【獣医師コラム】犬の誤食を防止するためのトレーニング方法を解説

しつけ

お正月が過ぎてあっという間に1月も残り少しですね。年末からお正月にかけて愛犬と過ごすと、おせちやお正月飾りの用意などで「犬が口にしてはいけない食べ物や装飾品を誤食しないように」と気を張ってしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。この記事では、犬の誤食を予防するためのトレーニング方法についてお話しします。

クリスマスから年末年始、バレンタインデーは犬の誤食が多くなるかも?

クリスマスから年末年始、バレンタインデーは犬の誤食が多くなる

イギリスでは犬や猫の誤食の起こりやすさと季節の関係に関する調査が行われていて、他の時期に比べてクリスマスの時期に誤食をして動物病院を受診する犬猫が多いという傾向がみられます。

日本ではこのような調査が行われることはないかもしれませんが、動物病院に勤務する獣医師の方々の話を聞いていると、やはりクリスマスやお正月、バレンタインデーの時期には誤食が起こりやすい傾向にあるように思います。

以前ご紹介した「子犬の誤食についての記事でも触れたように、犬の誤食を予防するには子犬がまだ幼い頃から、落ちているものや置いてあるものをなんでも口にしないように習慣づけることが重要です。

今回は、犬の誤食を防ぐためにできることとして、誤食を予防する効果もあって飼い主さんも愛犬も楽しめる簡単なトレーニングを後ほどご紹介したいと思います。

関連記事:【獣医師コラム】ドッグパッド愛犬相談室 第1回 犬の異物誤飲「犬が間違えて食べちゃったアレ」

そもそも、なぜ子犬は色々なものを口にしてしまうのか?

子犬は成犬よりも好奇心が旺盛で、どんなものでもまず口に入れて楽しむ性質があることから犬の誤食が発生するケースがほとんどです。

しかし、それ以外にも生活上の問題によって犬の誤食が引き起こされることがあります。

その理由は、たとえば、

・犬の行動欲求が満たされていなかったり、社会的な関わりが生活で得られていない

・食べてはいけないものを口にしていると飼い主が反応してくれると犬が学習している

・その犬にとって必要な栄養が食事で得られていない

などが挙げられます。

これらはどれも犬にとって大きな問題で、誤食の頻度が高かったり頻繁にものを盗んでしまう、ということがあるようであれば、犬の好奇心のせいだと断定せずに、まずはこれらの要因が愛犬に当てはまるかどうかを考えてみてください。

犬の誤食は飼い主さんのちょっとした意識としつけで予防ができる

犬の誤食は飼い主さんのちょっとした意識としつけで予防ができる

愛犬に誤食を引き起こす根本的な問題が無いことを確認したら、次は誤食を予防するためのトレーニングについて勉強していきましょう。

その前に、犬の誤食を予防する基本的な考え方として、犬が口にしただけで害を及ぼすような人用の食べ物やお菓子、飼い主が気が付かないうちに飲み込んでしまうような小さなものはそもそも犬が届かない場所に保管しましょう。

実際に動物病院で誤食した犬の診療をしていると、「こんなに大きなものを飲んだの⁉」と驚くようなサイズのものを飲み込んでいた犬も多くみかけます。ピンポン球や人でも丸呑みできないサイズの骨を飲み込んだ小型犬など、犬は私たちの想像よりもずっと大きなものでも丸呑みして飲み込んでしまうため、犬にとって危険なものを保管する際には細心の注意を払いましょう。

「ちょうだい」のトレーニングで愛犬の誤食を予防する

では、ここからは本題の犬の誤食を予防するトレーニングについてお話しします。

このトレーニングでは、犬が好奇心で口にしてしまったものを飲み込まずに返してくれるように練習をすることが目的です。

犬におもちゃをくわえさせて「ちょうだい」と言葉で伝え、口にくわえたおもちゃを手放して返してもらうかわりに、ご褒美のおやつを与えて褒めることで、最終的には「ちょうだい」と伝えるだけで口にくわえたものを手放すようにしつけることがゴールになります。では、5つの手順を画像とともにみていきましょう。

「ちょうだい」の教え方 手順①

「ちょうだい」の教え方 手順①犬が飲み込むことができないサイズのおもちゃを手に持って犬に渡す。

犬が飲み込むことができないサイズのおもちゃを手に持って犬に渡す。

このときおもちゃを持った手は離さずに、完全には与えないようにしましょう。

「ちょうだい」の教え方 手順②

「ちょうだい」の教え方 手順②犬がおもちゃをくわえたら、反対の手でおやつを見せて「ちょうだい」と声をかける。

犬がおもちゃをくわえたら、反対の手でおやつを見せて「ちょうだい」と声をかける。

「ちょうだい」の教え方 手順③

「ちょうだい」の教え方 手順③犬がおやつに反応してくわえていたおもちゃから口を離したら「いい子」だと褒めておやつを与える。

犬がおやつに反応して、口にくわえていたおもちゃを離したら「いい子」だと褒めておやつを与える。

「ちょうだい」の教え方 手順④

「ちょうだい」の教え方 手順④①~③がスムーズにできるようになったら、おやつを持っている方の手を握っておやつが見えないようにしておき、おやつを見せなくても「ちょうだい」という合図で口からおもちゃを離してくれるように練習をしましょう。

①~③がスムーズにできるようになったら、おやつを持っている方の手を握っておやつが見えないようにしておき、おやつを見せなくても「ちょうだい」という合図で口からおもちゃを離してくれるように練習をしましょう。

「ちょうだい」の教え方 手順⑤

「ちょうだい」の教え方 手順⑤①~④に慣れると次第に離れている状態からでも「ちょうだい」の合図で口にくわえていたものを離したり、渡してくれるようになってきます。

①~④に慣れると次第に離れている状態からでも「ちょうだい」の合図で口にくわえていたものを離したり、渡してくれるようになってきます。

トレーニングの内容はたったこれだけです!

愛犬と一緒に練習をすることで飼い主さんも楽しめますし、愛犬もおやつをもらうことができてハッピーで、さらに危険な誤食を予防できるなんて一石二鳥なトレーニングですよね!

「ちょうだい」は誤食のほかに、犬の攻撃行動の予防にもなる

犬の誤食を予防するために練習する「ちょうだい」のトレーニングは、所有性攻撃行動といって、人が犬の持ち物を触ったり取ろうとしたときに怒って攻撃をするような問題行動に対しても予防効果があるとされています。

おやつを使って犬のトレーニングを行う際の注意点

「トレーニングでおやつを何度も与えてしまうと愛犬が太ってしまうかも!」と心配な飼い主さんは、おやつの代わりにいつも食べているご飯のフードを与えて、トレーニングで与えた分のフードは次のご飯から差し引くようにしてみてください。

おやつを使ったトレーニングによって、飼い主にものを渡しておやつを得ようとするようになってしまう食いしん坊なコもいるといわれていますが、その場合には飼い主さんが反応をせずに無視をすることで、飼い主さんから「ちょうだい」の合図なしにものを持ってきても何も得られないことを学ばせてあげましょう。

もし、愛犬が誤食をしてしまった際の対処法

もし、愛犬が誤食をしてしまった際の対処法

ここまで誤食を予防するためのトレーニングを紹介しましたが、この方法はあくまで予防の効果があるだけで、おうちで愛犬による誤食が起きてしまった場合には速やかにかかりつけの動物病院に相談をしてください。

動物病院へ相談する際には、食べてしまったものは何か、また誤食後の愛犬の様子や変化をわかる範囲で具体的に伝えるようにしてください。

もし人用の食品を食べてしまった場合では、その成分に犬に害を及ぼすようなものがないかを確認しましょう。

犬に危険な成分は以前紹介した記事にまとめられていますので以下をご覧ください。

関連記事:【獣医師執筆】愛犬がチョコレート・タマネギ・ブドウを食べた!危険な誤食その時どうする?

関連記事:犬が観葉植物を食べた時の対処法と誤食すると危険な植物一覧

また、チョコレートや保冷剤など、製品ごとに成分が異なるものについてはその成分がわかるような包装を確認したり直接メーカーに問い合わせるなど、犬に危険な成分が含まれているかを確認してください。

これからバレンタインの時期を迎えますが、チョコレートは特にカフェインの含有量に差がある食品です。このため、犬が子ども向けのミルクチョコレートを大量に食べても有害成分が少なかったり、逆にカフェイン濃度の高い高級チョコレートを誤食した場合ではほんの少し食べただけでも中毒になる可能性もあります。

愛犬と生活をするなかで危険なポイントを把握して、予防と対策をしっかりと行いながら楽しいドッグライフを過ごしましょう!

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獣医師T

獣医師。大学在学中はウイルス学の研究をしながら犬の行動学(しつけ)に関する学生団体に参加し、卒業後は動物病院での勤務を経てペット関係の企業で勤務。ワンちゃんについて勉強したことやこれから勉強することを社会に役立てられるように邁進中。

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