愛犬の「死」や「別れ」で飼い主さんが「ペットロス」になるのは、愛犬を心から愛し、大好きだったからこそのことです。愛犬とのお別れはとても辛いです。しかし、無理に克服しようとする必要もなく、思い出を消そうとする必要もありません。今回は、ペットロスの症状と体験談をご紹介します。
ペットロスとは?
「ペットロスとは」ペットロス症候群の略で、ペットとの死別や、盗難、失踪などによって、飼い主さんが大きな喪失感を感じる症状のことをいいます。 愛犬とのお別れを経験した後、あの時こうすればよかった、もっとお世話ができたのではないか、愛犬の死を認めることができない、病気に早く気がついてあげられなかった、違う動物病院を受診すればよかった、事故の責任を感じるといった後悔や罪悪感、自分への怒りを背負ってしまい、飼い主さんの心や身体のバランスが崩れてしまうことがあります。 愛犬を家族の一員として心から愛し、可愛がっていたからこそ、より辛く悲しく、時には愛犬がすぐそこにいるような気持ちになったり、絶望感や喪失感を感じてペットロスとなってしまうのです。
ペットロスの症状
ペットロスの症状は人それぞれに異なります。心理学的な観点からは「否認」「怒り」「罪悪感」「抑うつ」といった感情の細分化を行いますが、今回は、多くの飼い主さんが体験した症状を挙げていきます。
飼い主自身にみられる不安などの症状
- 何をやってもぼんやりした感じがする
- 喪失感や孤独を感じる
- 忘れ物が多くなる
- 記憶をなくす
- 寝られなくなる
- 愛犬を思い出すだけで涙が止まらない
- 歩いている犬を見れない、犬を見ると涙が止まらない
- 食欲がなくなり痩せる
- めまいや頭痛、ふわふわ、グラグラするような浮遊感を感じる
- 耳が聞こえにくくなる
- 目の前のことに、やる気や興味が出てこない
- 外に出るのが辛い
- 誰も自分の気持ちなんてわからないと考えるようになる
愛犬について考えてしまう症状
- 愛犬のお世話や治療方針への後悔や罪悪感を感じてしまう
- 愛犬の使っていた物を片付けることができない
- 愛犬の夢を見る
- 掃除をしていて犬の毛や隠れていたおもちゃが出てくると涙が出る
- 室内に飾った写真を見れない、見るだけで悲しくなる
- 犬の食事を作ろうとしてしまう
- 急に愛犬が苦しんでいる姿や亡骸の姿を思い出してしまう
- 犬の元気だった時の姿が頭にずっと浮かんできてしまう
- 愛犬がすぐ近くにいる錯覚を起こす
ペットロスが重症化してしまう理由
愛犬との別れが、飼い主さんに強烈なストレスを与え、感情の行き場がなくなることで、精神症状や、身体の不調をもたらして、ペットロスが重症化してしまうこともあります。込み上げてくる様々な感情を処理しきれなくなることや、自分を責め続けてしまい、このことがよりストレスを招き、不調が悪化して、重症化が長引いてしまうのです。 特に、亡くなる時に一緒にいてあげられなかった、交通事故に遭った、盗まれた、脱走した、飼い主さんの不注意や獣医療過誤(医療ミス)だったというような場合、どれだけ感情をぶつけても愛犬はもう戻ってこないという事実と、受け入れることのできない、受け入れたくない気持ちによってペットロスが重症化するケースがあります。
ペットロスを克服する方法
ペットロスは愛犬を愛していたからこそ起こる症状なので、辛い時にたくさんの思い出を消そうとしたり、無理に克服する必要はありません。しかし、生活に支障をきたすような精神状態の悪化や、重症化したペットロスの場合は、専門の医師に相談した方が、気持ちが少しでも早く楽になるかもしれません。 犬との別れは、犬と暮らす人なら誰もがいつかは経験する辛く悲しい事です。
ペットロスになり、独りで塞ぎ込んでしまっているよりも、誰かに話を聞いてもらうというのも、ペットロスを克服するきっかけとなる可能性もあります。 ペットロスになっている人には、まだ受け入れることができないかもしれませんが、少し落ち着いた頃に新しい犬と暮らすという選択も、ペットロスを前向きに克服できる方法です。
悲しんでいる中でも、犬のお世話をしなければならないので、亡くなった犬を忘れることはできないけれど、新しくやってきた犬との触れ合いが、心の傷を癒し、前向きにさせてくれるかもしれません。
そして、ペットロスを克服する方法で大切なことは、自分を責め続けないことです。愛犬は天国で飼い主さんや家族がずっと悲しみ続けていることを望んでいるでしょうか?愛犬の笑顔の写真を見てみて下さい。写真を撮った時、愛犬の目の前にはカメラを構えた笑顔の飼い主さんや大好きな家族がいたはずです。愛犬がずっと近くで見守っていてくれる、そう考え方を変えると、笑顔になれるかもしれません。
体験談
ペットロスで記憶を無くしてしまった体験談
実際に1年半以上ペットロスとなった方の体験談をご紹介します。
愛犬は腎臓病を患い、1年以上闘病しながら過ごしていましたが、腎不全と尿毒症の治療や輸血を繰り返し、尿毒症を起こすたびに大きな痙攣を引き起こし、愛犬の辛い姿を何度も見てきました。
状態が悪くなってきた頃、当時高校生だった私は、1週間の修学旅行に出発しなければならず、もしかしたらもう2度と逢えないのではないかと、当日泣きながら家を出たことを覚えています。
それから2日後、愛犬は亡くなり、両親はその事実を私に知らせることなく家に帰ると、そこには5日間、全身をドライアイスとビニール袋で覆われ、ガチガチに冷えて固まった愛犬の姿がありました。
私は、小さな頃からいつも一緒にいた愛犬の変わり果てた姿に愕然として、あまりのショックで、言葉では表現できない感覚と感情になったことを覚えています。
愛犬の火葬を行い、骨だけになった姿を見た時も身体の中に大きな衝撃がやってきて、やり場のない喪失感でいっぱいでしたし、畜犬登録の死亡届を出しに行った時も、受け入れることができずにとても辛かったことを覚えています。ペットの通販カタログが届いた時は、もう涙が止まりませんでした。
愛犬が辛いのに、輸血をして良くなる事で、何度も辛くて苦しい思いをさせてしまったのではないかと後悔もたくさんしました。 こんなんじゃダメだ。ちゃんとしないと。と愛犬がいなくなってからは、毎日を自分なりに一生懸命に過ごしました。
朝起きても愛犬がいない悲しみを感じながらも、表面ではいつも通り元気に学校に行き、部活をして家に帰るという普通の学生生活をしていましたが、知らない犬を見るたびに突然涙が出たり、ホームセンターのペット用品コーナーや、ペット売り場に踏み入れたくなかったり、大好きだった犬や近所の犬すら避けるようになりました。
新しい犬を飼えば?という言葉に、心を深くえぐられるような気持ちでいっぱいでした。
ある時、ふと数ヶ月前のことを思い出すと、あれ?なんだっけ?と記憶が断片的で、カレンダーを見てもどうしても全く思い出せないことがあることに気がつきました。中には、愛犬との思い出も思い出せない部分もあり、部活の合宿や大会があった、卒業式があった。といった大きな行事は思い出すことができるのですが、細かい部分が全く思い出せないのです。はっきり思い出すことができない期間は1年半以上ありました。愛犬を亡くしてから1年半、今思い返すとこれが「ペットロス」と呼ばれるものだったのだと思います。
動物好きな私が、犬や動物を1年半以上避け、なるべく見ないようにしていた生活のある日、ふと、急に変な感覚がやってきて、「やっぱり家に犬がいない生活は変だよ。」と突然言い始め、その後新しい犬を迎えることができ、辛かった愛犬の闘病の話や、犬や動物の話も楽に話せるようになりました。 自分では十分にわかっていたつもりでも、この時に、ようやく愛犬の死を受け入れることができたのかもしれません。
周りにペットロスの人がいたら・・・
周りにペットロスになっている犬仲間がいたら、話を聞いてあげることも助けとなるでしょう。自分がペットロスと思われる経験をしている方は、より悲しんでいる犬仲間の気持ちを理解できるのではないでしょうか。 今回の体験談にあったように、ペットの喪失感がある時に、大きな意味はなくても「新しい犬を飼えば?」という言葉をかけることで、大好きな愛犬を買い替えるような扱いを受けたと感じて、ペットロスとなっている方を深く傷つけてしまう場合もあるので、安易に勧めることはやめましょう。
まとめ
ペットロスは、愛犬やペットを亡くしたことのある人でないとわからない感情です。毎日一緒に過ごした愛犬のいなくなった喪失感は、飼い主さんや家族にしかわからないものです。無理に忘れようとする必要もなく、無理にペットロスを克服する必要もありません。ペットロスは愛犬を心から愛し、可愛がっていた証しです。いつの日か、笑顔で話せる時が来るまで、焦らず自分のペースでゆっくり前を向いて行けば良いのではないでしょうか。今回はペットロスについてご紹介しました。
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