秋は愛犬とのお散歩もが気持ちのよい季節ですね。
でも、この時期は草むらで遊んだワンちゃんの毛にびっちりと絡みつくオナモミやセンダングサなどの植物に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、犬の体に付く「ひっつき虫(くっつき虫)」と呼ばれている植物の正体についてお話します。
草むらに潜み体についたら離れない「ひっつき虫」の正体は?
「ひっつき虫」とは、人や動物にくっつき移動することで、生息範囲を広げる植物の種のことをいいます。「ひっつきもっつき(広島)」、「あばづき(秋田)」などと呼んでいる地方もあります。方言になるくらい日本全国各地に、たくさんの種類が存在しているということですね。
「ひっつき虫」の種類と名前、犬の毛にどのようにひっつくの?
ひと言で「ひっつき虫」といってもたくさんの種類があり、大きさやひっつき方もさまざまです。犬の毛に絡まったひっつき虫は、一度絡むと取るのが大変!!ここでは、種の形ごとにみていきましょう。
鉤(かぎ)を持つもの
オナモミ
大きさ1cm弱の楕円形でたくさんのトゲがあり、その先が鉤状に曲がっていて衣服や毛にくっつきます。他の「ひっつき虫」に比べて大きいので、ブローチにしたり投げ合ったりと、子供のおもちゃにされたりします。皆さんもオナモミで遊んだ記憶があるのではないでしょうか?ちなみにオナモミは「雄」ナモミであり、対になる「雌」ナモミも存在します。くっつき方が異なるので、後ほどご紹介します。
ヤブジラミ
長さ2.5~3.5mmの細長い楕円形。先端が鉤状に曲がったトゲが密生しています。名前の由来として、実が衣服に付きやすいのを虱(シラミ)に例えたという説があります。
キンミズヒキ
漢字では「金水引」といい、黄色い花の形が熨斗袋などにかけられる水引に似ているところから命名されました。優雅な名前ですが、3mmぐらいの三角形のトゲがあり、先端の鉤でひっかかるようにしてくっつきます。
細かい鉤が密生しているもの
ヌスビトハギ
大きさ6〜8mmの眼鏡のような形の実。表面に細かな鉤が密生していて、衣服や毛にくっつきます。名前のヌスビトは「盗人」で、種が気付かれずに人や動物にくっつくから、泥棒が音を立てないように足の裏の外側だけを使って歩いた足跡に形が似ているから、などの説があります。
ヤエムグラ
華奢な草で、茎にある下向きのトゲを利用して他の植物に寄りかかって生えています。なんと、草そのものがトゲを利用して生息しているのです。この性質を利用して、小さな可愛い花を茎ごと衣服に付けて遊ぶ子供もいるそうです。たしかにコサージュのようにも見えますね。種は直径2mmほど。鉤状の毛が密生し、衣服や毛などに絡みます。
逆さトゲのもの
センダングサ
栴檀の木の葉がこの草の葉の形と似ていることから命名されました。黄色い花を咲かせ、先端に数本の逆さトゲのある、堅い棒状の種を作ります。茎の先に放射状にこの種が付いている様子は、まるで鋼鉄製のタンポポのようです。これらがちょっとした刺激で根元からたやすく外れ、衣服や毛にくっつくのです。
チカラシバ
とてもしっかりとした大きな株になる、イネ科の植物。和名の「力芝」は、引き抜くのに力が要ることに由来しています。すっとした茎の先端に、ブラシのような特徴的な穂を付けた草、といえばお分かりになる方が多いでしょうか。穂を掌に握りこんで種を取ると、毛虫のような栗のイガのような形になりますね。この種の一つ一つの先端に長いトゲが付いており、衣服や毛の奥にもぐりこんで絡みます。
ササクサ
笹に似た背の低い草です。夏から秋にかけて茎を上に伸ばし、小さな穂を付けます。穂の先端には逆さトゲがあり、これがくっつきます。しかもその後服や毛についたものを取り除こうとすると、引っかかり部分と実の部分に分かれてしまいます。つまり、取ったと思っても鉤の部分は残っているわけです。最もやっかいなひっつき虫といえるでしょう。
鉤になるもの
イノコヅチ
漢字では「猪子槌」と書きます。茎の節がうり坊の膝のように膨らんでいることから、これを槌に見立てているそうです。うり坊(子猪の膝)と槌、どちらも古来ならではの名付け方と言えるでしょう。小さな籾殻状の実が鉤のようにくっつきます。
粘液を出すもの
メナモミ
先ほど紹介したオナモミと同じキク科の植物ですが、属性はオナモミ属とメナモミ属で異なっています。「ナモミ」の意味は、一説によると「菜揉み」もしくは「生揉み」です。薬効のある植物でもあり、毒虫に刺されたときなどにこの葉を揉んで貼ると炎症を鎮めてくれます。メナモミもオナモミと同様に「ひっつき虫」ですが、実の形もくっつき方も大きく違い、繊毛から分泌した粘液でくっつきます。
ノブキ
和名は「野蕗」で、葉の形がフキに似ていることから名付けられました。花が棍棒状になり、その先端から粘液を出してくっつきます。
チヂミグサ
笹に似た葉っぱが波打つように縮んでいることから、この名前が付けられました。薄紅色の小さな花を咲かせます。米粒大の実の先端には長い毛があり、その先から粘液を出してくっつきます。
愛犬の体が「ひっつき虫」だらけになってしまったら
愛犬のお散歩から帰って汚れたワンちゃんの足を洗ったり、濡れタオルで拭いたりしていると、体にひっつき虫がついていたり、すでに毛に深く絡まっていることもあるでしょう。
この季節に草むらなどに犬が入ってしまったときは、いつものケアに加えて「ひっつき虫対策」も必要になります。
まずは全身をくまなくなでて、オナモミなどの大きなひっつき虫がついていないかをチェックします。毛の色に馴染んでいることも多くあるので、よく触って確認してあげてください。大型犬は肉球の間に挟まることもあるので、その後、目の粗いコームを毛にやさしくくぐらせてあげてください。ここで中程度のひっつき虫が除去可能です。
小さいひっつき虫は玉の付いたスリッカーブラシを使うとよいです。スリッカーブラシほど密生していなくても、先端に玉の付いたブラシはひっつき虫対策の大きな戦力になります。
先ほどご紹介した中で一番の厄介ものは、何といっても粘液を出すタイプです。このタイプは服に付いた場合は乾かすと取れやすいのですが、長毛犬の毛に付いたまま乾くと、毛も一緒に固まってしまいます。完全に乾かないうちに濡れたタオルなどでベタベタした粘液部を取り除いたのち、ブラッシングすることをおすすめします。
ワンちゃんがブラッシング嫌いといった理由から、ひっつき虫を付けたくない!という飼い主さんは、洋服を着せるのも一つの方法です。お洋服にはくっついてしまいますが、ブラッシングの手間は圧倒的に省けます。
足先まで覆うタイプのドッグウェアを着せるとより効果的なひっつき虫対策になります。
秋から冬は藪や茂みの深い場所には行かないのがベスト
秋から冬にかけて、オナモミやセンダングサなどのトゲを持つ植物は草むらに多くあります。これらは、犬の体や飼い主さんの体にくっつくだけでなく、夢中になって藪や林の中を走ったり歩いたりしている犬の顔や目の周り、眼球をを傷つける原因にもなります。また、ワンちゃんによっては、体についたひっつき虫が気になって食べてしまうコもいます。
できるだけ、ひっつき虫と呼ばれる植物の種を体につけないためには、秋から冬に河原や藪、茂みの中に入らないことがベストです。
最後に
ひっつき虫が犬の体に付着して毛に絡まってしまうと、種をひとつひとつ取り除く作業も大変です。また、顔にたくさん種がついている場合は、目に種や草、トゲなどが触れていた可能性もあります。
秋から冬にかけては、愛犬と草むらを歩いたり、通り抜けようとしたら愛犬の体にびっちりと種がついていた!というのも飼い主あるあるのひとつですよね(笑)
一口に「ひっつき虫」といってもさまざまな種類やくっつき方があります。ひっつき虫が衣服や犬の毛と絡みつくのも季節の風物詩、お散歩の後のケアでワンちゃんとのふれあいを大切にしましょう!
コメント