公開日
2018/12/14

愛犬と過ごした最後の日々を偲んで…【愛犬家コラム】

わが家の愛犬リリを見送ってから、早いもので6年が経ちました。最後の10カ月は、手術をはじめ認知症の発症、脳の障害による発作など、リリはもちろんのこと、私たち家族もつらい思いをしました。今でも自分の行動を後悔したり、あれで良かったのだと思ったりすることがしばしばです。私たちの経験や今のこの思いが、現在老犬や病気と闘う愛犬と暮らしている皆さまの心に少しでも寄り添えれば、うれしく思います。

元気だった頃のリリ

黒ラブ (黒のラブラドールレトリーバー)のリリは、体重20キロほどしかない、小柄でおとなしい雌犬でした。娘が小学校1年生、息子が幼稚園に入ったばかりの頃、わが家の一員となりました。リリの前に飼っていたラブラドールレトリーバーを急な病で亡くしてから2年、新しい犬を迎えるにはまだ早いと思いながらも「子どもたちには犬と一緒に成長してもらいたい」という希望を持っていましたので、もう一度飼うことにしました。前の犬にお守りをしてもらって育った娘のように、少しこわがりだった息子にも、犬とたくさんの時間を過ごしてほしかったのです。

思惑通りと言いますか、リリは家族の中で一番のチビである息子をとてもかわいがってくれました。一人でお風呂に入れない息子に付き添い、同じ毛布にくるまってお昼寝をしていたのを、微笑ましく思い出します。

そして月日は流れ…

体調の異変、手術

8月生まれのリリが12歳になり、しばらく経った秋のことです。丸くなって寝ているリリが息を吐くときに、体を細かく震わせているのに気づきました。注意して見ていると、立っているときには足も震えているようです。寒い季節でもないのにおかしいと感じ、病院へ連れて行きました。検査の結果、脾臓がとても腫れていて機能をしていない、手術でとった方が良いということでした。ただ高齢ですので、全身麻酔から覚醒できるかどうかは微妙なところだと、言われました。脾臓という臓器は摘出しても他の臓器の機能でまかなえるということから、悪いところは切除してもらおうと考えました、が、目が醒めることなくお別れになってしまうのはあまりに悲しく、迷いに迷いました…。しかしこのままだと体調は悪くなる一方だ、と覚悟を決めて手術をお願いすることにしました。幸い手術は成功、リリも目を覚ましてくれて、家族皆で喜び合ったのを覚えています。

10月の手術直後は、さすがに食欲がなくて心配しました。もともと食が細く、ドッグフードをお湯で柔らかくしたものや、たまにビスケットを食べるぐらいで満足していたのですが、それすらも食べなくなってしまったのです。少しでも食べてくれるようにと、ドッグフードを変えたり鶏のささみを水煮してあげたり。どれも2、3日続くと飽きてしまうようなので日替わりにするなど、色々工夫しました。ごはんを手にのせて食べさせてあげると喜ぶので、つきっきりで食べさせました。リリも体調が万全でなく、家族にそばにいてほしかったのかもしれません。きっと心細く、甘えていたのでしょう。

環境の変化と認知症発症

努力の甲斐?もあり、食欲が戻った年末頃からは、以前のように元気に過ごせるようになり、ほっとしました。しかし闘病の日々は、それまで考えたことのなかったリリの老化を家族に強く印象付ける出来事でした。

新しい年の春先になり、わが家に大きな転機が訪れました。娘が家を出て一人暮らしをすることになったのです。また、家の都合で引っ越しをしました。おまけに、それまでほぼ専業主婦だった私がフルタイムで仕事に出ることに。リリは何もわからないまま家族と新居に移り、私が仕事から戻るまで一日中留守番をする生活になったのです。

引っ越しと学校関係で嵐のように忙しい日々が続き、ほっと一息ついた頃には新緑の季節を迎えていました。リリはというと(部屋飼いなので)心配していたトイレの粗相もなく、新しい家に馴染んでくれていました。

春といえば狂犬病の予防接種の時期ということもあり、リリも約半年ぶりに夫と動物病院へ向かいました。その時、後々思えば気になることがありました。もともと注射嫌いではあるものの、夫と一緒ならおとなしくしていたリリが、注射の時に暴れて夫の手を噛んだのです。リリはすぐに「はっ」という感じで我に返ったものの、夫にとっては大きなショックだったようです。この時は、歳をとってこらえ性が無くなったのかな…などと話していたのです。

「歳をとった」で思い当たったのは、私が休日にせわしく家事をしていても、リリは窓際で外を眺めてばかりだった、ということです。前の家では、私に付いてきて構ってもらいたがっていたのですが、数カ月で何に対しても無関心になっていました。また、家を出た娘と私がスカイプで話をしている時、定期的に私の後を通るのです。何度も、何度も。娘の声が聞こえているので探しているのかな?などとのんきに思っていたのですが、フィラリアの薬をいただきに動物病院へ出かけた時に先生に話してみると、それは認知症による徘徊だと言われました。確かに部屋の壁に沿ってぼーっと歩くリリは、心ここにあらずに見えます。犬も認知症になるんだと初めて認識しました。人間でも認知症の治療薬はありません。これからリリがどうなっていくのか、心配でたまりませんでした。

しばらくして、6月ごろでしょうか…。リリが夫の布団に粗相をしたのです。今まで一度もなかったことなので、「いよいよ来たか」とひやりとしたのを覚えています。それから一気に徘徊が激しくなりました。壁に沿って歩くので、少し開いていた洗面所へ入ってしまい、風呂場の浴槽に飛び込んでしまったことがありました。ドアが開いていると、そのまま外に出てしまいます。初夏にやってきた台風が吹き荒れる中、うっかり施錠を忘れたサッシから庭に出たリリが、庭木を踏み越えて柵に沿って歩いているのを見た時は仰天しました。ずぶ濡れになり、強風で飛んできた葉っぱにまみれたまま歩き続けるリリは、今までのリリではありませんでした。体を濡らすのを何より嫌がっていたのに…。認知症になって人格が変わったという話を耳にしますが、犬でもそうだなと強く思いました。そして、とても悲しかったです。

発作~最後の日々

8月1日。その日は外せない用事があり、一家で出かけることになっていました。バタバタしながらふと見ると、リリが板の間に倒れて痙攣しています。白目をむいて口を開き、失禁しながら体を震わせる様子に、私たちは飛び上がりました。獣医師の先生によると、脳が上手く機能していないからではないか、とのこと。そして今のところ、症状を改善する方法はないと。呼吸が苦しいとか止まるなどの様子はないものの、とにかく見ていて尋常な状態ではないので、いつこの発作が起きるか気が気でなかったのを覚えています。夜は見守っていられないので、家具で四角いスペースを作ってそこにいてもらうようにしました。朝になって失禁の跡があると、「ああ、今夜も発作が起きたんだ…」と胸がしめつけられそうな思いでした。

食欲も落ちました。前の年の手術の後のようなささみを与えても、すりつぶしてあげても食べません。ペースト状のごはんに、ささみのゆで汁でのばしたものを漏斗で少しずつ口に流し込むと、何とか飲みこんでくれました。自分の意志というより嚥下反応のような状態でしたが、それでも何も食べないよりはマシで、とても喜ばしいことでした。

発作が起きるようになってから1週間ほどは、発作での失禁以外はペットシーツで用を足していたリリですが、食欲低下により体力が落ちて立てなくなり、オムツ生活になりました。徐々に嚥下反応も示さなくなり、先生にお願いして自宅で栄養分の点滴をさせてもらうことになりました。夏休みに入っていたので、リリの世話はもっぱら息子です。小さい頃から大の仲良しで、本当にリリに良くしてもらったこともあり、恩返しのつもりだったのでしょう。こまめに看病してくれました。

そして8月18日。リリは仕事でいなかった私を除く家族に見守られて、静かに旅立ちました。発作が起こり始めてから18日目、ろうそくの火が消えるような最期でした。娘と夫が偶然休みで家にいたことを、幸いに思います。

考えたこと

リリを見送ってからかなり経ちますが、こうして当時を細かく思い返すと今でも胸にせまるものがあります。心からかわいがり、こちらを慕ってくれるペットとの別れは、本当につらいものですね。

胃捻転による急死だった前の犬に比べ、リリは闘病期間があったので、いろんなことを考えました。

犬の老化、病気に備えておいた方が良い

急に入院、手術、といわれた場合、心の準備はもちろんですがお金もかかりますので、ペットを飼う時には保険なども検討しておいた方が良いでしょう。

また、リリは小柄とはいえラブラドールレトリーバーでしたので、それなりに重く、病院に連れて行くのが大変でした。一人で歩いて車に乗ってくれていた時は感じませんでしたが、抱いて車まで歩くとなると重くて安定が悪いのです。大型犬を飼う前に、介護の負担も考えておいた方が良いと思いました。ちなみに、タオルケットのようなものの四隅を持って、担架のように使うになってからはスムーズにいくようになりました。おすすめです。

環境が変わったら要注意

病み上がりだったリリに引っ越しやその他の負担をかけた上に仕事が忙しく、なかなか構ってあげられなかったことを、今も後悔しています。仕事は仕方がないとはいえ、環境が変わって不安だったであろうリリにきちんと向き合っていただろうかと。人間もそうですが、犬も老いてくると好奇心が乏しくなって自分からは動かなくなりがちです。こちらから意識してたくさん声をかけたり、遊んであげたりしましょう。特に引っ越しなどで環境が変わった場合は、家の中や周囲を一緒に探検してあげれば、良い刺激になるでしょうね。

見送ったのちのことを考えておく

前に飼っていた犬は病院で急死したため、茫然としたまま獣医師さんに引き取ってもらうこととなりました。当時とは違い、リリには闘病期間もあり、家で看取ることになりそうだとも感じていましたので、「その時」どうするかを考えておりました。まずは亡骸をどうするか。動物病院や大学の獣医学部に引き取ってもらう、市に依頼して処理してもらうなどありましたが、リリとずっと一緒にいたかったので、ペット葬祭に火葬してもらって遺骨を庭に埋めることにしました。今もわが家のソテツの木の下から、リリは私たちを見守っていてくれているはずです。皆さまそれぞれのお気持ちや家庭の事情に応じて、考えておいた方がよいでしょう。