「ファシリティドッグ」という病気と生きる子どもの心を癒す特別な訓練を受けた犬が、日本にいることをご存知ですか?今回は、病気と闘う患者さんの心を癒し、笑顔を与える、ファシリティドッグについてご紹介します。
ファシリティドッグとは?
「ファシリティドッグ」とは、日本ではまだ活動頭数が少ないものの、動物介在療法と患者さんの生活の質(QOL)を改善して治療に役立つ目的で導入された、特別な訓練を受けた犬のことをいいます。
ファシリティドッグの特徴
ファシリティドッグの特徴は、日本で初めて小児病院(こども病院)に常勤する犬(チームスタッフ)であるということです。子ども達がファシリティドッグとふれあうことで、病気や治療、入院に対して生活の質(QOL)の改善や前向きな気持ちを持つことができる「動物介在療法」の1つとして活躍しています。
認定特定非営利活動法人「シャイン・オン・キッズ」のプログラムの1つ
日本におけるファシリティドッグは、小児がんや重い病気と闘う子どもたちとその家族の支援を行う、認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ(以下シャイン・オン・キッズ)が提供している犬で、シャイン・オン・キッズの活動におけるプログラムの1つになっています。
「シャイン・オン・キッズでは、常勤するファシリティドッグによって、小児がんなどの重い病気の治療を受ける子供達の抱えるストレスを癒し、勇気を与えることを目的として、日本初の小児病院における常勤の動物介在療法を行うことで、治療の成果を上げ、子ども達の治療や療法への前向きな姿勢を促すことを目指しています。」
(引用:シャイン・オン・キッズHP)
常勤する犬であること
ファシリティドッグは、老人ホームなどの介護施設に定期的に行くなど、セラピー活動を行う犬ではなく、小児病院に常勤する犬であるところが特徴です。子ども達は、わずかな時間に触れ合うのではなく、常勤するファシリティドッグと多くの時間を共に過ごすことができます。
医療行為の補助が目的である
ファシリティドッグは、常勤する病院の職員であり、患者さんとただ触れ合うことが目的ではありません。患者さんのさまざまな状態の際、例えば、元気がないとき、勇気が出ないとき、治療を行うとき、不安があるとき、薬が飲めないとき、生涯を終えるときなど、そばにいることで医療行為を受ける際の患者さんとご家族の精神的な支えとなり、ファシリティドッグが、医療行為の補助をすることが目的であるところが特徴です。
ハンドラーが医療従事者である
ファシリティドッグが勤務する現場は、命と向き合う病気を抱えた子ども達のいる病院です。犬の知識だけでも医療の知識だけでもなく、両方を兼ね備えた、臨場経験のある看護師や臨場心理士といった医療従事者をハンドラーとすることで、医療だけでなく、動物を扱うという両方の面から利用する患者さんやその家族への理解と安心につながります。
ファシリティドッグのお仕事
病院に犬が勤務して、知らない人や入院している子ども達に触ってもらい、犬がこの触れ合いを楽しむことがファシリティドッグのお仕事です。ファシリティドッグも楽しみ、子ども達も喜び癒される関係がここにあります。
ファシリティドッグは、入院患者のお部屋で一緒に遊んで触れ合うことや、患者さんと添い寝をしたり、辛い治療の際には近くで見守っていたり、手術の前には手術室の前まで一緒に行って患者さんに勇気を与えてくれる存在として、子ども達の心の支えとなっています。
日本におけるファシリティドッグの歴史は浅い
日本におけるファシリティドッグの誕生は2010年と歴史はまだ浅いです。
海外でのファシリティドッグの活動について
海外におけるファシリティドッグの認知度は高く、病院だけでなく教育機関などの特定の施設で常勤して活動行うことができ、ファシリティドッグの育成施設の環境やボランティア、資金の確保など運営体制も整っているようです。
日本でのファシリティドッグの活動について
日本でのファシリティドッグの活動は、2010年の1月に、静岡県立こども病院で始まり2012年7月には神奈川県立こども医療センターにて緩和ケアチームの一員として活動を行なっています。
(引用:シャイン・オン・キッズHPより)
現在日本で活躍しているファシリティドッグは2頭となっています。(2018年11月現在)
ファシリティドッグのトレーニングについて
ファシリティドッグプログラムを行なっているシャイン・オン・キッズでは、現在の状況としては、アメリカ(ハワイ)で子犬の頃から特別な訓練を受けたファシリティドッグと専門的なトレーニング技術のある看護師がチームとなって、病院へ派遣するという形をとっています。
この理由としては、病院の中で多くの人々に触れ合う機会のあるファシリティドッグは、ストレスに適応できる犬に育成するために、血統や適性などに最大の気を配り、専門的なトレーニングを行う必要があります。しかし、日本国内には、人の助けとなる身体障害者補助犬(盲導犬や介助犬、聴導犬)の育成施設はあっても、ファシリティドッグを育成する専門の施設がないため、シャイン・オン・キッズでは、アメリカから連れてくるという形をとっているようです。
ファシリティドッグの普及活動に貢献したベイリーの引退
日本のファシリティドッグはこれまでに「ベイリー」「ヨギ」「アニー」がいます。特別な訓練を受けたファシリティドッグたちは、多くの患者さんとそのご家族の心を癒す存在です。
ベイリーの引退
ベイリーはオスのゴールデンレトリバーで、日本国内で初めてのファシリティドッグです。2010年に静岡県立こども病院で活動をはじめてから、2012年には神奈川県立こども医療センターで緩和ケアチームの一員として常勤し、延べ2万4千人の多くの患者さんとそのご家族の心の支えとして活躍をしてきました。
ベイリーは、10歳の誕生日を迎えてから、日々の業務は後任のアニー(ゴールデンレトリーバー)が引き継ぎ、2018年10月16日に引退しました。引退後はボランティア犬として第二の犬生を歩んでいます。
現在活動しているファシリティドッグ
2018年11月現在、国内で活躍している2頭のファシリティドッグをご紹介します。
ヨギ
オスのゴールデンレトリーバーの「ヨギ」、静岡県立こども病院にて活動中です。
アニー
メスのゴールデンレトリーバーの「アニー」、ベイリーの引退後、神奈川県立こども医療センターにて活動中で、メスとしては日本初のファシリティドッグです。
ファシリティドッグのハンドラーになるには
日本におけるファシリティドッグのハンドラーは2人しかいません。(2018年11月現在)ファシリティドッグのハンドラーになるためには、特別な専門学校でハンドラーの資格を取得するのではなく、自分で「認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ」に問い合わせる方法しかありません。
医療従事者として医療のことや患者さん、患者さんのご家族、病院スタッフ、ボランティアさんなど多くの人々と関わり、子ども達の命と向き合いながら、ファシリティドッグと共に勤務するので、ただ犬が好きという理由では務まる業務ではないことを理解しなければなりません。
ファシリティドッグを応援しよう
小児がんなどの重い病気と闘う子ども達と家族を支援するための「ファシリティドッグプログラム」を行なっている、シャイン・オン・キッズは、個人や団体、企業の寄付による非営利目的の活動をしています。
日本にファシリティドッグが1頭でも多く増えるために、重い病気や辛い治療と闘っている子ども達とご家族のために、ファシリティドッグを応援したいという方は、一度「認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ」のホームページを見てみてください。
支援する方法は、寄付や実際に行うボランティアだけではありません。FacebookやInstagram、Twitterのチェックやシェアをすることも、一人でも多くの人に活動を知ってもらうためのボランティア活動の一つとなります。
【認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ公式HP】
http://sokids.org/ja/
最後に
日本初の小児病院に常勤する特別な訓練を受けた「ファシリティドッグ」は、病気と生きる子ども達の心を癒し、辛いとき不安なときには勇気をくれる、人間の心に寄り添う犬として、たくさんの子ども達を笑顔にしています。
いつの日か、日本にファシリティドッグの育成施設が誕生することを願うばかりです。今回は、ファシリティドッグについてご紹介しました。
<引用、参考>
・認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ
http://sokids.org/ja/
・地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こども病院
http://www.shizuoka-pho.jp/kodomo/guidance/feature/facility-dog/
・地方独立行政法人 静岡県立病院機構 神奈川県立こども医療センター
http://kcmc.kanagawa-pho.jp/
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