【獣医師コラム】犬が雪を食べるのは胃腸に負担がかかり危険!雪遊びをする際のリスクと対策を解説

健康

犬が雪を食べても大丈夫なの?

犬が雪を食べても大丈夫なの?

「うちの愛犬が雪に大興奮して雪をぱくぱく食べちゃった!」という話をよく耳にしますが、実は、犬が雪を食べることは犬の健康にとってよくないことがいっぱいあるんです。

まず、積雪にはさまざまな不純物が含まれています。雪は雨と同じように空中の細かい汚れを含んでいるので、体に悪いものを多く含んでいると考えるべきです。

また、積もった雪には地面のゴミや他の動物の排泄物、そして融雪剤などの化学物質も含まれていることがあるので、少量なら食べて大丈夫!ということは絶対にありません。

犬は雪を食べると胃腸に大きな負担がかかる

犬は雪を食べると胃腸に大きな負担がかかる

そもそも、犬が普段のご飯やお水以外のものを口にするときは、常にそのについて考えなければいけません。また、犬といっても小型犬から大型犬まで体のサイズが異なることにも注意が必要です。

たとえば、5キロの小型犬が雪合戦をする程度の雪玉サイズの雪を食べたとすると、おおよそ100g程度なので、私たち人間に換算するとなんと1kgの氷を飲み込んだことになります。

私たちがよく目にする一般的なアイスクリームやシャーベットなどの氷菓が1つ100g前後だと考えると、雪玉サイズの雪が犬にとっていかに多い量であるかがわかりますよね。

ちなみにこれは雪に限ったことではなく、飲み物でも気をつけるべきことです。

そもそも、人間が飲むジュースや味のついたお肉の煮汁などを犬に与えることはNGですが、これらを犬が美味しくて飲みすぎてしまって水中毒という危険な病気になることがあります。

人間の感覚でちょっと多めに水分を摂っただけに感じていても、小型犬の体重ではとんでもない量を摂取していることになってしまうので、こういったことが起こらないように雪遊びでも厳重な注意をしなければなりません。

犬が冷たいものを食べると胃を冷やしてしまい、胃腸の運動が悪くなることで食べたご飯が消化できなくなって腹痛や嘔吐を引き起こすこともあります。また、雪は温度が低いだけでなく、胃で雪を溶かすために余計に熱量を奪われてしまうので、雪の冷たさ以上に犬の胃腸に負担をかけてしまうのです。

重症のケースでは、小型犬が雪を300g程度食べたことで胃の運動が抑制されてガスが溜まり、胃拡張捻転症候群という重篤な急性疾患になってしまったという報告もあります。

ちなみに、一般的に胃拡張捻転症候群は大型犬に多く、小型犬ではめったにみられない病気ですが、このケースでは雪を大量に食べたことで胃腸の運動が強く抑えられてしまったのでしょう。

これらの理由からも、雪が降ったときに愛犬がはしゃいでいても、雪を食べないように注意をすることが大切です。

雪遊びでは犬のしもやけに注意

雪遊びでは犬のしもやけに注意

童謡「雪やこんこ あられやこんこ」のなかで、犬は喜び庭かけまわり、と歌われていますが、猫と比べて犬が雪ではしゃぐのはなぜでしょう?

犬の行動学の観点からみると、犬は好奇心が強い動物なので、降雪によって天気や路面状況が変わることに興奮しているからと考えられます。

では、犬はなぜ雪の中でも寒さを感じずに元気に動き回ることができるのでしょうか。

愛犬家のなかには「犬は人間より体温が高いから寒さに強い」と考えておられる方もいるようですが、そんなことは全くありません!

確かに動物病院で犬の体温を測る際、平熱は37度中旬~38度台程度ですが、それは肛門から体温計を入れて直腸の深部体温を測る方法なので、体の表面を測る人間の体温より高くなるというだけのことです。

ちなみに人間も直腸温度はワキで測る体温より1度近く高いそうなので、実は犬も人間も体温の面ではそう大きく変わりません。

犬ソリで有名なアラスカン・マラミュートやシベリアン・ハスキーなどのオオカミに近い犬種は、寒い地域で生きてきた品種なので、被毛の断熱効率が高かったり熱が逃げにくい体の構造になっていますが、一般的な愛玩犬では人間同様に寒さで体調を崩したり、被毛のない肉球がしもやけになったりすることがあるので、雪の日や寒い日のお散歩では防寒具などを使って寒さに注意しましょう。

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獣医師T

獣医師T

獣医師。大学在学中はウイルス学の研究をしながら犬の行動学(しつけ)に関する学生団体に参加し、卒業後は動物病院での勤務を経てペット関係の企業で勤務。ワンちゃんについて勉強したことやこれから勉強することを社会に役立てられるように邁進中。

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