近年その頻度と規模で私たちの生活を脅かしている自然災害。
もしものときは愛犬と避難をしなければなりませんが、「同行避難」と「同伴避難」の違いを知っていますか?
自身と愛犬の命を守るために正しい知識を身につけることが、大切な命を守ることにつながります。
災害時の『同行避難』と『同伴避難』の違いは?
災害によって避難が必要となった時に、一緒に避難することと避難所で生活することを分けて説明しているのがこの「同行避難」と「同伴避難」です。
しかし、正しくその意味を理解しているでしょうか。
環境省が発表している「人とペットの災害対策ガイドライン」では、次のように説明しています。
同行避難とは
「災害の発生時に、災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。」とあります。
ようするに、「同行避難」とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではありません。
また、内閣府が発表している「避難所運営ガイドライン」にも、同行避難とは、ペットとともに安全な場所まで避難する避難行動を示しています。
同伴避難とは
同じく、内閣府が発表している「避難所運営ガイドライン」では、「同伴避難」についても説明されています。
それによると、「同伴避難」とは、被災者が避難所でペットを飼養管理すること、としています。ようするに、同行避難とは避難する行動を定義する言葉であり、同伴避難とは、避難所において一緒に避難してきたペットをお世話することを定義する言葉ということです。
ただし、同伴避難について、「同じ空間で過ごすことが出来る」と勘違いしている飼い主さんも多いのではないでしょうか?
ガイドライン示されているのはあくまでも避難所で飼養管理することであって、同じ空間で、とは示されていません。そのため、同伴避難とは、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要です。
最寄りの避難所が同行避難、同伴避難可能か確認を
最寄りの避難所を探す際の目安になるのが「避難限界距離」です。
この避難限界距離とは、火災や地震などの災害時において、徒歩で避難できる距離の限界のことを指します。 自治体によっても異なりますが、一般的には、高齢者や子どもの避難能力が考慮されるため、1.5km~2.0km程度が避難限界距離であると考えられています。
ペットと一緒に避難するということは、やはり避難能力に不安が残ります。
そのため、まずは自宅から上記の範囲にある避難所を最低3つは探しましょう。
というのも、最適な距離にある避難所が、同伴可能な避難所かわからないことと、調べた時には同伴可能であっても、いざ避難してみると避難者が多くて受け入れてもらえなくなる可能性もあるからです。
ホームページなどでも探すことは可能ですが、やはり事前に電話で連絡し、避難が必要になった場合、犬なのか猫なのか、避難する頭数、大きさなども伝えて本当に受け入れてもらえるかを確認したほうがいいでしょう。
愛犬との避難で気を付けること
避難で注意することはいろいろありますが、その中でも特に重要なこと3つを確認していきます。
避難するときにはクレートに入れて避難しましょう
あくまでも自宅からの避難を想定した場合ですが、避難時はクレートに入れて避難するのがベストです。
クレートとは、犬を安全に移動させるために必要な入れ物で、プラスチック製のものをハードタイプ、布製のものをソフトタイプと言ったりします。
可能ならハードタイプのクレートの方が、避難所でそのまま寝床として使えるので便利です。
慣れない場所で犬が安心して過ごせるように、日ごろからクレートを寝床やごはんを食べる場所として活用し、緊急時に備えましょう。
中型犬や大型犬の場合は、犬用のラバーシューズに慣らしておきましょう
中型犬や大型犬は、クレートに入れて避難するよりも、歩いて避難させた方が早い場合があります。
しかし、事前に避難するならまだしも、実際に災害が起きている最中や起きた後で避難を開始した場合、足元が不安定だったりガラスなどが散乱している可能性もあったりと、歩かせることに不安を感じることもあるでしょう。
それを想定して、ラバーシューズを用意しましょう。
ただし、犬は足裏から様々な情報を得るために、それを阻害する履物は慣れていないと嫌がってかじり取ってしまう、動けなくなってしまう、といった可能性もあるため、やはり、日ごろから慣らしておきましょう。
持ち物は最小限にまとめましょう
ペットと避難することは、想像以上に大変です。
考えてもみてください。自分の避難グッズを背負い、ペットを持ち、ペットの避難グッズを持つ・・・。
もちろん車で避難ができる状態であれば車にすべて積んで一回に避難できます。
しかし、道路が冠水して車が使えなかったら?地震によって道路が陥没したり、液状化で走行不能になっていたらどうなるでしょうか。
そのため、まずは徒歩で避難ができる分量をまとめておきます。これは、女性やこども、男性によって変わってきますので、自分の世帯単位で考えましょう。
同時に、事前に避難する場合などで車が使える時には、車に積んで逃げるための分量を用意しておき、事前に車に積んでおくのもいい手段です。
ただし、フードなどは車内の気温の変化で劣化することが考えられますから、あくまでも予備のクレートや毛布、トイレシーツや予備の食器などにとどめておきましょう。
もしもの避難のために日頃から身につけておきたいこと
日頃から習慣化することで、災害時に慌てずに済むことを確認しておきましょう。
ワクチンの証明書を身につけておく
ワクチンには、法律で接種が義務付けられている狂犬病予防ワクチンと、任意で接種する混合ワクチンがあります。
とくに、狂犬病予防ワクチンは、毎年1回の接種が決められていて、接種すると注射済表というものが送られてきます。この注射済表と鑑札は、本来は常に身につけておくように義務付けられていますが、室内でまで済表と鑑札をつけている、というご家庭は少ないのではないでしょうか。
しかし、外に出る時には、必ず身につけるようにしましょう。首輪やリードに常につけておけば、つけ忘れは発生しません。
不特定多数のペットが集まることが予想される避難所では、狂犬病のワクチン接種が確認できない場合、受け入れてもらえない可能性もあることを覚えておきましょう。
トイレシーツでの排泄を練習しておく
室内では排泄せずに、外に散歩にいったときにのみ排泄するような犬の場合、災害時に困ることがあります。
それは、水害や津波の被害、または地震による液状化現象によって、外での散歩が難しいときに、排泄を我慢してしまう、もしくは我慢できずにしてはいけない場所でしてしまう、といったことが考えられるからです。
今からでも、トイレシーツで排泄できるよう、少しずつ練習を始めてみましょう。
とはいえ、いきなり室内でのみは難しいですから、まずは外に一番近い玄関にトイレシーツを広げ、様子を見てみましょう。上手にできたら褒め、一日様子を見ても排泄をしないようなら、外にトイレシーツを持って出かけ、しそうになったらシーツを広げてその感触をわからせます。これを繰り返すことで、徐々に排泄はトイレシーツでするもの、と認識できるようになります。
人見知り・犬見知りを直しておく
避難所での生活は、人にとってもストレスですが、犬たちにとっても同じようにストレスになります。とくに、人見知りの性質を持っている犬たちにとっては非常に苦痛となります。もちろん飼い主さんと同じ空間で過ごしていようと、他の人がたくさんいる状態に変わりはなく、苦痛であることに変わりはありません。
そのため、飼い主さんがいてもいなくても、他の人がいる空間が安心できるようにしておく必要があります。
同じように、他の犬や猫と一緒にいることに対しても、慣らしておく必要があります。これはもちろん、避難所によっては他の子たちと一緒に管理しなくてはいけないことを想定したものです。
慣らす場合には、いきなり人のたくさんいる公園や犬たちが集まるドッグランに行くのではなく、友人やかかりつけの動物病院、よく行くペットショップなどに協力してもらいながら、ゆっくり慣らしていきましょう。
最後に
災害を想定して準備をしていても、それを上回って被害をもたらすのが災害です。
今回の新型コロナウイルスもそうですが、最近は地震も頻発していてちょっと不安ですよね。季節的にも、長雨、豪雨、台風など、災害が懸念される季節にもなってきました。いざことが起きたときに、慌ててしまわないよう、日常生活の延長線に災害時の生活があることを意識して、備えていきましょう。
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