高齢犬に近づくにつれて、気になるのが骨や関節。高齢犬だけでなく肥満犬や特定の犬種、関節を悪くしやすい傾向があります。毎日の散歩を楽しいものにしたいですよね。そこで今回は犬の骨・関節の病気について獣医師が解説します。
犬の関節炎とは?
『関節炎』とは関節に炎症をきたす病気の総称です。
『関節炎』には免疫介在性多発性関節炎(全身性エリテマトーデスや特発性多発性関節炎、関節リウマチなど)や感染性関節炎など様々な病気が含まれます。
しかし、一般的に犬で『関節炎』と言った場合、その多くは『変形性関節症』をあらわすことが多く、『変形性関節症』は『骨関節炎』とも表現されます。
ここでは、『骨関節炎』というワードを用いて解説してきます。
犬の骨関節炎とは?
関節への負荷増大(肥満、関節軟骨支持靱帯の損傷など)や関節軟骨の代謝異常(加齢性変化など)により、軟骨の変性、不可逆的な関節構造の変化を呈する慢性疾患です。軟骨がすり減り、関節内に炎症を伴うため痛みが生じます。
骨と骨の間には関節が存在し、関節は関節包という袋状の構造物に包まれており、その内部は潤滑液の役割を果たす滑液で満たされています。また、硬い骨同士の間で衝撃を和らげスムーズな可動を可能にするため、関節内の骨表面は、滑らかで弾力のある軟骨で覆われています。
加齢に伴い軟骨が摩耗し、関節液の量や性状が変化することで、高齢になると多くのわんちゃんで骨関節炎が発症します。肥満や高脂血症のワンちゃんや、運動量の多い犬種では特に注意が必要です。
若齢から骨関節炎が進行するケースもあります。大型犬では股関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼やレッグペルテスなどの発育期に発症する整形外科疾患に伴って、骨関節炎が若齢から発症することがあるため、肢を挙上するなどの症状がみられた場合には一度病院で診てもらいましょう。
犬の骨間節炎の症状は?
発症初期の臨床症状は潜在的で、その後、軽度な臨床症状が発現しても、行動的な変化や加齢に伴う活動性の低下として見過ごされているケースが多くあります。
寝起きの動きが悪い、散歩に行きたがらない、遊ばなくなった、歩き方が変わった、体を触られるのを嫌がるようになったなどの症状があれば骨関節炎の可能性がありますので、一度病院で診てもらいましょう。
そしてさらに進行すると強い痛みを伴い、関節可動域の低下、筋量の低下により、肢を挙上したり、ひきずったり、よろめくようになり、最後には歩けなくなってしまいます。できればそうなる前に治療を開始してあげるとよいでしょう。
下記の項目をチェックしてみましょう。
- 寝起きの動きが悪い
- 散歩に行きたがらない
- 遊ばなくなった
- 歩き方が変わった
- 体を触られるのを嫌がるようになった
犬の骨関節炎の治療は?
変形性関節症による関節構造の変化は不可逆的であるため、治療は進行を最小限に留めることと、炎症や痛みの緩和が目的となります。
①疼痛管理
消炎鎮痛剤やステロイド剤などの投薬治療。
②軟骨保護
ヒアルロン酸や多硫酸化グルコサミノグリカンなどの注射治療。
③運動管理
適度な運動により関節可動域や筋量を維持する。
③栄養学的管理
グルコサミンやコンドロイチン硫酸、緑イ貝抽出物、魚油などのサプリメント。
肥満犬には体重管理が必要。
発育期の整形外科疾患が関連している場合や、前十字靭帯断裂などの整形外科疾患を伴う場合には、早期の外科的介入が有効な治療となるため、症状がある場合には一度病院で相談をしましょう。
犬の骨関節炎に対して自宅でできることは
滑るフローリングは関節に負担をかけるため、滑りにくいものを敷いてあげましょう。
段差の上り下りは関節に負担をかけるため、スロープを設置するなど生活スペース内の段差は極力減らしてあげましょう。
極端な運動制限は筋量の低下や関節可動域の低下を伴い、歩行機能を低下させる原因となりますので、短時間の散歩や水中歩行など適度な運動を行いましょう。
骨関節炎発症前に気を付けるポイントとしては、激しい運動は関節に負担をかけ骨関節炎発症の原因となる可能性があるため、適度な運動を心がけましょう。また、肥満は骨関節炎を含め多くの病気のもとですので、日頃からきちんと体重管理することをおすすめ致します。
生まれつき膝関節や股関節に問題を抱えている場合には、早期に骨関節炎が進行する可能性があります。一度発症してしまうと骨関節炎は元に戻りません。気になる症状があれば早めに病院を受診しましょう。
グルコサミンやコンドロイチン硫酸などのサプリメントは補助的治療として自宅で気軽に始めることができるケアの一つでしょう。
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