【DX獣医師が解説】分離不安 犬が飼い主と離れると不安に…最新研究から学ぶ正しい対策法

しつけ

「うちの子、留守番のときだけ鳴いたり、部屋を壊したりする…」
そんな悩みを抱える飼い主さん、多いのではないでしょうか。
実はこの“分離不安”について、2024年に発表された英国の最新研究(Generation Pupプロジェクト)で、これまで知られていなかった発症のリスク要因と予防のヒントが明らかになりました。

この記事では、その最新データをもとに、獣医師の視点で「なぜ分離不安が起こるのか」「家庭でできる対策は何か」を科学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。

分離不安 犬が感じる“さみしさ”の正体と発症メカニズム

分離不安(Separation-Related Behaviour; SRB)は、「留守番中に吠える・破壊する・粗相をする」といった行動として現れます。
最新の研究によると、生後6ヶ月の子犬145頭を調査した結果、46.9%(68頭)が何らかの分離不安傾向を示したことがわかりました(Dale et al., 2024)。

つまり、およそ2頭に1頭が分離不安のリスクを持っているということです。
決して珍しい行動ではなく、むしろ一般的な“適応の課題”なんですね。
引用:Dale, A. R., et al. (2024). Canine separation-related behaviour at six months of age: Dog, owner and early-life risk factors identified using the ‘Generation Pup’ longitudinal study. Frontiers in Veterinary Science.

子犬期の睡眠時間と分離不安の関係

この研究では、生後16週(約4ヶ月)までに夜9時間以上の連続睡眠を取っていた子犬は、
6〜8時間しか眠っていなかった子犬に比べて、分離不安の発症率が約86%低下していました。

十分な睡眠は、脳の感情コントロールに関わる前頭前野と扁桃体のバランスを整えます。

つまり、「よく寝る子ほど落ち着いて行動できる」ということ。
睡眠環境を整えることは、分離不安の予防に直結します。

クレート(ケージ)や個室で眠る習慣が安心感をつくる

同研究では、「生後16週までにクレート(ケージ)や小部屋で眠る経験のある犬」は、そうでない犬に比べて分離不安の発症リスクが約97%減少するそうです。
これは、「自分だけの安全地帯」を早期に認識し、離れる不安を和らげるためです。

ただし、クレート(ケージ)は「罰の空間」ではなく「安心の場所」であることが大前提!!
日中におやつを食べたり、自然に中へ入って寝るような環境づくりが理想です。

飼い主の行動が分離不安を悪化させることも

「叱る」「無視する」は愛犬の不安を増やしてしまう!

本研究では、体罰や強制的なトレーニングを2種類以上用いていた飼い主の犬は、分離不安の発症率が約11倍高かったとあります。
「叱る」ことで一時的に静かになっても、それは「恐怖で黙っているだけ」。
信頼関係を損ない、結果的に「飼い主がいない=不安な時間」という認識を強めてしまいます。

まさかの帰宅時の“過剰な歓迎”もリスクに!?

「ただいま!」とテンション高く抱きしめるのも、実はNG行動とのことです。

過剰な歓迎行動を受けた犬は、分離不安の発症率が約5.8倍高い
犬にとって「飼い主が帰る=ビッグイベント」になってしまうため、離れるたびに不安が強くなります。

帰宅時はまずお互い落ち着いて、愛犬が静かになってから軽く声をかける。
これだけでも分離不安の予防になります。

家庭でできる分離不安の予防・改善法

① 1日10分から始める“ひとり練習”

初は1〜2分間の離席からスタートし、少しずつ時間を延ばします。
1日10分程度の短時間練習を継続すると、「飼い主はいなくても戻ってくる」と学習し、分離不安が軽減します。

② 安心できる“マイスペース”を整える

お気に入りの毛布やおもちゃ、飼い主の匂いのついた服を置いた専用スペースを用意しましょう。
犬が自発的にそこへ向かい、リラックスできることが目標です。(ただし、「入れっぱなし」「閉じ込める」はNG。あくまで“安心できる場所”を目指すこと。)

③ 「褒めて伸ばす」ポジティブトレーニング

正しい行動をした瞬間に1〜2秒以内におやつを与える。
この“即時強化”が信頼関係を築く鍵です。
叱責や無視はストレスホルモン(コルチゾール)を上昇させ、逆に「不安→問題行動→叱責→不安」という悪循環を生んでしまう可能性があります。

(注)ここで紹介した方法は、あくまで最新研究(Dale et al., 2024)の統計的傾向に基づいた一般的な指針です。犬の性格・過去の経験・健康状態・飼育環境によって、反応は大きく異なります。
特に、

  • 分離不安の症状が重い(自傷、過呼吸、嘔吐など)
  • 過去に虐待やトラウマがある
    といった場合は、獣医師やドッグトレーナーへの相談が必須です。

愛犬に合ったペースで、焦らず少しずつ。
「安心できる時間」を積み重ねていくことが、最大の治療になります。

まとめ

犬の分離不安は、性格ではなく環境と経験によって変わる行動です。
2024年の最新研究では、たとえ生後6ヶ月で発症していても、

  • 夜9時間以上の睡眠
  • 安心できるマイスペース
  • ポジティブトレーニング
  • 帰宅時の冷静な再会習慣

この4つを意識するだけで、発症リスクを大幅に下げることができると報告があります。
とはいえ、犬にもそれぞれのペースがあります。
焦らず、1日10分の小さなステップを積み重ねましょう。

参考文献

  • 主要論文: Dale, F. C., et al. (2024). Canine separation-related behaviour at six months of age. Animal Welfare, 33, e60.
【獣医師】用品

ペット業界には、動物に向き合う現場の背景で、解決が後回しにされがちな”見えにくい課題”が数多く存在します。 私は獣医師としては異例のキャリアを歩みながら、システム開発やバックオフィス支援、行政手続きなどの実務経験を積んできました。 そしてその知見と専門性を掛け合わせ、現場の「困りごと」を可視化し、仕組みで解決する取り組みを行っています。 そして【DX獣医師】としてペットと人がより豊かになる未来を、実現できるよう日々奮闘しています!

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