「スマイルハウス」は障がいがある人と保護された動物が共に暮らす“保護動物共生型の障がい者シェアハウス”です。アメリカと日本の動物福祉の違いを目の当たりにして、日本で何かできないかと思い、障がい者支援と動物福祉の事業を立ち上げたスマイルハウス代表の鈴木大輔さんにお話を伺いました。
保護動物共生型の障がい者シェアハウスとは?
障がい者と保護動物が関わり合う保護動物共生型の障がい者シェアハウスとはどんなところなのか?ロングインタビューで鈴木代表の想いや今後の目標などを語っていただきました。
関連ページ:保護動物共生型障がい者シェアハウス「スマイルハウス」公式ホームページ
「スマイルハウス」は障がい者が利用するグループ施設
――保護動物共生型の障がい者シェアハウスはどのような施設なのでしょうか?
鈴木さん:シェアハウスというと高齢者向けの介護施設と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、保護動物共生型の障がい者シェアハウスは、知的障害や精神障害のある障がい者が利用するグループ施設です。
障がいの程度については、施設によって対応できる幅が異なります。
施設での人の出入りは少ないので、施設を利用される方たちにとっては居心地の良い空間です。
施設内では利用者さんが保護動物と一緒に暮らしている
――動物が一緒に過ごす施設ということで、設備などで通常のグループホームと違う点はありますか?
鈴木さん:施設面で通常のグループホームと異なる点としては、室内にキャットウォークや施設の中を猫たちが自由に動けるように穴(キャットドア)を設けているところでしょうか。
――スマイルハウスさんには、現在何人の利用者さんと何頭くらいの動物たちがいるのでしょうか?
鈴木さん:施設には、現在利用者が8名、猫が8匹います。
施設にやってくる保護動物はさまざまな背景がある犬や猫たち
――飼い主がいない保護動物たちということで、この動物たちはどこからやってくるのですか?
鈴木さん:スマイルハウスにやってくる動物たちは、飼い主が先に亡くなってしまったり、野良犬や捨て犬、野良猫、捨て猫など、さまざまな背景を抱えている犬猫たち(保護動物)です。
弊社が会社として訳あって飼い主のいない動物たちを施設から保護をして、障がい者のグループホーム内でワンちゃんや猫ちゃんを飼っています。
保護施設などから保護された動物たちは、新たな動物たちの家族を探すのではなく、終の住処として一緒に暮らしています。
動物たちは職員と利用者さんが管理を行う
――お散歩や食事、ブラッシング、獣医療など犬や猫たちのお世話や管理は利用者さんが行っているのですか?
鈴木さん:施設に常駐している職員は1日3名でサポートを行っていて、獣医療以外は基本的に動物好きの職員と利用者さんが一緒に動物たちを管理しています。
動物たちのお世話についても、障がい者の方々が積極的に行ってくれるので、とても助かっています。
保護動物共生型の障がい者シェアハウスが利用者さんに与える影響
――動物たちと共に暮らすことは、利用者さんにどんな影響やメリットがあるのでしょうか?
鈴木さん: グループホームでは利用者さんは何もしなくていいのですが、ペットがいることで人への貢献にはまだ自信が無いけれど、動物のために何かしてあげようとする自主性や動物への母性のような意識が生まれていきます。
猫ちゃんはリビングにいる時間が長いので利用者さんにとって癒しやアニマルセラピーといった効果もありますね。
例えば、幻覚が見えるといった障がいの区分が重い方が、保護動物共生型の障がい者シェアハウスを利用することで、就労にも行けるようになるくらい心の病が改善されたケースもあります。
保護動物共生型の障がい者シェアハウスをはじめるきっかけ
――鈴木さんがこの福祉事業をはじめられたきっかけはありますか?
鈴木さん:世の中から弱者を減らしたいと思ったことがきっかけです。
以前アメリカにいたことがあり、アメリカでは多くの家庭で犬や猫を飼っていましたが、そのほとんどが保護された動物たちでした。
アメリカには動物保護団体の施設が多く、全体の6割程度が新しい飼い主のもとに行きます。
日本に帰国して日本国内の保護施設数を調べてみると圧倒的に少ないことが分かりました。ここが、何かをしなければならないという気持ちが芽生えた瞬間です。
でも、保護施設を作るにはお金も必要ですし、運営費も必要になります。そこで他の事業と一緒にできないかと考えていた時に出会ったのが、“障がい者グループホーム”です。
グループホームで動物たちを保護すれば、障がいのある方の心のケアをすることができる。さらに動物たちのご飯代や治療費なども払える。まさにやりたいことが全て叶いました。
動物のいるシェアハウスをはじめることはハードルが高かった
――施設をスタートするまでに大変だったことはありますか?
鈴木さん:そうですね。物件を探すことが大変でした。障がい者のグループホームと聞くと、何か問題を起こすのではないかと思われる方が多いようで、事業内容でNGと言われることが多かったです。
また、ペットの飼育についても、最終的に多頭飼育になるのではないかと心配をされ、断られることが多かったです。
最終的な目標はスマイルファームを作って「動物療育」を実現したい
――スマイルハウスさんの目標などはありますか?
鈴木さん:スマイルハウスは、障がい者の自立支援をサポートするための施設ですが、飼い主のいない保護動物に対しても命を助けることができるというところが、この事業のメリットです。
入居者にとっても動物と触れ合うことで穏やかな気持ちになるといったメリットもあります。
障害があることで弱者になってしまうことがあります。また、弱者だからこそ、声を上げにくくなるともいわれていますが、こういった声を上げづらい方々を一人でも救いたいと思います。
そして、その声をひとつひとつ拾っていき、就労ができないけれど働きたい、働いて行く上で生活できる賃金を出して欲しいといったニーズに応えていきたいです。
今後は、障がいのある方が「こんなのあったらいいな」というサービスを広げるなど、利用者さんや職員のやりたいことを叶えていきたいと考えております。
私たちの最終的な目標は“スマイルファーム”を建設し、そこで動物療育が行えるような施設を作ることです。
障がい者の方も高齢者の方、子供たちなど、保護動物から癒しや学びをできる場を作り、誰も取り残されることのない、また不幸な動物たちを減らしていけるようなビジネスを展開していきたいと考えています。
今は「スマイルハウス」ですが、将来的にはスマイルファームを作って、牧場を作って教育の場所にしたいですね。そして、障がい者の自立支援として、雇用の創出を行っていきたいです。
グループホームが1棟増えるごとに救える命が増えていくと考えています。まずは千葉県内で一番有名なグループホームを目指したいです。
――ありがとうございました。
お問い合わせ先
会社名:株式会社R-Create
お問い合わせ先:03-6456-3525
公式ホームページURL:https://r-create.biz
Instagram:@smilehouse_sns
facebook:@smilehouse2173
編集後記
障がい者福祉と動物福祉、これらの事業が人に対しての癒しと動物の保護活動と双方で地域社会の貢献につながって、よい影響を与えることができるというのは素敵なことですよね。
施設としては、グループホームの食事は“家庭の味”にこだわっていて、お米は直接お米屋さんから、食材もできる限り現地のものを使用していたり、冷凍食品や出来合いの物などは使用していないということでした。こういった食の意識なども、今後のビジョンにつながっていると感じました。
鈴木代表は、これからスマイルファームの実現に向けて取り組まれていくとのことです。障がい者の方の就労支援や動物の命を救う今後の活動に注目したいです。
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取材/画像提供:株式会社R-Create
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