【DX獣医師が解説】犬の平均寿命は何歳?犬種別ランキングと一日でも長く一緒にいるための秘訣…2022年最新研究から学ぶ対策法

雑学

「うちの子はあと何年…?」愛犬の寿命、最新研究でわかること

夜、隣で穏やかに眠る愛犬を見つめながら、「この子と一日でも長く一緒にいたい」と願うのは、全ての飼い主さんに共通する想いでしょう。同時に「うちの子はあと何年、一緒にいてくれるんだろう?」という、切ない不安が胸に募る経験があるのではないでしょうか。

例えば、10歳になる柴犬と暮らすあなたなら、愛犬がシニア期に入り、少し寝ている時間が長くなるたびに「これって老化のサイン?それとも病気?」と心配になるかもしれません。スマートフォンで「犬 平均寿命」と検索しても、情報が溢れていて、どれが本当に信頼できるのか迷ってしまいますよね。

この記事は、まさにそんなあなたの不安に寄り添い、信頼できる情報を提供するために書かれています。今回ご紹介するのは、2022年に著名な科学誌「Scientific Reports」で発表された、英国での大規模な犬の寿命に関する最新論文です。この研究は、3万頭以上もの膨大なデータを分析し、犬の寿命に関する非常に画期的な知見を私たちに与えてくれます。

この記事を最後まで読めば、以下のことがわかります。

  • 犬全体の平均寿命と、性別による違い
  • 避妊・去勢手術が寿命に与える影響
  • あなたの愛犬の犬種は?犬種別平均寿命ランキング
  • 愛犬の健康寿命を延ばすために今日からできること

ただし、この研究はあくまで英国の犬を対象としたものであり、日本の犬にそのまま当てはまるわけではありません。しかし、この大規模なデータから得られる知見は、私たちの愛犬の健康管理の重要なヒントとなるはずです。科学的根拠に基づいた知識が、愛犬との日々をより豊かにする一助となれば幸いです。

約3万頭が示した犬のリアルな平均寿命

では、実際に犬全体の平均寿命はどのくらいなのでしょうか?

今回ご紹介する研究は、2016年から2020年の間に亡くなった30,563頭もの犬たちのデータを分析した、非常に信頼性の高いものです。その結果、英国の犬全体の平均寿命は「11.23歳」であることが明らかになりました。

この数字を見て、「思ったより短いかも…」と不安に思われたかもしれません。しかし、これはあくまで多くの犬たちのデータを集計した「平均値」です。人間と同じように、犬にも大きな個体差がありますし、犬種や生活環境によっても差が出ます。そもそも国が違いますしね。

メスの方がオスより長生きって本当?

研究では、性別による平均寿命の違いも示されています。

  • メス犬の平均寿命:11.41歳
  • オス犬の平均寿命:11.07歳

やはり、わずかではありますが、メス犬の方がオス犬より平均寿命が長いという傾向が見られました。この差の背景には、次にお話しする「避妊・去勢手術の有無」が大きく関係している可能性が示唆されています。

避妊・去勢手術は寿命に関係する?研究が示す驚きの結果

あなたの愛犬が避妊・去勢手術を受けている、あるいはこれから検討されているなら、「手術は寿命にどう影響するのだろう?」と気になるのではないでしょうか。今回の研究は、この疑問に非常に興味深いデータを示しています。

研究結果によると、避妊・去勢手術を受けている犬たちは、未手術の犬たちに比べて平均寿命が長い傾向にあることが明らかになりました。

  • 避妊済みメス犬の平均寿命:11.98歳
  • 去勢済みオス犬の平均寿命:11.49歳
  • 未手術メス犬の平均寿命:10.50歳
  • 未手術オス犬の平均寿命:10.58歳

特にメス犬では、避妊手術の有無によって平均寿命に約1.5年もの差が出ています。なぜ手術が寿命と関連するのでしょうか?主な理由として以下の3つが考えられます。

1. 命に関わる病気のリスクを軽減できる

避妊・去勢手術は、生殖器系の病気を予防する上で非常に大きな役割を果たします。特にメス犬の場合、命に関わる子宮蓄膿症のリスクをほぼゼロにでき、乳腺腫瘍のリスクも大幅に減少させます。オス犬の場合も、睾丸腫瘍や前立腺の病気リスクを軽減できます。

2. 行動上のリスクを減らせる可能性

未手術の犬は、発情期に脱走したり他の犬とケンカしたりするリスクが高まります。これらの行動は、交通事故や感染症、予期せぬケガにつながる可能性があります。手術によって発情に関連する衝動が抑えられ、結果として事故に巻き込まれるリスクを減らすことにつながるかもしれません。

3. 飼い主さんの健康意識の高さ

論文では、避妊・去勢手術を選択する飼い主さんは、愛犬の健康全体に対する意識が高い傾向にあることも示唆されています。日々の食事管理や定期的な健康診断など、質の高いケアが結果的に愛犬の長寿に貢献している可能性も考えられます。

ただし、これらのデータには「手術を受ける年齢まで健康に生存していた」という統計上のバイアスが含まれる可能性も指摘されています。「手術さえすれば必ず長生きする」と単純に結論づけるのではなく、様々な要因が複合的に作用していると考えるのが合理的でしょう。

【犬種別】平均寿命ランキングTOP3と注意すべき犬種

ここからは、皆さんが最も気になっているであろう、犬種別の平均寿命について掘り下げていきましょう。

長寿トップはジャック・ラッセル・テリア!ヨーキーやボーダーコリーも上位に

今回の研究対象となった18犬種の中で、特に長生きの傾向が見られたのは以下の犬種でした。

  1. ジャック・ラッセル・テリア:12.72歳
  2. ヨークシャー・テリア:12.54歳
  3. ボーダー・コリー:12.10歳
  4. スプリンガー・スパニエル:11.92歳

ジャック・ラッセル・テリアやヨークシャー・テリアのような小型犬は、遺伝的に重篤な疾患が比較的少なく、体が丈夫な傾向にあることが長寿の一因と考えられます。また、ボーダー・コリーのように活動的な犬種は、飼い主が十分な運動をさせることで心身の健康を維持しやすく、結果として健康寿命が延びている可能性があります。

【要注意】フレンチ・ブルドッグは4.53歳という短い結果に

一方で、今回の調査では衝撃的なデータも示されました。近年非常に人気が高まっている短頭種の犬たちの平均寿命が、他の犬種に比べて著しく短い傾向にあったのです。

  • フレンチ・ブルドッグ:4.53歳
  • イングリッシュ・ブルドッグ:7.39歳
  • パグ:7.65歳
  • アメリカン・ブルドッグ:7.79歳

この短い寿命の背景には、鼻が短く顔が扁平な特徴を持つ短頭種特有の健康リスクが深く関わっています。特に短頭種気道症候群(BOAS)と呼ばれる呼吸器系の問題や、脊椎の奇形、難産のリスクなどが、彼らの健康寿命に大きな影響を与えていると考えられます。

また、論文では、フレンチ・ブルドッグの近年の急激な人気が、健康面への配慮が不十分な繁殖を招き、結果として平均寿命を押し下げた可能性も指摘されています。

ミックス犬(雑種)の平均寿命は11.82歳

では、ミックス犬(雑種)はどうなのでしょうか?今回の研究では、ミックス犬の平均寿命は11.82歳と報告されています。

これは犬全体の平均寿命(11.23歳)よりわずかに長く、短命傾向にある短頭種と比べると、かなり長い寿命が期待できることになります。この背景には「雑種強勢」という、遺伝的多様性が高まることで特定の遺伝性疾患のリスクが分散され、体が丈夫になる現象が関係していると考えられます。

【ご参考】トイプードルやチワワなど日本の人気犬種について

ここまで読んで、「あれ、うちの子は?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。お察しの通り、今回の英国の研究は、日本で人気の犬種構成とは異なるため、残念ながら日本で人気のある犬種、トイプードルやポメラニアンなどの詳細な情報はありませんでした。

もしコメントで「この犬種について知りたい」といったご希望などがあれば、そういった日本の状況に近い論文があるかも調べてみたいですね。ぜひお気軽にリクエストしてください。

愛犬の健康寿命を延ばすために、今日からできる3つのこと

これらの研究結果を踏まえ、愛犬の寿命を延ばすために具体的に飼い主ができることは何でしょうか。大切なのは「健康寿命」、つまり愛犬が病気に悩まされることなく元気に活動できる期間を延ばしてあげることです。

① 病気の早期発見がカギ!シニア期からの健康診断

愛犬がシニア期(7歳以降が目安)に差し掛かると、目に見える症状が出にくい病気が隠れていることがあります。病気の兆候をいち早く捉えるために、定期的な健康診断が何よりも重要です。年に1回、あるいは高齢の犬では半年に1回、獣医師と相談しながら血液検査やエコー検査などを受けることを強くお勧めします。

② 食事と運動を見直す

シニア期は代謝が落ち、必要な栄養バランスも変わってきます。

  • 食事: シニア犬用のフードに切り替え、適切なカロリー管理で肥満を防ぎましょう。肥満は関節や心臓に負担をかけ、様々な病気のリスクを高めます。
  • 運動: 筋力維持と精神的な刺激のために、無理のない範囲で運動を続けましょう。散歩の時間を短くして回数を増やす、平坦な道をゆっくり歩くなど、愛犬のペースに合わせることが大切です。

③ 犬種特有のリスクを知っておく

フレンチ・ブルドッグのような短頭種や、大型犬は、特有の健康リスクを抱えています。

  • 短頭種: 呼吸器系の問題や暑さに特に注意が必要です。体重管理を徹底し、激しい運動は避け、いびきや呼吸の異常があればすぐに獣医師に相談しましょう。
  • 大型犬: 股関節形成不全などの関節疾患や、胃拡張・胃捻転症候群のリスクがあります。成長期の適切な栄養管理、体重管理、食後の安静を心がけましょう。

愛犬の犬種が持つリスクを事前に知っておくことで、日々のケアや病気の早期発見に繋がります。

データはあくまで参考。愛犬の個性を信じ、獣医師に相談を

ここまで様々なデータを見てきましたが、最も大切なことをお伝えします。これらの平均寿命という数字は、あくまでも多くの犬たちを統計的に見た場合の「傾向」です。

あなたの目の前にいる愛犬は、世界に一匹しかいない、かけがえのない存在です。たとえ愛犬の犬種が平均寿命のランキングで下位だったとしても、どうか一喜一憂しすぎないでください。大切なのは、数字に振り回されることではなく、あなたの愛犬の個性生命力を信じ、今日一日一日を大切に過ごすことです。

そして、もし少しでも愛犬の様子に「あれ?」と感じる変化があったなら、どうか迷わずかかりつけの動物病院へ相談してください。インターネットの情報に惑わされず、あなたの愛犬をいつも診てくれている専門家の判断を仰ぐことが、愛犬の健康寿命を守る最良の行動です。

まとめ:科学的データは愛犬をもっと知るためのヒント

今回の研究から、犬の平均寿命は11.23歳であること、そして犬種や避妊・去勢の有無によって大きく異なることがわかりました。これらのデータは、決して私たちを不安にさせるためのものではありません。むしろ、愛犬を「もっと深く知り」、そして「一日でも長く健やかに過ごす」ための強力なヒントです。

「知識は、最良の愛情表現である」――私はそう信じています。科学的な知見を賢く活かし、愛犬の身体の声に耳を傾け、日々のケアを続けること。そうした積み重ねこそが、愛犬との幸せな時間を育む何よりの秘訣です。あなたの愛犬との日々が、健やかで愛情に満ちたものになるよう、心から願っています。

参考文献

  • Teng, K. T., Brodbelt, D. C., Pegram, C., Church, D. B., & O’Neill, D. G. (2022). Life tables of annual life expectancy and mortality for companion dogs in the United Kingdom. Scientific Reports12(1), 6415.
  • DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-022-10341-6

【獣医師】用品

ペット業界には、動物に向き合う現場の背景で、解決が後回しにされがちな”見えにくい課題”が数多く存在します。 私は獣医師としては異例のキャリアを歩みながら、システム開発やバックオフィス支援、行政手続きなどの実務経験を積んできました。 そしてその知見と専門性を掛け合わせ、現場の「困りごと」を可視化し、仕組みで解決する取り組みを行っています。 そして【DX獣医師】としてペットと人がより豊かになる未来を、実現できるよう日々奮闘しています!

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