【獣医師コラム】ドッグパッド愛犬相談室 第3回いつから始める?なにから始める?ゼロから学ぶ高齢犬ケア(前編)

介護・終活

愛犬が高齢になったとき、どのようなケアをいつから始めたらよいのだろうか。こんなシニア犬と暮らす飼い主さんのお悩みに獣医師がお答えします。今回は犬の介護についてのお話しです。※前編と後編の2回に分けて解説します。

いつから始める?高齢犬と暮らす飼い主さんのお悩み相談

いつから始める?高齢犬と暮らす飼い主さんのお悩み相談

高齢犬と暮らす飼い主さんからご相談がありました。

飼い主さん:「我が家では今年で7歳になるトイプードルと暮らしています。フードやサプリメントなど、犬用品では7歳からが高齢とするものが多く、うちの子もそろそろ高齢犬としてサプリを与えたりリハビリとかを行なった方がいいのかなと迷っています。

小型犬は15歳とかかなり長生きをするイメージですが、いつから高齢向けのケアをしたらよいでしょうか?

また、人間では中高齢くらいから食事や運動に気をつけることで歳をとっても元気でいられると言われますが、犬でも若いうちから気をつけておくことやしてあげられることはあるのでしょうか?」

高齢犬へのケアについて、獣医師Tの解説

では、ここからは高齢犬へのケアについて獣医師Tが解説していきます。

今回ご相談いただいた飼い主さんのお話をまとめると、

・愛犬が高齢になった時に備えて、いつ頃からケアを始めるべきかを知りたい

・高齢犬にどんなケアをするべきかを知りたい

というご相談でした。

では、老化によって起こる変化や高齢になった愛犬と楽しく暮らすための知識として、認知症対策などの行動面のケア、食事や運動などの生活面でのケアについて一緒に勉強をしていきましょう。

前編と後編でお話ししていきますが、今回の前編では高齢犬に起こる体の変化と行動面のケアについてお話ししていきます。

何歳からがシニア犬?7歳からがポイントとなる?

何歳からがシニア犬?7歳からがポイントとなる?

人の場合は65歳からが高齢者という認識が一般的ですが、これはWHO(世界保健機構)が定めた基準で、身体の衰えなど医学的な観点からの線引きによって定められています。

では、犬の場合何歳からが高齢犬なのかというと、実は人のような取り決めはありません。犬の平均寿命は小型犬で15歳前後、大型犬で13歳前後とされていますが、獣医学の進歩や愛犬家の皆さんの知識の進歩もあって犬の寿命は年々長くなっており、動物病院では20歳以上のコに会うこともよくありました。

高齢犬の定義については、人のように明確なボーダーラインはありません。しかし、飼い主さんのおっしゃるように、多くのペットフードメーカーでは7歳齢以降を高齢期としてシニア用の商品を推奨しています。

犬の7歳というのは人間の年齢に当てはめてみると45歳程度なので、高齢というにはかなり若く感じますが、健康であっても7~8歳を過ぎた頃から皮毛に白毛が混ざるようになったり、また、内分泌疾患や腫瘍のような健康上の問題が起こりやすくなるとされているので、飼い主んさんはそのような点を意識することが必要です。

こういったことからも愛犬の定期的な健康診断が大切だといわれる理由がみえてきますね。

犬も人と同じように認知症になる

犬も認知症になる

犬も人と同様に、高齢になるにつれて身体の不調だけではなく、「認知障害症候群(CDS)」 「高齢性認知機能不全症候群(GCDS)」という体の変化から、若い頃と比べて行動にも変化がみられることがあります。

犬が認知障害症候群になると、飼い主のことを認識することができずに、呼ばれても反応ができない、排泄が上手にできなくなったり、睡眠のサイクルに変化が生じるようになります。

実際に高齢犬との生活で困っていることに関するアンケートでは、約40%の飼い主さんが行動の変化に困っていると答えていました。

また、「症候群」と名前がつくように、具体的な症状が決まっておらず、その犬によってさまざまな症状を示すことがあり、症状の重さにも個体差があります。

日本よりもペットの安楽死の選択が一般的なカナダでは、飼い主が安楽死を選んだ理由の約40%が高齢が原因であるという調査があり、それだけをみると高齢犬の介護がとんでもなく大変なように思えてしまいますよね。私もこのデータを知ったときには青ざめた記憶があります。

しかし、アメリカのペットフード会社が行った調査では、7歳以上の犬の飼い主のうち、行動の変化に気づいたのは75%だったのに対して、その変化について動物病院などに相談をしたり、解決を図ったのはそのうちの12%の飼い主しかいなかったそうです。

どちらも統計の結果でしかないことから確かな結論に結びつけることはできませんが、おなじ認知障害症候群でも、困る度合いには個体差が大きそうですね。

高齢犬ケアのお悩みは、まずかかりつけの獣医師に相談しましょう

愛犬の老化にともなって発症する認知障害症候群は、飼い主側の十分な理解と獣医学や行動学に基づいた正しいケアによって飼い主さんと愛犬の生活の質(QOL)を高く保つことができます。

注意が必要なこととしては、愛犬にみられているその症状が本当に老化によって発生しているのか?という考え方を忘れてはならないことです。

たとえば、愛犬が頻尿になっているならその原因は老化かもしれませんし、それに隠れて実は膀胱炎があったり、尿路に腫瘍がある可能性もないとはいえません。

高齢になると基礎疾患を発症することも増えるので、行動面に気になる変化があったときは、まずはかかりつけの動物病院や獣医師に相談して、基礎疾患に関する検査や診察を受けるとよいでしょう。

実際に夜間行動が問題で動物病院に来院した高齢犬では、80%以上に原因となる基礎疾患がみられたという報告もあるくらいです。何か愛犬に問題があったときは老化と決め付けずに念のためと思って動物病院を受診しましょう。

介護でシニア犬を叱るのはNG!人にも犬にもメリットは何もない

介護でシニア犬を叱るのはNG!人にも犬にもメリットは何もない

高齢犬と暮らす飼い主さんにとって、愛犬がこれまでできていたしつけや排泄に失敗したり、夜鳴きや夜中の徘徊をしてばかりになると、心配な気持ちと同時に、介助やお世話のストレスでイライラすることがあるかもしれません。

しかし、このとき感情に流されて愛犬を叱ってしまうようなしつけ方や接し方は、人にとっても愛犬にとってもメリットは何もありません。

高齢犬が排泄などに失敗することは「好奇心で変なことをしてみよう」というようなことではなく「一生懸命に頑張ったけれど、体が衰えているので上手にできなかった」という仕方のない状況です。 

そんな中で大好きな飼い主さんに叱られてしまうことは強い不安を感じてしまいます。

子犬のしつけを含め、犬のしつけで叱ることはどんなシチュエーションであっても原則NGですが、老犬の場合では特に、セロトニンという幸福感や安心感を司る脳内の伝達物質が減ってしまうため一層強い不安を感じてしまいます。しつけやお世話でイライラしないように、飼い主側も老化による行動の変化はある程度許容するような気持ちを持てるように心がけましょう。

高齢犬と暮らす生活環境を見直そう

愛犬が高齢になって行動面に問題が出てきたと感じたら、生活環境について考えてみましょう。

トイレに向かうサポート

まず、排泄面での問題ですが、高齢犬でトイレができなくなる原因として、運動能力の衰えによってトイレに行くのに時間がかかったり、目が悪くなることでトイレを認識しにくくなっていることなどが考えられます。

排泄の対策として、愛犬が過ごす場所とトイレの距離を近づけることや、視力が下がると夜間に目が見えないこともあるのでトイレまでの道にフットライトをつけたり、愛犬が過ごす場所とトイレまでの道にマットを敷くことで足の触覚を頼りに移動できるという方法もあります。

夜間の徘徊や夜泣きのサポート

次に、夜間に徘徊や夜鳴きをする犬のサポートですが、これは高齢になることで昼夜のリズムを司るメラトニンというホルモンが減少することが原因だといわれています。

ホルモンの減少自体は加齢にともなう生理的な変化なので改善することはできませんが、愛犬が夜間にゆっくりとよく眠れる環境づくりをすることが対策となります。

具体的には、ドアのすきま風や物音を減らしたり、体にやさしいベッドを用意したり、深夜や早朝に空腹で起きないように夕飯を少し遅い時間にしてみたりすることが効果的です。

高反発?低反発?シニア犬の体圧を分散させるマットの選び方

寝ている時間が多くなったシニア犬は褥瘡(床ずれ)を防ぐためにベッドやマットを使用するとよいでしょう。

体圧を分散させるマットには高反発のものと低反発のものがあり、どちらを使うべきか悩んでしまう飼い主さんが多くいらっしゃいます。

選びのコツとして、高齢になって元気はあるけれど、休んでいる時間が長くなった犬では高反発マットの方が体圧を分散させやすく、病気などで体を動かすのがつらい犬では低反発マットの方が体圧を分散させやすいという研究がありますので、高齢犬のケアとしては高反発マットがおすすめで、寝たきりの犬の介護では低反発マットをおすすめします。

おわりに(前編)

今回は、高齢犬の行動面のケア(前編)について紹介しまししたが、起こっている問題に対応して生活環境を改善するというお話しをさせてもらいました。

老犬介護!と聞くとなんだか大変そうだと感じてしまいますが、愛犬の体に変化があったとき、適切な対策を行うことで愛犬が年齢を重ねても楽しく過ごすことができるので、あまり身構えすぎず、難しく考えずに、愛犬のためにできることをしていきましょう。

次回は、家の中での移動や無駄吠え、散歩のお困りごとの対策と若いころからできる愛犬の老化防止のケアについてお話ししたいと思います。

愛犬との暮らしのご相談もお待ちしております!

次回後編もお楽しみに!

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獣医師T

獣医師。大学在学中はウイルス学の研究をしながら犬の行動学(しつけ)に関する学生団体に参加し、卒業後は動物病院での勤務を経てペット関係の企業で勤務。ワンちゃんについて勉強したことやこれから勉強することを社会に役立てられるように邁進中。

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