを行う場合

団体によっては、メス犬(母犬)の交配後、繁殖ボランティアのもとに戻り、いつも過ごしている母犬の環境で団体の専門スタッフと共に自宅で出産を行い、パピーウォーカーのもとに巣立つまでの2ヶ月程度の子育てをするケースもあります。

この場合は、母犬と子犬のお世話を行うため、母犬の健康を維持させてしっかり母乳が出るようにケアを行い、子犬達の食事作りや、体重測定、健康記録を24時間体制で行います。繁殖ボランティアは子犬が巣立つまでの間、犬の命の誕生から子育てに関わるため、専門的な知識もスタッフから教えてもらったり、勉強する必要があります。2ヶ月間の24時間体制となるので、ボランティアさん自身の体力や家族の協力も必要です。

補助犬の繁殖飼育ボランティアをやって良かったと思う体験談

育成団体から預かった繁殖犬に愛情を注いで、毎日を過ごす繁殖ボランティアは、大きなやりがいを感じることのできるボランティアです。自宅で繁殖犬が出産し、子育てをする姿を見れることは、命の大切さや母犬の愛情に触れることができるかけがえのない素晴らしい時間です。

しかし、楽しいこと可愛いことばかりではありません。出産前は母犬の健康管理や体重管理に気を配り、体温を計ったり、家の中に産箱を置いたりとハードな作業もあります。また、犬の出産は安産だといわれますが、全てのケースが安産という訳ではありません。実際には、母犬の出産が難産になったり、残念ながら後少しのところでこの世に誕生することなく、お腹の中で亡くなってしまう子犬を目の前で見ることもあるでしょう。一刻を争う自体では、母犬の帝王切開手術が必要になる可能性もあります。育成団体スタッフの指導や指示をもらいながら、母犬や生まれた子犬達の体調が悪くなったらすぐに動物病院に連れて行くフットワークや、判断も必要です。

社会化期と呼ばれる時期に子犬が経験することは、その子犬の性格の形成に大きな影響を与えます。家から巣立つまでの間に、子犬達にたくさんの経験をさせてあげよう、質の良い子犬をパピーウォーカーさんに渡そうという気持ちを持って精一杯お世話をすればするほど、繁殖犬飼育ボランティアは、体力的にも、精神的にもハードなものとなります。

しかし、母犬の妊娠期間である2ヶ月と、そして出産後から2ヶ月間の子犬達に囲まれた子育てのお世話の期間は、他のものには変えることのできない経験をすることができます。そして、母犬の子犬への愛情や教育、子犬達同士が遊びの中から学んでいく毎日の成長を感じることのできる最高の時間を過ごすことができるでしょう。

また、可愛い子犬達と過ごす2ヶ月間はあっという間で、巣立つ時はやって来ます。巣立ちの日は愛情をかければかけるほど、寂しい気分になってしまいますし、いなくなって静かになった子犬達がいた部屋の後片付けは、喪失感でいっぱいで寂しくてたまらない気分になります。

繁殖犬というと悪徳ブリーダなど呼ばれる劣悪な環境で育ち、母犬は毎回のヒートの度に出産させられているというような悪いイメージがあるかもしれませんが、繁殖犬飼育ボランティアはそんなことはありえません。ボランティアさん達は、子犬をパピーウォーカーさんに渡すまでの間、大切な子犬の社会化期に、母犬との触れ合いや母犬による教育を受けさせ、子犬達同士が一緒に遊び、さまざまな事を学び、多くの経験をさせています。これは後の犬の性格を左右させる、繁殖ボランティアにしかできない大事な役割であり、子犬達が将来補助犬の候補犬となるために必要なことだと考えています。

自分の家から巣立った子犬達が、「補助犬」として日本で活躍するようになった時は、嬉しい気持ちでいっぱいになりますし、大変だったけど繁殖ボランティアをやって良かったと思います。

まとめ

補助犬の繁殖犬飼育ボランティアに限らず、パピーウォーカーなどのボランティアは、ただ犬が可愛いという理由だけではできないボランティアです。補助犬に関わるボランティアをしている方々は、身体の不自由な方が暮らしやすい社会になりますように、そのために日本に補助犬が増えますように、といった気持ちを持って活動を行なっています。

繁殖ボランティアやパピーウォーカーといった犬を預かるというボランティアは大変ですが、犬に多くの愛情を注ぎ、反対に犬達から多くのことを学び、他に変えることのできない、かけがいのない経験をすることができるボランティア活動です。