【獣医師コラム】ドッグパッド愛犬相談室 第4回 いつから始める?なにから始める?ゼロから学ぶ高齢犬ケア(後編)

健康

前回のドッグパッド愛犬相談室では、何歳からがシニア犬なのか、犬の認知症の症状としつけ上の注意、生活環境の注意についてお話をしました。

今回の後編では、高齢で食欲の落ちた時の犬のケアと予防・おうちでできる高齢犬のためのトレーニング・若いうちから始めることができる予防ケアについて解説をしていきます。

前回のコラムはこちら→【獣医師コラム】ドッグパッド愛犬相談室 第3回いつから始める?なにから始める?ゼロから学ぶ高齢犬ケア(前編)

食欲の落ちた高齢犬には、専用のフードが必要?

食欲の落ちた高齢犬には、専用のフードが必要?

人間でも年齢を重ねると食事量が減っていきますが、犬でも同様に、高齢になると代謝の減少や消化機能の低下によって食べる量が減り、食欲が落ちていくことがあります。このようなときは食事をシニア犬向けフードに変更することを検討したり、食べつきが良くなるような工夫をしてみましょう。

市販のシニア犬向けフードはいろんなメーカーから販売されていますが、共通する特徴として、幼犬や成犬向けのフードと比べて脂質が控えめであることが挙げられます。これは高齢犬で運動量や代謝が低下することへの対応で、肥満や脂質代謝異常などの疾患の予防につながります。

食欲が低下している犬に対しては、嗜好性を高めるために香りの強いフードを与えることが効果的です。しかし、香りの強いフードは脂肪を多く含んでいる傾向があり、それだけを与えてしまうと脂質が多すぎることがあるので、主食にしているフードに少量混ぜて食べつきをよくするために使うとよいでしょう。

ふやかしたドッグフードやウェットフードを上手に使うなど臨機応変に対応を

ウェットフードも香りが強く、嗜好性が高いですが、柔らかいために犬が咀嚼する力を使わないことやドロドロとした状態であることから歯の隙間にこびりつきやすく、歯周病や歯牙疾患の原因になることもあります。そのため、ウェットフードは主食としてではなく、食欲にムラがある日にだけ与えたり、主食のドライフードに混ぜて与えるなどの工夫をしましょう。

高齢でドライフードが飲み込めなかったり、食べづらくなってしまった犬の場合は歯のことよりも食べられることを優先してドライフードをふやかしたりウェットフード主体の食事にすることもあります。愛犬の食事の様子をよく観察して臨機応変に対応しながら食事管理を行いましょう。 また、先ほど柔らかすぎるウェットフードが犬の歯に良くないと言いましたが、逆に硬すぎるフードも高齢犬の弱くなった歯や歯周には負荷が強く、食べづらくなってしまうので、粒が小さく飲み込みやすいフードが適しています。

好き嫌いをさせないためには若いうちからの食事ケアが大切

好き嫌いをさせないためには若いうちからの食事ケアが大切

高齢になってからシニア犬向けフードを食べない、口の状態が悪くなってご飯を食べられないという状況にならないための予防法として、若いうちから好き嫌いをなくすためのトレーニングや、オーラルケアを日常的に行うことがおすすめです。

若いうちからの犬の好き嫌い予防としては、離乳後から様々なニオイや食感の食べ物を経験させることが有効です。毎日異なるメニューを与えるのではなく、たまにおやつ感覚でいつもと違うものを食べさせてみるようにすると、病気になって療法食に変わったり高齢になってシニア食に変わったときに抵抗が小さくなることがあります。

また、病気になると入院して院内でご飯を食べる機会もあるかもしれませんが、慣れない環境でもしっかりご飯を食べることができるように、来客があった際や家族内など普段から様々な場所で色んな人からおやつをもらう経験をすることが好き嫌いの予防につながります。

デンタルケアも大切な犬のお世話のひとつ

デンタルケアも大切なお世話のひとつ

歯と歯周を健康に保つためのケアとしては、歯磨きを行うのが理想的ですが、歯磨きガムなどのチューイングで使えるものもありますので、愛犬の歯磨きが上手にできない方はそちらも活用するようにしましょう。

注意点としては、歯磨きガムやジャーキーを与える時は丸呑みしてしまうと喉に詰まることがあるので、小さく切り分けて与えるようにしましょう。骨や蹄(ひづめ)も噛んで楽しむ食品として売られていることがありますが、硬すぎるものは歯が欠けたり顎の骨を傷つける原因になるのでおすすめはできません。

高齢犬にはリハビリとしての運動を

犬の老化防止には生活環境の整備も重要となってくる

人間も犬も高齢になると、正常な変化として運動能力が低下し、運動しなくなることでさらに筋肉が萎縮しやすい状態になりますが、この現象に対しては、適度に運動を続けることが唯一の予防法となります。

若いうちから運動習慣を維持することが予防に最適であるのはもちろんですが、高齢になってからは無理のない程度で運動をさせるようにすることも予防と改善に有効です。

特に高齢犬では、老化による体の運動能力の低下や可動域の縮小などもありますので、若いころと同じ感覚で突然運動量を増やしてしまうと過度の疲労やケガを引き起こしてしまいます。

そのため、運動を始める前に体力がどの程度あるのかを見極め、ゆっくりと長めに散歩をしたり、寝ている時間が長い犬では起立させる時間を少し伸ばしたりする程度で、犬の体にダメージの少ない運動を繰り返すことを定期的に行うようにしましょう。

どれくらい歩き続けることができるか、何分間起立をしていられるかを大体の感覚でもいいので把握しておくと、リハビリとして運動を取り入れるときに目安として役立ちますし、何らかの疾患が生じて運動能力が急激に低下したときでもすぐに飼い主さんが気づくことができます。

いつもより少し多めに運動をさせることはリハビリとして有効ですが、犬が疲労するほど激しい運動をさせてしまうと、体を休めるために運動をしなくなるインターバルの時間が長くなり、結果として日常的に動かなくなることで体の衰えが加速してしまいます。このような犬にとって逆効果なリハビリにならないように、愛犬を運動させるときには疲れが出ない程度に注意しながら行ってください。

高齢犬のリハビリは健康維持のためのものであり、筋肉を鍛えるためのトレーニングとは根本的に異なるので、くれぐれも過度な運動は避けて、強度を上げるよりも頻度を高めて長く定期的に行うようにしましょう。

犬の老化防止には生活環境の整備も重要

サプリメントやシニア用フード、リハビリなど、プラスアルファとして行う高齢犬ケアも大切なことですが、普段の生活において高齢犬にとって不便な部分がないかなど生活環境を見直すことも重要です。

家の中の環境としては、床を滑らないような材質にすることが最も効果的です。滑る床の上では立っていても踏ん張りが効かないので、転びやすかったり、座る動作が難しくなったり、排泄場所でうまく踏ん張ることができずに排泄に失敗することもあるため、運動能力の低下が気になるようになったらご自宅の床材について考え直してみることをおすすめします。

また、介護ではバリアフリーという概念が普及していますが、まだ運動ができる状態の高齢犬の場合、生活環境内の段差や歩く距離を減らしてしまうと、運動をしなくなることで体の衰えが加速してしまいますので、無理のない程度で、運動の必要がある環境を残すことがリハビリにつながるケースもあります。

実際に人間の介護施設でもリハビリのために段差や廊下のわずかな傾斜をあえて作っている施設もありますが、これによって高齢者の認知力が低下しにくかったり、運動能力の回復向上がみられたという話もあるので、動物でも同様のことが期待できます。高層階まで階段で登らせるような過度のものは厳禁ですが、多少の段差でちょっと不便な程度であれば「運動」として捉えるようにしましょう。

若いうちから「楽しく」運動の習慣を

若いうちから「楽しく」運動の習慣を

高齢犬のリハビリとして「運動」をおすすめしましたが、高齢になってから今までの習慣でない運動を始めるのは犬にとっても飼い主にとっても負担が大きいものです。可能な限り、若いうちから定期的に遊びとして運動をさせたり、一緒にスポーツを楽しむようにすることで、運動が楽しいものだと犬に認識させることができると、生涯を通して愛犬に運動をさせることが苦になりません。そしてなにより愛犬と一緒に運動する習慣ができると飼い主さんも心身ともに健康になれるので非常におすすめです。

ドッグランでの運動や長い距離の散歩が面倒だという飼い主さんもいるかもしれませんが、こういった方へのおすすめとして、愛犬と一体になって楽しめる「アジリティ」や「ドッグダンス」のようなアクティビティがあります。

犬にも自分にも負担のかかりすぎない「楽しい」ケアを目指しましょう

犬にも自分にも負担のかかりすぎない「楽しい」ケアを目指しましょう

前編と後編に分けて高齢犬のケアについてお話しをしましたが、いかがだったでしょうか。もっと細かい点や気になることが聞きたい、こういうケアやこんなサプリメントって効果がある?というご質問やご意見、ご要望などがございましたら、是非ドッグパッドのお問い合わせフォームからコメントをお送りください。

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大切な愛犬といつまでも楽しく幸せに暮らすには、犬も人間も健康でいることが欠かせません。愛犬を大切にすることはもちろん重要ですが、それが飼い主さんにとって大きなストレスになってしまうならば、健全な関係性とはいえないと私は思っています。

歳をとって体が衰え、そしていずれ亡くなるという運命は全ての生き物にとって避けられないことです。限りある生命だからこそ、お互いが楽しくいられるように、生活の中で改善点を探したり、新しいアクティビティを一緒に楽しむなど、お互いに負担にならない方法で高齢になった愛犬のケアを行なってほしいと思います。

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獣医師T

獣医師T

獣医師。大学在学中はウイルス学の研究をしながら犬の行動学(しつけ)に関する学生団体に参加し、卒業後は動物病院での勤務を経てペット関係の企業で勤務。ワンちゃんについて勉強したことやこれから勉強することを社会に役立てられるように邁進中。

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