【ペット災害危機管理士 監修】ペットとの避難に必要なものや食料は?

救急・防災

ワンちゃんとの避難と考えると身構えてしまうものです。実際には日常の延長と考えて頂くことがとても大事です。そこで本日は日常と災害時の心や物の準備についてお話致します。

ペットとの避難の準備、できていますか?

避難の準備には大きく2つに分けられます。「心」と「物」です。

その「心」は①しつけ、②心構えと分けられます。

先ずは「心」①しつけですが、環境省の推奨する人とペットの災害対策ガイドラインには何と記述されているでしょう?

「● 飼い主は適正飼養を行う事  通常、人間社会の中で ペットを飼う際に最も重要となるのは、ペットを飼うことが他人の迷惑 にならないようにすることである。特に大勢の避難者が共に生活することを強いられる災害時には、この観点からの適正飼養が重要なものとなるがその実現には、平常時からのペットの十分なしつけや準備が必要である。」

人とペットの災害対策ガイドライン

としています。

そうなのです。日常のしつけが災害時に大いに効果を発揮します。

「心」①:しつけ

基本的なしつけ

  • 「待て」「おいで」「お座り」「伏せ」など

避難中や避難所では必須

  • ケージなどの中に入ることを嫌がらない

避難所での生活に影響大

  • 不必要に吠えない、人や他の動物を怖がったり攻撃的にならない
  • 決められた場所で排泄ができるようにする
  • 色々な種類のフードが食べられるようにする

かなりの基本で「こんなの簡単!」「うちの子は完璧!」と思っている飼い主さんも多いのではないでしょうか?ですから「災害対策としての特別なしつけ」等はないのですね。うちの子は出来ていないかな・・・と思った飼い主さんは今から始めましょう!

しつけ以外で飼い主の皆様に必ずお願いしていることは・・・

  • 狂犬病予防接種に加え各種ワクチンを接種する
  • 犬フィラリアやノミダニなどの寄生虫の予防、駆除を行う
  • シャンプーやトリミングにより身体を清潔に保つ

これは災害時に避難所へ入れる条件となっている場所もありますし、ご自身の可愛い家族を守る為にも必ず実施して下さい。

「心」②:心構え

日常からの散歩コースに家族で設定した避難所や近隣の学校、公民館等を通り、地震の時や風水害の時はどの様な危険がそのコースにあるかを確認しておく等の心構えが大切です。

その散歩の際に後ほど準備「物」のコーナーでお話するラバーシューズ等のワンちゃん用防災グッズを装着し、ワンちゃんに取っての遊びを取り入れた日常を送る事も心構えの一つです。

そして残念ながら災害は突然発生するものです

災害時にワンちゃんを守るのはその飼い主さんであることから、まずは飼い主さんが無事でいることが重要です。自分自身の安全が確保できてからワンちゃんの安全を確保します。

地震の時、小型犬・猫なら抱きかかえて机や椅子の下へ、もしなければ部屋の中央で頭を抱え姿勢を低くしておさまるまで待つことです。

多くの地震は長くても揺れは3分でおさまります。風水害の場合は状況を見て垂直避難(2階以上)を行います。

突然の災害ではワンちゃんもパニックになり、いつもと違う行動をとることがあるため、ワンちゃんを落ち着かせるとともに、逸走やケガなどに注意して下さい。

ラジオやテレビ、行政のホームページなどから正確な被災情報を積極的に得るように努めましょう。得られた情報をもとに、自宅や地域の状況を確認し、避難するか自宅に留まるかを判断する事になります。

自宅が危険な場合や避難指示がでている場合には、飼い主さんの安全が確保できる範囲においてワンちゃんを連れて指定緊急避難場所や安全な場所へ避難します。自宅や地域の状況が安全な状態であれば、自宅に留まるという選択肢もありますね。

発災時にワンちゃんと離れた場所にいる場合は、災害の種類や自分自身の被災状況、周囲の状況、自宅までの距離、避難指示などを考えて、ワンちゃんを避難させることが可能かどうかを飼い主さん自身が判断しなければなりません。

日常から、留守の際のワンちゃんの避難について、家族や地域住民との協力体制を構築しておくことも重要だといえます。

ペットとの避難時に必要なものを揃えておこう

次は準備「物」です。

「物」は①日常の自宅と②避難グッズに分けて考えましょう。

「物」①:日常の自宅

自宅でワンちゃんの為にできる日常的な防災対策にはどの様なものがあるでしょうか。まずはケージ、クレートなどワンちゃんの避難場所(隠れ場所)の確保が必要です。

いつもいる場所が避難場所と考えれば特別なスペースはいりませんね。家具や飼育ケージの固定、転倒防止、落下防止をしておきましょう。

転倒した家具で怪我を負うのは人だけではありませんから十分な対策が必要です。ホームセンター等の防災コーナーに色々と揃えてありますのでご自宅にあった転倒防止用品を設置してください。

屋外飼養の場合は、飼養場所の安全確認(外塀やガラス窓の近くを避ける)が重要です。そして次に揚げる②の避難グッズをストックする場所も日常で生活する所に置いておくと管理が楽になります。

例えば非常食や水などはキッチン周りにスペースを作る。1次避難グッズ(防災リュック等)は玄関、水用のポリタンク等は駐車スペースや車の中など分けておき、家族で分担を決めておくと良いですね。

それらを使い、適量を保管するといった日常使いが災害時には役に立ちます。

ストックする場所と保管する防災品の例です。

キッチン、台所

キッチンや台所と言えば水や食料の備蓄に最適な空間です。毎日目につく場所に置いておくことで自然と点検を行う機会にもなります。

ワンちゃんのご飯も飼い主さんの物と一緒に保管しておきましょう

クレートやゲージ等のワンちゃんの居間

クレートやゲージ周りにワンちゃんに悪戯されないほどのスペースを作り、ワンちゃんの薬やペットシーツ等日常で使用するものを直ぐに持ち出せるようにリュック式のバッグに入れて置くと便利です。

玄関先や靴箱

玄関先収納には、すぐに逃げる時に持ち出すための1次避難用の防災用品を準備しておきましょう。ヘルメットや懐中電灯など命を守るために大切な防災用品の備えも忘れずに。

寝室やベッドサイド

ベッド周辺に防災用の持ち出しバッグを準備しておく。水や食料、防寒・防暑対策グッズやLEDランタンなどを準備しておけば、夜間のような暗闇での緊急避難時に役立ちます。

階段下の収納スペース

階段下が収納スペースになっている場合は手前から順に緊急性の高いものから置いておくことで取り出しやすい収納をすることができます。

車庫、ガレージ、屋外物置

建物の中に入れない場合に役立つのは、車庫やガレージ、屋外物置などの外の収納空間ですが、1階部分が駐車場タイプの構造は地震などによって自宅が崩壊した場合は最も危険な場所となってしまうので使うのは控えておきましょう。

車の中

備蓄品を置いておくスペースとしては向いています。基本の一式として車で出かけている時に災害に遭った場合に役立つ車用の防災セットを準備し、紙製の使い捨て食器やロープ、防寒具など布製品など、車内の温度変化にも影響の出ない素材の防災用品を準備しましょう。

「物」②:避難グッズ

次に避難グッズですが、これは優先順位をつけておく事が重要です。

優先順位1 動物の健康や命に係わるもの

  • 療法食、薬(出来るだけ多く)
  • ペットフード、水(少なくとも5日分[できれば7 日分以上]) ※水は貴重です。ペットボトル数本に「ペット用」とボトルにマジックで書いておくと避難所でもトラブル回避に役立ちます
  • キャリーバッグやケージ(猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)
  • 予備の首輪、リード(伸びないもの。また樹や椅子などに係留できる機能があると便利。)
  • ペットシーツ
  • 排泄物の処理用具
  • トイレ用品(猫の場合は使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部)
  • 食器(使い慣らした物が良い)

優先順位2 情報(以下の情報を一枚に記入し避難バッグに入れておくと良い)

  • 飼い主の連絡先と、ペットに関した飼い主以外の緊急連絡先・預け先などの情報
  • ペットの写真(印刷物とともに携帯電話などに画像を保存することも有効)
  • ワクチン接種状況、既往症、投薬中の薬情報、検査結果、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報

▲こちらは警視庁警備部災害対策課推奨の情報カードです。これ1枚で全ての情報が入っていますので、是非ご利用下さい。

優先順位3 ペット用品

  • タオル、ブラシ
  • ウェットタオル(大小あると便利)や清浄綿(目や耳の掃除など多用途に利用可能)
  • ビニール袋(排泄物の処理用は黒を用意。他用途に利用可能)
  • お気に入りのおもちゃなど匂いがついた用品
  • 洗濯ネット(猫の場合は屋外診療・保護の際に有用)など
  • ガムテープやマジック(ケージの補修、段ボールを用いたハウス作り、動物情報の掲示、など多用途に使用可能)
  • 古新聞(汚物処理やタオルの代替になる)
  • ドライシャンプー、ティッシュペーパー、爪切り

優先順位4 緊急品

  • 防災頭巾(雨合羽の代用にもなる)
  • ラバーシューズ(危険物が散乱した地面の移動)
  • ゴム手袋(出血したペットの移動を手伝ってもらう場合)
  • 包帯・口輪(緊急治療が必要だが、被災した病院で必要となる)
  • レスキューメディ=精神安定香料(ストレス軽減とペットの精神安定)
  • 笛、鈴、反射材(負傷した時に救助要請)

準備する「物」①避難グッズのまとめです。

①在宅(自宅)避難では勿論のこと、避難先においてもワンちゃんの生活に必要なものは、飼い主さんが用意しておく必要があります。

避難指示などが出た場合に安全に避難場所まで避難できるように、リードやキャリーバッグなどの移動に必要な用品を準備しておきましょう。

②ライフラインの被害や避難生活に備え、ワンちゃんの生活に必要な物資を備蓄し、必要な 場合には持ち出せるようにしておくことが大事です。

指定避難所などにワンちゃん用の救援 物資が届くまでには時間がかかることがあるため、少なくとも5日分(できれば 7 日分以上)は用意しておくとよいでしょう。

特に、療法食などの特別食を必要としているワンちゃんの場合は、さらに長期間分の用意が必要です。

③救援物資は普段使用しているペットフードと同じ物が手に入る とは限らないため、ワンちゃんが好き嫌いなく救援物資を利用できるように 日頃から備えておくことも飼い主さんに求められます。

④備蓄品には優先順位を付け、優先度の高いものは避難時にすぐに持ち出せるようにし、人の避難用品とともに保管するのが良いでしょう。

なお、重い物、大きな物などは避難の妨げになるため、いったん避難した後で安全を確認してから持ち出せるように、屋外倉庫や駐車場など、保管場所を工夫するとよいですね。

上手な避難グッズの準備の仕方

さて、災害用の備蓄が必要だと感じても、実際に食料を備蓄しておくことはなかなか難しいものですよね。

保存食も、何がどれくらいあるのかということを定期的に確認したり、食べ方を知っておかなければ、いざという時に賞味期限が切れていたり、温めなければ食べられないなんてこともあり得ます。

ローリングストックを実践

保存食を備蓄しておくことも、もちろん大切なことではありますが、日常の中に食料備蓄を取り込むという考えはいかがでしょうか。

災害発生時、最低限必要なのは、3日分の水・トイレ・食料です。

具体的には、大人一人あたり水9リットル、トイレ24回分、食料3回分になります。

普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法をローリングストックと言います。

ローリングストックとは、日常生活で消費しながら備蓄することです。
食料等を一定量に保ちながら、消費と購入を繰り返すことで、備蓄品の鮮度を保ち、いざという時にも日常生活に近い食生活を送ることができるはずです。

ポイントは3つ。

①古いものから使うこと

備蓄する食料が古くなってしまわないよう、消費の際には、必ず一番古いものから使うようにしましょう。新しいものを右側に配置し、左側の古いものから使っていく、というようにそれぞれ合った備蓄方法で上手に循環させることが大切です。

②使った分は必ず補充すること

ローリングストックでは、備蓄品としてストックしているものはいつ食べても構いません。
ただし、消費した量を必ず買い足すようにしましょう。

ちょっと補充を怠ったタイミングで災害が来る可能性もありますから、消費した分の補充は必ず直後に行いましょう。

また、日常の食材を多めに準備しておいても、災害時はガスや電気、水道が止まり、食材を調理できないことが想定されます。そんな時役に立つのが「カセットコンロ」です。

過去の災害で被災された方の多くが、避難生活の際に温かいものが食べたかったと語っています。それらの備蓄品を活かすためにもカセットコンロとガスボンベが必需品となります。

③ローリングストックの応用

日常的に使用する保存食、飲料水、ウエットタオル、カセットボンベ、乾電池、使い捨てカイロなどは、常に一定量、家庭に置いておくようにすると、突然の災害にも対応しやすいでしょう。

常にガスボンベは日常で使いながら、一定量を確保しておきましょう。

最後に

ワンちゃんを守るために

過去の災害においては、ワンちゃんが飼い主と離れ離れになってしまう事例が多数発生しましたが、保護するまで多大な労力と時間を要するだけでなく、その間にワンちゃんが負傷し、衰弱・死亡するおそれもあります。

その様な状況を想定し事前に準備をすることとして、外から見えて誰でもすぐにわかる迷子札などをつけるとともに、脱落のおそれがなく、確実な証明となるマイクロチップを装着し、(公社)日本獣医師会などに所有者情報の登録を行っておくことで返還の可能性を高めることが出来ますのでお勧め致します。

お世話になっている獣医師先生の話では、装着時痛くないそうですのでご心配なく。

同行避難と同伴避難の違い

環境省の推奨しているガイドラインはペットとの同行避難です。

同行避難とは、避難行動を示す言葉で、避難所でワンちゃん等を飼い主さんと同室で飼養管理することを意味するものではありません。

同伴避難とは、避難所内で「同居」ができることであり同行避難を更に押し進めた避難対応です。全国に先駆けてペット同伴避難を実行したのは平成30年7月豪雨の際に開設した岡山県総社市でした。

この「同行避難」と「同伴避難」の違いを混同して理解していると今後の災害時に避難した際、避難所で行政とのトラブルになる可能性が非常に高いので覚えておきましょう。併せてご自宅の近くにある避難所が同行できるかできないのか、それが同伴可能なのか確認しておくことも大切です。

みなさまいかがでしたか?日常の延長線に災害対策がある事がお分かり頂けましたでしょうか。いつも通りの生活の中に少しだけ防災を意識するだけで備えとなり減災に繋がります。日常は災害という非日常を超える為の基本動作なのです。

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鈴木清隆

鈴木清隆

一般社団法人全日本動物専門教育協会認定 ペット災害危機管理士Ⓡ1級講師 神奈川県箱根町在住で、箱根町にてペットと泊まれる宿を経営していた経験によりペットと災害についての啓蒙活動を行っている。 また、防災士の資格も所有しており、地元である箱根町消防団にも所属している防災のスペシャリストである。

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