犬の毛に関する悩みは換毛期の大量の抜け毛だけではありません。 愛犬のふわふわ、ふかふかで気持ちのよい被毛も、ブラッシングやシャンプーなどのお手入れを怠るとすぐに毛玉だらけになってしまいます。今回は、犬の毛玉対策とできてしまった毛玉の除去方法についてトリマーが解説します。
犬の毛玉って何?どうしてできるの?
毛玉とは汚れやブラッシング不足、シャンプー後の乾燥がしっかりできていないために被毛同士が絡まり合ってできる毛の玉のことをいいます。
私たち人間の髪の毛も朝起きると、絡まってブラシがひっかかったり、くしが通りにくいことがあると思います。ショートヘアーの人は比較的楽だとは思いますが、ロングヘアーとなると大変な思いを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
全身が毛で覆われている犬にもこれと同様のことが起こります。毛が長い子は少し動いただけで、毛が絡まってしまうこともあります。それをとかさずに放置してしまうと、あの厄介なフェルト生地のような毛玉になってしまうのです。
毛が絡まってしまう原理は人間も犬も同じといえます。私たち人間も毎日髪をとかさないと、毛玉ができてしまうものの、毎日自分で髪の毛のお手入れができます。しかし、犬は自分でお手入れすることができません。飼い主さんが責任を持って、愛犬の被毛のお手入れをすることが大切です。
毛玉はできてしまうと引き吊れることで痛みも伴うことがあります。また、毛玉に汚れもたまりやすく、皮膚病も引き起こすこともあるのでしっかり予防しましょう!
毛玉ができやすい犬って?
毛玉のできやすい犬は、毛の長い犬たちに多いです。長毛で毛質の柔らかい犬ほど毛玉ができやすいといえます。
よく知られている犬種で言うと、ポメラニアン、シーズー、プードル、マルチーズ、ヨークシャーテリア、コッカースパニエル、ゴールデンレトリバーなどです。
ただし、毛が抜けにくいからといって毛玉ができないわけではないため、プードルやシュナウザーも毛玉はできやすい犬種といえます。
ドックショーに出ている、これらの犬種は、とても長くて美しい毛を持っています。
これは、飼い主さんが毎日のブラッシングを怠らず、その後にラッピングペーパーという紙で毛を包み丁重にケアしているからこそのことです。
毛玉ができやすい長毛犬種もトリマーさん任せにせず、毎日のお手入れをしてあげることで毛玉を防ぐことができます。
犬の抜け毛と毛玉って関係あるの?
犬には、主に季節の変わり目に多量に毛が抜け変わる換毛期があり、体温調整のために毛が抜けるこの換毛期は、特に毛玉ができやすくなります。
冬は寒さ対策のために密集したふわふわなアンダーコートが生えて、暖かくなるとそのアンダーコートが抜け夏の暑さに備えるものです。
この換毛期に抜け落ちた毛が他の毛に絡まると犬の体が毛玉だらけになってしまいます。
これが原因となって、一般的に換毛期が大変だといわれる、柴犬や秋田犬などの短毛種でも毛玉になってしまうことがあります。
毛玉ができやすい場所は?
犬の体にできた毛玉をそのまま放っておくと、次第にどんどん大きくなっていきます。プードルなどのクルクルした毛質の子は、抜け毛が少ないにもかかわらずたくさんの毛玉ができる犬種です。
毛玉のできやすい場所は、犬が動いたときによく擦れる耳の根元や裏側、脇、脚の内側、お腹、お尻のまわりです。
毎日のブラッシングは毛玉の予防だけでなく、冬には保温効果を高め、夏には通気性をよくします。もし毎日ブラッシングすることが大変なら、トリマーさんに相談して毛玉のできやすい場所を短くカットしてもらうなどのお手入れ方法も毛玉の予防策になります。
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毛玉の原因は犬の癖にも関係している
毛玉にはくしでとかせばすぐに解けるものと、フェルトのようにガチガチに固まってハサミを入れないと解けないほどになってしまうものがあります。いったん硬くなってしまった毛玉は、プロが解こうとしても犬に痛みを感じさせるなど、好ましくない状況を引き起こしてしまいます。
このような固い毛玉ができてしまう犬の特徴として、体を舐める癖がある場合が多いといわれます。
毛玉に水分は大敵です。
絡まっている毛に水分が含まれることにより、より一層毛玉が解けにくくなり、どんどん硬くなっていってしまいます。このため毛玉ができないように、飼い主さんが注意深く愛犬をみてあげることもブラッシングとともに大切なことです。
犬に毛玉ができてしまった時の正しい取り方
毛玉ができてしまった時、根元からハサミで切る方法がありますが、犬の皮膚を傷つけないように気を付ける必要があります。
さらに、根元からカットをするとハサミで切った痕が残って、その箇所だけ禿げたようなみえることもあります。
このような場合、トリマーはハサミとスリッカーブラシを使って毛玉をほぐしていきます。フェルト状になってしまった毛玉にはすきバサミを数回入れた後に、スリッカーブラシで梳かしていきます。こうすることで毛玉の跡も目立たず、犬に痛みを感じさせることが少なくなります。
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毛玉予防の正しいブラッシングの仕方とは?
毛玉予防の正しいブラッシングは、根元からしっかりととかしていくことです。
ブラッシングする際は毛玉がないかどうか手で全身を触って確認していき、毛玉を見つけた際は毛玉を解していきます。
次に、スリッカーブラシでとかしていきますが、表面だけをとかしても意味がなく、毛をかき分けて根元からスリッカーブラシでとかしていくことがポイントです。とかす順番は頭、首、胴体、足先と体のラインに沿ってとかしていきましょう。
スリッカーブラシで毛をとかし終わったら、次はコームでとかし忘れがないかどうかを確認していきます。コームでとかす際の注意点は、引っかかりを見つけたらすぐにスリッカーブラシに切り替えることです。コームで無理に引っ張ってしまうと、犬が痛みを感じます。
コームはあくまでも引っかかりがないかを確認するもので、毛を解すのはスリッカーブラシということを忘れないでください。
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最後に
「毛の汚れ」「シャンプー後などの乾燥不足」「毛が擦れる」「ブラッシング不足」
この4大要因が毛玉ができる原因となり、毛玉が皮膚炎を引き起こすきっかけとなってしまいます。
犬の体にできた毛玉は正しいブラッシング方法によって、簡単に対処することができます。
注意点としては、飼い主さんがお家でシャンプーをする際は、しっかりとブラッシングをして毛玉になりかけている毛を解いてあげた上で洗ってあげてください。
そのまま洗ってしまうと、せっかくきれいにするためのシャンプーが、毛玉の中にシャンプー液を残してシャンプー液から皮膚病になるなど悪循環を引き起こしてしまい、新たな痒みがさらなる毛玉を作ってしまいます。
ブラッシングは犬にとって大切なお手入れであり、コミュニケーションの一環ですし皮膚病予防にもつながります。
毛玉は犬にとっても皮膚が吊れて痛みを伴います。愛犬の健康を守るためにも毎日のブラッシングをして、毛玉ができやすい犬種は月に一度くらいの間隔でトリマーさんの手を借りるなど、できるだけ愛犬の体に毛玉をつくらないように心がけましょう!
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