愛犬がごはんを食べない水も飲まない状態になったら心配ですよね?老犬や子犬、小型犬、病気など体力のない犬は食欲不振や水分摂取ができない状況が続くと脱水や命の危険が高まります。老犬(シニア犬)がドッグフードを食べない水を飲まない原因と対処法を解説します。
老犬(シニア犬)は突然ごはんを食べなくなったり、水を飲まなくなったりする
介護が必要な犬のお世話では、昨日までは食欲旺盛で元気にごはんを食べていたのに、翌朝になったら食欲がない、水分を与えても飲まないといった様子をみせることがあります。
老犬(シニア犬)がごはんを食べないとき、水を飲むことを嫌がる場合は、まず原因を探ってみましょう。
日々の生活の中で、愛犬の体調や症状に合わせて食欲を高めるなど、水分補給を行う方法を考えてあげることが大切です。
老犬(シニア犬)がごはんを食べない原因
愛犬が、なぜドッグフードを食べないのか?その原因について考えてみましょう。
犬は老犬になるとごはんをよく食べる日もあれば、全く食べない日もあるなど、食事のムラが出ることもあります。
犬がご飯を食べないときは、最初に食欲があるかどうかをチェックしてみてください。食欲があるのか、食欲がないのかを確認してみると原因を探るヒントになります。
・食欲があるけど食べようとしないのか?(食べ物に興味はあるが食べない)
・食欲が全くないのか?(食べ物に興味を示さない)
などは、老犬に限らずどの年齢の犬に対しても、健康を管理する上で大事なことです。
犬がストレスや疲れを感じている
人間もストレスや疲れで食欲不振になるのと同じように、犬も精神的なストレスや肉体的な疲れを感じたときに、食欲が落ちてごはんを食べなくなることがあります。
例えば、犬はペットホテルや入院、旅行、引っ越し、来客などの疲れやストレス、生活環境の変化から、食欲不振や体調不良を起こすことがあります。このようなときに、犬がごはんを食べないというのはよくあることです。
犬の甘えやわがままで食べない
犬は学習する動物です。例えば、
・ごはんを残すと飼い主さんが手で食べさせてくれた
・ドッグフードにトッピングをしてもらった
・いつもよりも美味しいごちそうが出てきた
・ごはんを食べないとたくさん構ってもらえた
など、飼い主に甘えたりわがままを表現したらよいことが起こったと学習している犬は、元気で食欲もあるのにごはんをわざと残したり、全く食べない様子をみせることがあります。
また、老犬(シニア犬)は、加齢や老化によって頑固になったり、甘えやわがままをいったりすることがあると心に留めて愛犬のお世話をすることも、犬の介護のポイントです。
愛犬が病気で食べることができない
食欲旺盛で元気だった愛犬の体重が減少してごはんを食べない場合は、からだのどこかに腫瘍や胃腸の不調、臓器、口腔内の炎症などの病気や異常を抱えている可能性もあるので、放置をせずに動物病院を受診することをおすすめします。
病気による食欲不振(食欲低下)は、早期に対応することが大切です。
食欲はあるのに食べると嘔吐や下痢をする、お水は飲むけどご飯は食べない、体力が落ちてきた、寝る時間が多い、元気がないといった気になる様子や変化に気がついたら、飼い主さんが自己判断せずにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
犬がからだに痛みを抱えている
愛犬がご飯を食べない原因に、からだの痛みやこわばりから、お腹が空いていて食べたくても痛くて食べることができないケースもあります。
例えば、歯周病や歯の破折などで固形物を噛めない、こわばりや神経系の痛みで首を食器まで下げることができない、からだの向きを変えられないといった愛犬の抱えるからだの痛みが理由で、ごはんを食べない様子をみせることがあります。
余命が近づいてきている
寝たきりになった老犬がごはんを目の前にしても一切食べなくなるときは、余命が近づいてきているサインとも考えられます。
とても辛いことですが、老犬がごはんを一切食べない、おやつや大好きな食べ物も全く受け付けないときは、飼い主さんがこれをしっかり受け止める必要があるでしょう。
もし、愛犬がドッグフードなどの固形物を食べないのであれば、水分を多く含む缶詰やペースト状、液状の食事を与えて次の段階の準備を進め、少しでも長く愛犬と一緒の時間を過ごせるようにすることも、犬の介護でできるサポート方法の1つです。
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老犬(シニア犬)がごはんを食べないときの対処法①与え方の工夫
愛犬が、いつも食べているドッグフードのニオイや味を嫌がって食べなくなったときは、愛犬にとってごはんの時間が嫌な時間にならないために、与え方を工夫すると再び食べ始めることがあります。
飼い主の手やスプーンを使ってごはんを与える
もし、愛犬が何も食べないのであれば、食事の時間に関係なく、愛犬が大好きなおやつなどの食べ物を飼い主さんの手から直接与えてみてください。
食器から固形物が食べられない場合や寝たきりの場合はスプーンを使って食べ物を与えてみましょう。
食器や食事を与える場所を変える
犬は、食器の音=食事と結びつけていることがあります。何も食べたくないときに、食器の音が聞こえたら食欲はますます落ちて、食事が嫌な時間になってしまいます。
こんなときは、愛犬の食器をいつもと違うものに変えて与えることで、再び食べ始めるきっかけになることがあります。
他にも食事を与える場所を変えてみることも、愛犬の気分を変える方法の1つです。
わんこ蕎麦方式で少量ずつ与える
人間も食欲がないときにお皿いっぱいの食事を出されたら、みただけで胸焼けをしませんか?犬も同じで、食欲不振で食べたくない老犬が、一気に食べなさいといわれたら、楽しい食事の時間ではなくなってしまいます。
こんなときは、空の食器とごはんを入れた器、スプーンを用意して、わんこ蕎麦の要領で食器が空になったらスプーン1杯ずつごはんを食器に入れていくと、犬が食事を食べ始めることがあります。
この方法は、1回にスプーンですくう量と、食器に入れるタイミングが成功のポイントです。
愛犬用の流動食を食器かシリンジで与える
愛犬が固形の食事を食べることができなくなったら、流動食や水分を多く含む食事を与えます。
食べない、食べることができない犬の食事に水分を含めることは、脱水を起こさないための対策にもなります。
まずはぬるま湯でふやかしたドッグフードや加熱したお肉、愛犬の好きな食べ物をフードプロセッサーでペースト状にした流動食を、いつもの食器で愛犬に与えてみましょう。
重度の歯肉炎や歯周病、口の中の腫瘍などで噛むことができず、食欲があっても食べることができない犬は、流動食を太めの針なし注射器(シリンジ)を使って与える方法もあります。
獣医師の判断で行う、強制給餌
何も食べなくなった犬への対処法として、獣医師の判断によっては、無理やりにフードなどのごはんを与える強制給与という方法もあります。
ただし、この方法は、犬に大きなストレスと苦痛を与えます。
飼い主さんはそのことをしっかり理解し、かかりつけの獣医師とよく話し合って家族が納得した上で行われます。
例えば、水分が少なめの処方食や栄養食の缶詰を小さく丸めて団子状にして、薬を与える要領で少量ずつ喉に飲ませたり、指につけたペースト状のごはんを口の上顎につけて犬に飲み込ませたり方法です。
他にも水分を含む流動食を入れたシリンジを、奥歯の間から少量ずつ口に流し込む方法もあります。
※犬の強制給餌は喉に詰まる可能性があるので、獣医師の判断で行われます。特に老犬は顎や鼻を上に向けて食べさせると食べ物が気管に入ったときに、肺炎になりやすく非常に危険です。
重度の歯肉炎や歯周病、口の中の腫瘍などで噛むことができずに食べられない犬は、このような食事の与え方が行われることがありますが、犬に無理やり食べさせる方法には賛否両論があります。
愛犬が元気でいて欲しい!少しでも長い時間一緒にいたい!そのためには食べさせければならないと思うのは飼い主で、本来食べることを選ぶのは愛犬です。
無理やり食べさせることで愛犬が嫌がるようであればそれを尊重し、残された時間は少なくても今後は点滴や、水分のみで栄養を補うこととなります。
老犬(シニア犬)がごはんを食べないときの対処法②食事内容の工夫
愛犬がいつも食べていたドッグフードを食べなくなったときは、食事内容に変化をつけるとスイッチが入ったように食べ出すことがあります。
ドッグフードをふやかして与える
ドッグフードを「ふやかす」「温める」といった方法は、フードのニオイが強くなるので、老犬の食いつきや食欲がアップすることがあります。
普段ドライフードを与えている場合は、いつものドッグフードをぬるま湯や犬用のミルクを使ってふやかして与えてみるとよいでしょう。
トッピングでごはんのメニューを変えてみる
愛犬の食欲がない場合、ごはんの中に違う食材やフードを混ぜる方法もあります。
いつも与えているドッグフードの上に、愛犬の好きな食べ物を乗せたり、缶詰を加えたり、サプリメントやかつお節をふりかけたり、おやつを細かく砕いて混ぜるなどトッピングをしてみましょう。
ごはんのニオイが変わり嗅覚を刺激することで、食欲を取り戻すことがあります。
手作りスープやポタージュを作る
全く食べない愛犬に少しでも活力を与えるには、タンパク質を多く含む牛肉、鶏肉、豚肉、馬肉、卵を含んだスープなどを作って与える方法もあります。
手作りのスープを飲んでくれた場合は、そのスープでドッグフードをふやかす、食パンに浸してあげる、凍らせるなど応用できて便利です。
最近は、加齢と老化による代謝機能の低下から、老犬のタンパク質の必要量が高くなることがわかってきており、肝臓や腎臓に疾患がない限り、体力や体重が激減している老犬のごはんには、犬の免疫を高めて体内の力を出すためにもタンパク質を積極的に与えるとよいといわれています。
おすすめは、タンパク質を含んだ新鮮なお肉(鶏肉)を使ったスープです。
食塩が添加されていない出汁、ネギ類が含まれていない味をつける前の野菜スープでも代用できますが、もし既に人間用に味付けされている場合は、水を加えて薄めれば与えることができます。
スープの他にも、犬が好みやすいかぼちゃやさつまいもを使った手作りのポタージュもおすすめです。
材料を煮て牛乳やヤギミルク、豆乳などを加え、ペースト状にするだけで作ることができますし、温めても冷やしても犬に与えることができるので便利です。
もし、少しでも愛犬が何か食べようとする兆候があるなら、少量のごはんやおやつの回数を増やすなど、そのタイミングで食べられるものを少しずつ食べさせてあげましょう。
老犬(シニア犬)が水を飲まない原因
介護を必要とする老犬が、水を全く飲まない場合、脱水を防ぐために水分補給を行う方法を考える必要があります。
特に、夏は気温や湿度の影響を受けやすく、愛犬に適切な水分補給ができないと、夏バテや熱中症、脱水症状が起こりやすくなる季節なので、体温調整が苦手な老犬(シニア犬)の介護では注意が必要です。
ではここからは、犬が水を飲まなくなったときの原因についてみていきましょう。
愛犬の水分摂取量が足りている
愛犬が元気な場合は、飼い主さんが知らない間に水を飲んでいる、ごはんに含まれる水分で水分量が満たされているなどが理由で、水を飲まないことがあります。
しかし、老犬が水を飲まない場合は水分を摂取させないと脱水を起こしやすいので注意が必要です。
犬のからだに痛みや病気がある
犬のからだのどこかに不調がある場合は、痛みや外傷からごはんや水を一切受け付けないことがあります。
愛犬の口の中に異物が刺さっていたり、歯周病や腫瘍を抱えていたりする場合も、水気を飲む動作をすると痛みが出ることから、水を飲まないこともあります。
お水を飲まない他に、ごはんを食べない、フラフラしている、元気がない、嘔吐や下痢、便秘、苦しそうにしているといった症状がみられる場合は、病気を抱えていたり、脱水を起こしていたりする可能性もあります。
このような様子をみつけたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
愛犬の余命が近づいてきている
ごはんと同様に、年齢を重ねた老犬が水を少ししか飲まない、または全く受け付けなくなったときは、お別れの時間が近づいている兆候の1つだといわれています。
老犬(シニア犬)が水を飲まないときの対処法①与え方の工夫
犬に必要な1日の水分量は、体重の5~7%といわれています。犬が水分を摂取することができないと脱水を引き起こすので、水分の与え方を工夫しましょう。
老犬(シニア犬)の脱水予防を行うことは、とても大切です。
水を与える食器を愛犬の高さに合わせる
からだに痛みやこわばりの症状がある犬は、床にある食器まで首を下げることが辛くて水を飲まない場合もあるので、愛犬の体高に合った食器台や給水器を使っていつでも自由に新鮮なお水を飲めるようにしましょう。
スプーンや食品用ボトルで水分を与える
スプーンは、水分だけでなく愛犬にごはんを与える際にも使える便利な介護グッズです。100円ショップで購入できるソースやドレッシング入れとして使う人間用の食品ボトルも活用できます。
スポイトや注射器(シリンジ)で水分を与える
老犬は口の渇きに鈍感で、水を飲まないと歯茎や口の中が乾きやすくなります。特に寝たきりの老犬で水も飲めない場合は、歯茎を少し潤すだけでも、口腔内の乾燥を予防することができます。
愛犬が自分から水分を摂取できない場合、かかりつけの獣医師の判断で、スポイトや針なしの注射器(シリンジ)などを使って歯茎を潤すなど、少量の水分を与えることもあります。
※本記事の獣医師の判断で行う強制給餌の項目にも記載しましたが、顎や鼻を上に向けて水を与えると気管に入って非常に危険です。必ず獣医師の指示、指導のもと行ってください。
老犬(シニア犬)が水を飲まないときの対処法②水に変化をつける工夫
愛犬が自分から水分を摂取しなくなったときは、与えようとしている液体に別のものを混ぜるなど変化をつける方法があります。
ドッグフードと一緒に水分を摂取させる
愛犬が、水は飲まなくても食欲があってごはんを食べる場合は、ドッグフードに水を加えたりぬるま湯でふやかしたり、ドライフードでなく缶詰などのウェットタイプのフードにすることで、食事と一緒に水分を摂取させることができます。
飲み水を冷やして与える
犬によっては、冷たい水を好んで飲むことがあります。
ただし、冷蔵庫で冷やした水や氷水を犬に与えると、腸が冷やされて機能が悪くなり、吐く、軟便や下痢をするといった悪循環を生み出し、さらなる脱水の原因となってしまうことがあるので注意が必要です。
水の代わりにスープを与える
水は全く飲まないが、他の飲み物や食べ物は受け付ける場合は、水の代わりにスープを与えると水分だけでなく栄養補給もできます。
肉や野菜で作ったスープやポタージュ、ヨーグルト、犬用ミルクなど、犬が食べることができるもので、食べながら一緒に水分摂取できるものであれば与えてOKです。
犬用のハイポトニック飲料や人間のスポーツドリンクを薄めて与える
老犬がお水を飲まない場合、愛犬の脱水を防ぐために、水分だけでなく電解質も補える犬用のハイポトニック飲料(経口補水液)や水分を多く含む犬用のゼリーなどを与える方法があります。
ハイポトニック飲料がない場合は、人間用スポーツドリンクで代用できますが、必ず5倍以上に薄めて与えましょう。
関連記事:【獣医師監修】ワンちゃんはスポーツドリンクを飲んでいい?
最後に
大切な愛犬がごはんを食べない、お水を飲まないというときは、その原因を探り、与え方を変えてみる、愛犬が好きな食材を与えてみるなど、アイデアを考えてみましょう。
それでも愛犬がどうしてもごはんを食べない、水を飲まない場合もあります。愛犬の体調の異変を感じたら、速やかに動物病院へ行く飼い主さんの判断も必要です。
寝たきりの老犬が、一切の食べ物や水分を口にしないときは、愛犬がお別れのときを決めたのかもしれません。愛犬が旅立ちを決めるそのときまで、できる限りのサポートをしてあげましょう。
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