ダックスフンド、中でもミニチュアダックスフンドは室内犬の中でも非常に人気の高い犬種です。大きさや被毛の毛質が異なることで、呼び名が変わるダックスフンドは、3つのサイズと3種類の毛質の呼び名があります。特徴的な胴長の体型のため、病気の傾向はヘルニアにかかりやすいことが知られています。
今回はダックスフンド(カニンヘン・ミニチュア・スタンダード)のかかりやすい病気についてご紹介していきます。
ダックスフンドの特徴
ダックスフンド(Dachshund)はドイツ原産の犬種です。古くから「穴を掘って土にもぐる犬」として改良されてきました。国際名ではダックスフンドは「アナグマ犬」という意味を持ちます。
ダックスフンドの最大の特徴は、サイズと被毛の毛質によって呼び名が異なることです。 「スタンダードのダックスフンド」(胸囲が35cm以上)はアナグマやキツネを追いかけて穴にもぐるための犬、ウサギやテンといった小動物を捕獲するために改良されたのが「ミニュチュアダックスフンド」(胸囲が31〜35cm)、さらに改良された最も小さいサイズの「カニンヘンダックスフンド」(胸囲が30cm以下)の3種類です。
この3種類は胸囲の大きさで分けられています。 さらに毛質は日本では定番で人気のある「ロングコート」、毛の短い「スムースコート」、テリアの要素が強い「ワイヤーコート」と3種類それぞれ毛質の特徴が違います。掛け合わせている犬種が違うため、性格の傾向が異なるところも特徴です。
ダックスフンドに多い病気①椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは「ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア、スタンダード)」3種類ともにかかりやすい脊椎、脊髄の病気です。
症状
犬が急に動かなくなる、お散歩に行きたがらなくなる、大声で鳴いて痛がる、特定の動作をしない、首や背中、腰に触れたり触れようとすると嫌がる、びっこを引く(跛行)、足を引きずる、頭が動かないまたは動かそうとしない、からだに麻痺が出る、フラフラしている、突然寝たきりになるといった症状があります。 発症する脊椎の場所によって症状が異なる特徴があり、首、胸、背中、腰と椎間板のある部位はどこでも起こる可能性があります。
原因
からだを中央で支える背骨の脊椎と脊椎の間にある椎間板や椎間板周辺の部位が、脊髄や神経を圧迫することで神経に触れたり、異常をもたらす病気です。直接の原因は不明なことが多く、突然症状が出る場合と、徐々に症状が出る場合があります。「ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア、スタンダード)」は椎間板ヘルニアになりやすいので、日常の動作で高い所から飛び降りさせたり、急旋回をさせない、生活している室内の床を滑りにくくするといったことが予防になります。
治療方法
精密な画像診断を行って、どの部位の神経が圧迫、刺激されているのかを確認することが、この病気を早期に確定できるポイントです。日常問題なく生活できる軽度のものから、手術が必要なケースもあります。軽度の場合は消炎剤、ステロイド剤の投与を行い、できるだけ悪化させないように安静にさせます。麻痺や寝たきりといった重度の場合は時間が経つと治療が難しくなるといわれているので、早期の手術を検討しなければならないケースもあります。 軽度の場合や手術後は、無理な体勢や負担になる動作をしないように注意を払い、リハビリを行うことで、犬が自由に動けるようになることも多いです。発症したらスピーディーに専門医の診察を受けることで軽度の場合は早期回復も期待できます。
ダックスフンドに多い病気②進行性網膜萎縮
進行性網膜萎縮は、視力が落ちて最終的には失明する網膜の病気で、ミニチュアダックスフンドに多い病気とされています。英語ではProgressiveRetinalAtrophyといい、略して「PRA」とも呼ばれています。
症状
物やガラスにぶつかる、歩いていて段差でつまずく、隙間に落ちる、挟まる、階段から落ちる、といった症状が出ることで、飼い主さんが異変に気がつきます。この病気は進行性で徐々に見えなくなりやがて失明に至る可能性が高いです。
原因
網膜の細胞が変性し、網膜の光を知覚する部分の機能に異常が起こり、網膜が萎縮することで徐々に見えにくくなっていきます。
治療方法
進行していく病気ですが、確率された治療方法がないため、できることとしては、飼い主さんが早期に気が付いてあげることです。犬自身は徐々に見えにくくなっているため、わずかでも見えにくい不安や動作でSOSが出ているはずです。その異変に飼い主さんが気がつき、いつも過ごす部屋のレイアウトをぶつかりにくくしたり、階段や高い所から落下して二次被害を防ぐ対策をしたり、お散歩中でもリードを上手に使い、声で案内を促し、物にぶつからないようにケアをしてあげることが必要です。
もし失明をしたとしても、怪我や事故が起こらないように室内の配置を慣れた部屋のレイアウトにしてあげると、いつも過ごしている室内であれば犬がある程度空間を把握しているので、大きな事故を防ぐ方法の1つとなります。 進行性網膜萎縮は遺伝性の病気のため、進行性網膜萎縮のある血統の繁殖を行わないことが最大の予防方法となります。
ダックスフンドに多い病気③クッシング症候群
クッシング症候群は副腎皮質機能更新症ともいわれています。内分泌やホルモン、からだの代謝に関わる病気です。多くの場合に皮膚に関わる症状がみられるのが特徴です。
症状
5歳以上の犬で発症することが多い病気で、脱毛や皮膚の異常、多飲多尿、呼吸が早くなる、お腹が膨れてみえる、筋力低下、元気がなくなるといった症状があります。背中の左右対称の脱毛や全身の脱毛はクッシング症候群を疑うべき症状といえます。
原因
脳の下垂体という部分から分泌される副腎皮質ホルモン(ACTH)の過剰な分泌による場合がほとんどです。下垂体の腫瘍によっても発症します。アトピー性皮膚炎を抑えるためにステロイド剤などを使用していた場合に、長期的な投与の副作用としてクッシング症候群を発症することがあります。その他に慢性的な皮膚疾患や副腎に腫瘍を抱える犬に診断されるケースがあります。
治療方法
この病気の原因が下垂体から分泌されるホルモンが原因なのか、下垂体の腫瘍、副腎の異常が原因なのかによっても治療の選択が異なります。下垂体が原因の場合は投薬による内科的治療も可能ですが、腫瘍が原因の場合は手術や抗がん剤治療を行うケースがあります。
ダックスフンドに多い病気④外耳炎
耳に関わる疾患は、垂れ耳の犬種に多いです。「ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア、スタンダード)」も垂れ耳の犬種のためかかりやすい病気といえます。
症状
耳が赤く腫れて痒がります。首や頭を異常に振るったり、手足を使って耳を掻く動作をしたり、耳を触ると「グチュグチュ」と音がする場合もあります。
原因
細菌、真菌、耳ダニが原因で外耳炎を起こします。「ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア、スタンダード)」でいうと、耳が垂れている犬種なので、耳の中の風通しが悪く、細菌が耳の中で繁殖しやすい環境のため外耳炎が起こりやすくなります。
治療方法
耳の洗浄や点耳薬、投薬で治療を行います。痒みが強くどうしても掻いてしまう場合、頭を擦り付けて刺激を与えてしまう場合は、カラーを装着して耳に刺激を与えないようにします。 外耳炎が悪化すると、中耳炎や内耳炎を引き起こす原因にもなるため、耳垢がたまらないように日常のケアが必要です。
ダックスフンドに多い病気⑤糖尿病
人間同様に犬にも糖尿病があります。糖尿病はインスリンが不足することで高血糖の状態となり、からだの様ざまな代謝の異常を起こします。
症状
多飲多尿、食欲旺盛、体重減少、嘔吐、下痢、元気がない、昏睡状態といった症状があります。進行すると白内障や網膜症、その他合併症を引き起こします。
原因
糖尿病は膵臓にある細胞がインスリンを作ることができなくなることで発症する病気です。糖尿病には1型と 2型があり、原因には先天性、加齢、糖尿病になりやすい犬種の傾向があり、さらに肥満体型、食事の食べさせ方、生活環境、発情周期などによって、インスリンの不足が起きることによって発症するといわれています。 成犬で肥満の犬がかかりやすいといわれており、統計的にはメスの発症率が高いです。クッシング症候群や膵炎といった病気を持つ犬では糖尿病を併発する可能性があるので注意が必要です。
治療方法
多くのケースが治療を開始してから生涯にわたってインスリンの投薬治療を行います。食事療法、体重管理、定期的な血液検査で状態を把握します。インスリンの量によっては低血糖による発作を起こす場合もあるので、定期的に動物病院に通院し、獣医師からインスリンの量の指示を受け、犬の状態にあった適切な治療を行う必要があります。
まとめ
犬種によってかかりやすい病気がありますが、「ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア、スタンダード)」にもかかりやすい病気の傾向があります。遺伝性のある疾患は、治療が難しい場合もあります。かかりやすい疾患の原因をできるだけなくしてあげることも愛犬のためになります。 例えば、ダックスフンドを子犬の頃からピョンピョンジャンプさせたり、高いところから飛び降りさせたりすることで、ヘルニアになる可能性がより高まります。
可愛いから、喜ぶからとおやつをたくさん与えてお散歩もあまり行かずに肥満体型にすること、1日に1食といった一度に大量の食事をさせるといった偏った飼育方法では糖尿病になる可能性を高める場合があります。 犬種のかかりやすい病気を把握しておくことが、病気やからだの異常の早期発見に繋がります。今ダックスフンドと暮らしている飼い主さんも、かかりやすい病気を一度確認してみてください。
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