子犬のしつけは早い時期に始めることが大切だといわれています。その理由は簡単にいうと「人間と暮らしやすい家庭犬になること」と「子犬の社会化で多くの経験をさせること」です。社会化期と呼ばれる時期に、子犬がさまざまなことを体験し、学習することが、犬の性格に大きな影響を与えるからです。
今回は、子犬を家族に迎えるにあたり、しつけを始める時期や、しつけを行うべき内容についてご紹介していきます。
そもそもなぜ犬のしつけをしなくてはいけないの?
子犬に限らず、犬のしつけが大切であること、しつけは行った方がよいことは、みなさんもなんとなくご存知だと思います。では、そもそも、どうして犬のしつけをしなければならないのか?ということについて考えてみたことはありますか?
「犬のしつけ」という言葉には、一般的には「おすわり」や「伏せ」「待て」「リードウォーク」を含めた幅広い意味で使われていますが、しつけという言葉は本来、礼儀や作法を教え込むことをいいます。これは人間でも同じことですが、犬でいうと「人間と暮らしやすい家庭犬(ペット)になること」といえます。
具体的には「自分の名前の認識」「トイレが上手にできる」「噛まない(攻撃しない)」「無駄吠えをしない」「お散歩ができる」「いたずらをしない」「飼い主に意識が集中できる」「名前を呼ばれたら近くに来る」「拾い食いをしない」「ケージやハウスができる」「犬同士で喧嘩をしない」などで、犬をコントロールできる状態であることを目指します。
基本的なしつけの一環として行われている、飼い主さんの指示で座る「おすわり」も、犬が主従関係を学び、飼い主のいうことを聞くようにするためと、犬とコミュニケーションをとるための方法で、本来は「訓練」や「トレーニング」という意味合いを持つものです。
極端な話になりますが、「犬と共に暮らす」のではなく、人間と犬とのコミュニケーションを全く取らず、犬に餌だけを与えるだけの育て方をしたとしたら、犬は食事にだけ興味を持ち、本能を強く出し、犬のコントロールができない状態となり、飼い主さんと一緒に暮らすことは難しいものとなるでしょう。
犬に愛情を注ぎ、人間と犬との信頼関係と主従関係を築き、人間と暮らしやすい犬になるために「しつけ」をしなくてはならないのです。
犬のしつけを始める時期はいつ?
しつけを始める時期は、できるだけ早く、子犬を家に迎え入れた日から行った方がよいといわれています。
子犬の時期のしつけがとても大切
生後約3週〜14週頃までの期間を「社会化期」と呼び、子犬の性格の形成や成長にとって大切な時期を迎えます。子犬が母親や兄弟達、ブリーダーの元を離れて、新たな飼い主さんと出会うこの社会化期に、さまざまな経験をすること、学習することで、人間と共に暮らしていく基礎を作るのです。一緒に暮らしていく家族のルールや人間社会のルールを教えるために大切なこの時期に、たくさんの経験をさせてあげましょう。
しかし、注意することがあります。それは怖がっている犬に無理をさせないことです。さまざまなことを経験し、吸収する時期に、強烈な恐怖体験をすると、その犬がトラウマを抱えることがあるからです。
例えば、お散歩デビューして間もない頃、ランドセルを背負った元気な大勢の子供達に囲まれた時に、子犬が怯えたり、嫌がっているのにも関わらず、飼い主さんが多くの人に触ってもらって社会化をさせようと意気込み、可愛いからと子供達に愛犬を触らせたことで、ランドセルを背負っている子供や、子供自体、急に近づいて来る人間を怖がるようになったというケースもあります。
しつけは大切です。しかし、無理はさせずに、できなくても飼い主はイライラしないで、犬のペースに合わせてしつけを徐々に行っていくことが結果的によい方向につながります。
子犬のうちにしつけておきたい10のこと
子犬のうちにしつけておくことで、さまざまなトラブルを防ぐことができます。しつけは怒鳴ったり厳しく怒ったり、体罰を使って犬に教えることではありません。上手くできたら褒められることで喜びを感じて、子犬が飼い主の狙い通りの行動をするように導くことがしつけです。
ここからは子犬にしつけておきたいこと、そのアプローチ方法の例を簡単にご紹介していきます。
【しつけ1】 人間との主従関係をはっきりさせる
犬の言う通りにさせていると、自分の立場が上だと勘違いする可能性もあります。飼い主がリーダーであり、それに従うことをしっかり学習させます。
- 名前を早期に認識させる
- 犬が一番お気に入りのおもちゃを使って遊び、最後に飼い主さんが取り上げて終わらせる(いつもおもちゃをたくさん室内に出しておかない)
- 散歩をしっかりと行い、ストレスを発散させる
- 食事の時間は基本的に人間が先に食べてから与え、食事中に手を近づけると唸る場合は、人間の手からごはんを与えるようにする、人間の食べている食べ物は与えない
- 犬に自由を与えすぎないで、ケージにも入れるようにする
- 甘噛みや人間に前足をかけたり、飛びついてじゃれる遊びをやめさせる
- 犬をベタベタと1日中撫でたりしない
- 人間の過ごすソファーやベッド、布団に犬を上げない
【しつけ2】飼い主だけでなく誰でも、からだに触れることができるようにする
病気や怪我をした時に獣医師の診察を受けるためにも、普段から飼い主さんや家族はもちろん、誰でもからだに触れることができることが、スムーズな治療と病気の早期発見につながります。トリミングやペットホテルでも、自分のことを守るためにからだを触らせないように神経を使うことが、犬に大きなストレスとなってしまいます。
お散歩の後の足ふき、デンタルケア、ブラッシングと犬のからだを清潔に保つためにもからだに触れることは大切です。
- ごはんを手から与えて、その間からだに少しずつ触れるようにする
- 犬のマッサージをする時間を作り、コミュニケーションをとる
- 他の人におやつを与えてもらう
【しつけ3】人間が好きで、噛んだり攻撃をしないこと
人間は安心できる存在であることを学習させ、人が好きでフレンドリーな犬になれるようにしましょう。人への恐怖や不安からくる、噛み付く、吠える、攻撃する、咬傷事故を起こすといった問題行動は、人間社会で暮らすには大きなトラブルとなります。子犬の甘噛みは習慣になる前にできるだけ早くやめさせるべきです。
※体罰を使ったしつけは、恐怖から結果的に人間不信や攻撃性を生む原因になるのでやめましょう。
- 噛んでもよいおもちゃを使い、犬とのコミュニケーションを増やして一緒に遊ぶ
- 歯の抜け変わる時期(生後8ヶ月位まで)は、噛んでもよいものといけないものの区別を徹底する
- もし甘噛みの延長で人間のからだを強く噛んだら、痛い!と高いトーンの大きな声を出して意思表示をし、犬を驚かす
- 手からごはんやおやつを与える
- 名前を呼ばれたら近くに来る、「おいで」をしてできたらおやつを与える
- 「おすわり」「待て」「伏せ」といった基本的なトレーニングを継続して行う
【しつけ4】ケージやハウスができること(お留守番ができること)
ケージやサークルが安全な場所で、犬が休めるスペースであると学習することが大切です。ケージに入れるようになることで、お留守番ができるようになります。
- 子犬を迎えた初日は、子犬が使っていたにおいのついたタオルなどをもらってきて、ケージの中に入れておく
- 鳴いても放っておいて諦めさせる
- うるさい場合は、ケージ内の通気性に気をつけながら、上から毛布などをかける
- 吠えている時には、犬の要求に応えず、ケージから出さない
【しつけ5】トイレが上手にできること
トイレのしつけは、子犬を迎えたらすぐに始めましょう。鼻を下に下げて部屋の中のにおいを嗅いでいるのはトイレの合図です。ハウスから出したとき、寝起き、ごはんを食べた後、興奮しそうな状況はトイレをする可能性が高いです。トイレをサークルで囲んでセットしておき、においを嗅いだタイミングで、サークルの中に子犬を入れ「チッチ」「トイレ」「おしっこ」と決めた言葉で声掛けを行い、成功したらすぐにサークルから出して褒めてあげましょう。
トイレの失敗で怒ったり体罰を使ったりすると、隠れた場所で排泄するようになったり、ウンチを隠そうとして食糞する可能性があります。失敗しても怒らず掃除をし、上手にトイレができたら褒める動作を繰り返し行います。
【しつけ6】無駄吠えをしないこと
警戒が強い犬、要求が強くわがままな犬は無駄吠えをする傾向があります。
- 犬の要求に応えない、諦めるまで無視をする、姿を消す
- 「おすわり」「待て」「伏せ」といった基本的なトレーニングを継続して行う
- ケージトレーニングを行ってお留守番を練習する
- 分離不安にさせないように、徐々に飼い主と離れる時間を作る練習をする
【しつけ7】大きな音や日常の生活音に驚かないこと
怖がりの犬は、電話、インターホン、掃除機、ドライヤー、テレビ、ラジオ、雷、花火、踏切、道路の音といった全ての音に敏感です。大きな音や日常の生活音に慣らすことで、急なパニックや交通事故から愛犬を守ることができます。苦手な音をICレコーダーに録音して、小さな音量から流し続けて音慣れを行う方法や、雷が鳴りそうな日は、窓をしめておくといった対処も必要になります。
【しつけ8】犬同士の喧嘩をしないこと(社会性があること)
母犬や兄弟達と過ごしていた期間や、社会化期に多くの体験ができなかった犬は、経験不足で、犬同士の正しい挨拶の仕方がわからず、喧嘩やトラブルに巻き込まれやすいです。
- 他の犬が近づく際に、飼い主さんに「大丈夫ですか?」と断りを入れる
- 犬に慣れるまでは、ドッグランなど不特定多数の犬が集まる場所に連れて行かない、犬から絶対に目を離さない
犬のコミュニケーションは犬同士で解決するしかありません。犬同士にも相性があるので、無理に犬の挨拶をさせる必要はありませんが、相手の犬と自分の犬の目線が「バチッ」と合って、尻尾を高く上げて背中を逆立てて、動かない時は、喧嘩の兆候です。この場合は犬の目を合わせないように気をつけながら、足元にドッグフードやおやつ、おもちゃをばら撒いて気を引いている間にその場から移動させることも方法の1つです。
【しつけ9】お留守番中にいたずらをしないこと
お留守番で、室内をフリーにしている場合、家具や電気コードといったあらゆるものを破壊する可能性があります。子犬はなんでも口にするため、誤飲は命に関わることもあります。
- お留守番の間、長く噛めるおもちゃを与えておく
- ストレスを溜めないように運動を多くさせる、お留守番の前に散歩に行って疲れさせる
- ケージトレーニングをしてお留守番をさせる
- 飼い主さんが出かけるときと帰ってきた時に、犬に構わず無視してテンションを上げないようにする
【しつけ10】お散歩が上手にできること
お散歩が上手にできることも大切です。あっちにもこっちに行きたいところに引っ張る犬の散歩は体力も多く使いますし、交通事故や犬同士の喧嘩に巻き込まれることもあります。
- 飼い主が主導の散歩(リーダーウォーク)を行い、引っ張らないことを徹底させる
- 愛犬がお散歩のコースを選ぶのではなく、飼い主がお散歩コースを選び、毎日同じコースでなく、時々コースを変えて、犬に新しい刺激を与える
子犬のしつけで気を付けること
子犬のしつけで気をつけることは、できるだけ早く子犬のしつけを始めることです。そのためには、子犬を迎え入れてから適切なワクチンプログラムを行い、できるだけ早くお散歩デビューできるようにしてあげることです。
子犬の時期はあっという間に過ぎてしまうので、1日でも1週間でも早く社会化を行える環境を整えましょう。
もしお散歩ができない期間に犬に刺激を与えたい場合は、家の中の他に、子犬を抱っこして庭や近所を歩く、車に乗せて近所をまわるというのも、刺激に慣らす方法の1つです。
犬のしつけが上手くいかないときは遊びながら、楽しく!
体罰や恐怖でいうことを聞かせるのは、トラウマになるか、極度の怖がりになるか、攻撃性の高い犬になる可能性も考えられ、子犬の心の発育に良くありません。楽しい!嬉しい!飼い主ともっと一緒にいたい!と思えるように褒めてしつけることが大切です。
まとめ
しつけは子犬でも成犬でも、新しい家族になったその日からはじめることをおすすめします。理由は、犬を混乱させないためです。問題を起こすまで好き放題にさせておいて、ある日突然全てのことを否定されて、直していくのは犬にとって大きなストレスになります。
家族の一員となった日から、飼い主さんと家族全員でルールを決めてそれを徹底しておけば、犬のストレスも、飼い主のストレスもなく当たり前の生活として、犬に学習させることができます。
社会化の時期は、子犬のからだと心の成長に非常に重要な期間となります。人間と犬との信頼関係や主従関係を築き、愛犬が人とも犬同士でも社交的な犬、人間と暮らしやすい家庭犬となるようなしつけを心がけましょう。
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