狂犬病の予防接種はなぜ必要?愛犬の飼い主として狂犬病について知っておこう

獣医師コラム

はじめまして獣医師Yです。これから不定期で記事を書いていきますのでよろしくお願いします。

さて、毎年4月から6月は狂犬病の予防接種シーズンです。すでに狂犬病シーズンも終わりに近づいていますが、みなさんのご家族であるワンちゃんの予防接種は終わりましたか?犬を飼う上で狂犬病の予防接種は飼い主の義務となっています。
未接種犬が咬傷事故などを起こしてしまった場合、飼い主に責任が問われるため必ず受けさせなければなりません。では義務!義務!とは言いますがなぜ義務なのかみなさんは考えたことはありますか?今回はそんな内容を掘り下げてみたいと思います。

そもそも狂犬病とは?

まず最初に、狂犬病についておさらいしてみましょう。鳥インフルエンザや豚コレラなどニュースで時々目にする動物に関する伝染病は文字通り、鳥や豚で蔓延するもので基本的に人に感染することはないとされています。

狂犬病も文字の中に『犬』と書いてあるので犬の中でしか感染しないように思えますが、実際はヒトを含むほとんどの哺乳類で感染し、発症した場合は治療法が存在しないため犬もヒトも関係なくほぼ100%死んでしまう怖い病気です。

感染経路は主に感染した動物に咬まれ、唾液中に排出したウイルスが傷口から体内へ侵入することで起こります。

世界からみる狂犬病の発生状況

こちらの狂犬病発生状況の世界地図(厚生労働省健康局結核感染症課作成,2016)をご覧になってみなさんはどう思われましたか?この地図を見ると日本は世界でも稀に見る狂犬病の洗浄地域(全く発生していない地域)です。しかし、1956年までは日本国内でも狂犬病は発生しており、感染した犬がさらにヒトへ感染させ、その後ヒトで発症し亡くなってしまうという事が数例確認されていました。その後、国や私たちの先輩獣医さんたちが頑張って予防してきてくれたおかげで現在までは犬やヒトの間での発生は防ぐことができています。

しかし平成初期までは接種率はほぼ100%でしたが、現在では日本国内に登録されている犬の約7割しかワクチン接種がされていないのが現状です(厚生労働省「犬の登録頭数と予防注射等の年次別推移」令和3年参照)。

犬にワクチン接種する理由

犬にワクチン接種する理由ですが、愛犬の命を守ることは当然のことながら、その周囲にいるヒトの命を守るためにもワクチン接種することが大切なのです。全世界の「狂犬病」発症で亡くなってしまうヒトの大半は、犬に咬まれて感染しているそうです。そのため、ヒトへの感染率が最も高いとされる犬に優先的に打つことで国内での蔓延を防止しているのです。もし接種率がどんどん下がって国内で再び蔓延するようなことになれば犬以外のペットたちにもワクチン接種することになるかもしれません。野良犬や野良猫、近所のペットが狂犬病に感染している可能性があると思いながら生活するなんて怖いですよね。

海外旅行へ行く際の注意

ちょっと話は脱線しますが、先ほど日本国内での人への発生は無いと言いましたが、海外で野犬に咬まれ感染し、後に日本で発症後死亡したケースはいくつかあります。ここ最近はコロナ禍が落ち着き海外へ行く人がどんどん増えてきています。先ほどの世界地図を見て感じた人もいるかもしれませんが、たくさんの国で狂犬病に遭遇する可能性があります(特にアジア圏は多い)。そんな海外に行く予定のある方は予め厚生労働省検疫所のWebサイト(https://www.forth.go.jp/index.html)を確認することをオススメします。こちらには渡航先でどのような感染症に罹る可能性があるか記載されており、予防方法や対処法も確認できるのでいざとなった時に安心かと思います。

もしも犬に噛まれたら

今後犬に噛まれてしまうようなことがあった場合、日本国内であれば狂犬病の危険性は非常に低いですが、ワクチン接種していない犬や野良犬に噛まれた場合は「狂犬病」というキーワードを頭の片隅に置いておくだけでその後の行動は変わるかもしれません。たとえ狂犬病でなかったとしても犬の口の中は綺麗とは言い難いので傷口をすぐハンドソープや石鹸で綺麗に流し、傷がひどいようならお近くの病院(皮膚科または外科)を受診することをオススメします。

また海外で噛まれてしまった場合、事前にワクチン接種していなければ即現地の病院に行って事情を説明し、適切な処置をしましょう。狂犬病に感染している犬に噛まれていたとしても、暴露後ワクチンというものがあるため発症を抑えることも可能です。この場合、とにかく噛まれてから暴露後ワクチン接種までの速さが重要となってきますので急いで病院に向かいましょう。

まとめ

狂犬病予防接種が飼い主の義務である理由は、愛犬の健康と周囲の安全を守るためでもあったのです。狂犬病は発症してしまうとほぼ100%死にいたる病気です。自身のワンちゃんの健康と周囲の安全を考え、必ず予防接種を受けさせましょう。

予防接種を受けるのが心配という方もいらっしゃると思います。そんな時はかかりつけの動物病院の先生と相談して一緒に解決方法を見つけていきましょう。

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獣医師Y

獣医師。大学時代は薬理学研究室でがんの研究をし、卒業後はなぜか某大手通信会社に勤め、今に至る。犬好きだが今は飼えない環境にあり、犬不足により他人の犬をわしゃわしゃしたくてしょうがない。

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