新型コロナウイルス(COVID-19)や、養鶏業に大きな打撃を与えるだけでなく人間への感染が報道されている鳥インフルエンザ、世界的な流行が危ぶまれるサル痘など、人間と動物の両方に感染する「人獣共通感染症」が世間を賑わせています。犬から人間に感染する病気もいくつか存在し、犬との生活では飼い主、犬ともに病気を予防することが重要です。
動物から人間に感染する病気はニュースなどで有名になりがちですが、その逆の人間から動物に感染する病気はあまり知られていないように思えます。今回は、人間から犬に感染する病気があるのか、そして人間側の体調が悪いときの愛犬との触れ合う際の注意点を解説します。
一般的に人間の病気は犬に感染しない
まず、前提として風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症は原則的に人間から犬へ感染することはありません。
ウイルスが動物に感染するメカニズムは複雑なので割愛しますが、ウイルス粒子には感染する対象を認識するためのシステムが存在するため、ほとんどのウイルスは決まった対象以外に感染することはありません。
コロナウイルス感染症や狂犬病などの人獣共通感染症と呼ばれる特殊な病気は例外となりますが、風邪や胃腸炎、インフルエンザなどの感染症は人間に限定される病気であるため、原則的には犬へ感染することはないといえます。
食中毒菌は犬にも感染するので要注意
犬との生活において注意が必要となるのは食中毒の原因となる病原菌で、人間と犬で共通して感染する可能性が高くなります。人間の食中毒にはカンピロバクター属菌やサルモネラ菌など、多くの細菌が関連しますが、これらの病原性細菌の多くは人間や犬、猫や牛馬など多くの動物に感染して同じような症状を引き起こす性質を持っています。
もし、飼い主さんやご家族が食中毒になってしまったり、食中毒が疑われるような症状があるときは、愛犬との触れ合いは最小限に抑え、口と口の接触は避けるようにしましょう。また、愛犬への感染予防に限らず、人同士の感染予防や自分自身への再感染を予防する意味でもトイレ周囲の消毒や汚物の処理には気をつけましょう。
食中毒細菌は、成犬よりも子犬で感染しやすく、少しの量の菌が感染しただけでも重篤な症状に至ることもあります。このため子犬と触れ合う際には手指の消毒を行うなど最大限の注意が必要です。
新型コロナウイルスは犬にも感染するが症状はまだ不明
このご時世ですので、新型コロナウイルスが人間から犬へと感染するのか、自分が感染した時に愛犬に近づいてもよいのかなど、愛犬との接し方が気になっている方も多いと思います。
結論から言うと「新型コロナウイルスは犬に感染しても症状を引き起こさない可能性が高い」と考えられています。なぜこのように回りくどい表現をするのかと言うと、犬は猫と比べて新型コロナウイルスに感染しにくく、人間の感染者が多い状況であっても人間から犬へと感染した例は数件しか確認されておらず、それらの症例では明確な症状がみられなかった、という状況からの推測しかできないからです。
また、「人」→「犬」→「他の人」というように、犬を介して他者への感染を心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、現在、犬から人間への感染は世界的にも確認されておらず、心配の必要はないと考えるべきでしょう。
「猫から人へコロナウイルスが感染」というニュースの見出しを見かけることもあるかもしれませんが、ほとんどは状況からの推察のみで、実際に動物からの感染が確認されている例はありません。
そのため、現時点では自身や家族が新型コロナウイルスに感染した際に犬への感染を過剰に心配する必要はなく、人間への感染予防や常識的な範囲内での消毒で十分だと考えられています。
※ただし、新型コロナウイルスはまだ十分に研究が行われておらず、変異が生じることも多いので「絶対大丈夫」という確証はありません。無理のない範囲で最大限の感染予防と感染時の対策を行いましょう。
人の体調不良時では、犬に感染する心配がなくても過度な接触は厳禁
人間から犬へと感染する病原菌と感染しない病原菌についてお話ししましたが、もし飼い主さんやご家族が風邪をひいた場合、愛犬といつも通りに遊んだり、顔を舐めさせるなどの濃厚な接触を行っても問題がないかといえば、決してそんなことはありません。
体調不良の時には人間も犬も免疫力が低下したり、呼吸器や消化器のバリアが弱まって感染しやすくなったり、感染した時に重症化しやすくなることがあります。
犬の体には、犬にとって無害でも人間に感染すると病気を引き起こすような細菌や真菌が多く存在します。このため、飼い主さんの抵抗力が低下している体調不良時には犬と接触することはいつも以上に病原体に感染しやすい状況ですので、過剰な接触は避けることをお勧めします。
自分が体調不良だからと愛犬と遊ぶ時間を減らしたり、散歩に行かないことに抵抗感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、お互いの健康のためには仕方のないことです。まずはご自身の回復を第一に考えましょう。
大変なご時世ですが、人間と犬の両者とも健康なドッグライフを過ごすために、愛犬のことだけでなくご自身の健康にも気を遣うことも忘れないようにしてくださいね。
今回は、人間と犬の感染症についてお話ししました。
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