【獣医師コラム】ドッグパッド愛犬相談室 第1回 犬の異物誤飲「犬が間違えて食べちゃったアレ」

飼い方

愛犬と暮らす生活の中で「ヒヤリハット」を体験したことはありませんか?一見平和に見えるペットライフにも実は多くのヒヤリハットが隠されているかもしれません。動物行動学を学び、多くの愛犬関係の事故に携わってきた獣医師の経験から、実際に起こってしまったケースを事例にペットライフに隠れたヒヤリハットをご紹介します。

1件の重大事故の背後には300件のヒヤリハット(事故寸前の出来事)が隠れているというハインリッヒの法則があります。事故を予防するためにも是非参考にしてください。

ドッグパッド愛犬相談室 第1回 「犬の異物誤飲」

ドッグパッド愛犬相談室 第1回 「犬の異物誤飲」

第1回目は犬の異物誤飲による腸閉塞が起こったケースについてみていきましょう。

※登場する人物や犬の名前等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

愛犬の異物誤飲トラブル体験談

相談者Aさん:「おうちでは私と夫と娘と、中齢のキャバリアのマロンちゃんと暮らしています。

マロンちゃんは幼少期から好奇心が旺盛で、いろんなものを舐めたり噛んだりすることがよくあり、お菓子の包装を食べてしまったことがありました。幸いそのときには大ごとにはならず、うんちと一緒に出せたのでよかったのですが、その後も食べ物意外のものを舐めたり噛んだりしてまた飲み込んでしまわないか心配だったのでマロンちゃんが届く場所に口にしちゃいそうなものは置かないように対策をしていました。

先月、マロンちゃんが突然ご飯を食べなくなって、うずくまっている時間が長くなったように感じたので、食欲が無くなった次の日に動物病院に連れていきました。普段から変なものを食べないように気をつけていたのでその可能性はないだろうと思っていたし、暑い日が続いていたので熱中症とかお腹の調子がよくないんだろうなと思っていましたが、病院で検査を受けてみたら、腸に何かが詰まっていて消化ができなくなっている状態で、翌日に緊急の手術になりました。

手術を行いお腹の中から取り出されたのはぐちゃぐちゃに丸まったマスク!どうやら夫が帰宅した際に置いてしまったマスクを知らず知らずのうちに食べていたみたいです。

手術で無事にお腹の中のマスクを取り出して元気になったのでよかったのですが、こんなにも気をつけていたのにマロンちゃんが変なものを食べてしまったことはとってもショックでした。お家でご飯以外のものを食べてしまわないようにするにはどうしたらよいのでしょうか? 」

犬の異物誤飲による腸閉塞について獣医師の解説

犬の異物誤飲による腸閉塞について獣医師の解説

では、ここからはマロンちゃんに起こったトラブルについて獣医師Tが解説していきます。

Aさんのマロンちゃんについてのお話から重要な点をまとめると、

・幼少期から色々なものを噛んだり、食べてしまうことがあった

・食べてしまいそうなものを遠ざけるなど注意していたのに再発してしまった

・調子を崩した時に原因に気づかず、検査、手術をして初めてマスクの誤飲に気づいた

という3点が挙げられますね。

まず、今回のマロンちゃんのように食べ物ではないものを飲み込んでしまうことは獣医療の用語では異物誤飲と呼ばれ、マスクが腸管に詰まって消化機能を妨げてしまったという今回のケースは、異物誤飲による腸閉塞という状態にあたります。腸閉塞は人でも起こることですが、場合によっては命に関わることもある危険な状態です。

このような危険な状態を避けるためには予防をすることが第一ですが、万が一異物誤飲が発生してしまったときには早期発見、そして早期解決を図ることが重要になります。

異物誤飲を起こす犬の傾向

最初に重要なポイントとして挙げた一つ目にある「幼少期から色々なものを噛んだり、食べてしまう」という点ですが、動物病院に異物誤飲でやってくる動物は、幼齢のコもいればある程度年齢を重ねたコもいます。

しかし、成熟した動物で異物誤飲を起こすコの共通点として「幼少期に異物を食べてしまったことがある」という傾向がみられるケースが多いです。 犬や猫は幼少期に特に好奇心が強く、見慣れないものを興味本位で舐めたり噛んだり食べてしまうことがあります。大人になるにつれてその傾向は弱くなりますが、子供の頃になんでも食べてしまう習慣をもっているコは、成犬や成猫になってもその習慣が続いて異物誤飲を起こしてしまうことが多いといわれています。

①異物誤飲を予防するために飼い主ができることは「愛犬のしつけ」

犬猫の飼い主として重要なことは、幼いうちから愛犬のご飯やおやつ以外の食べ物を食べることがないようにしっかりとしつけをすることが異物誤飲を予防する最良の方法です。

ここで大切なことは「食べ物以外を食べさせない」ではなく「ワンちゃんの食べ物以外を食べさせない」ということです。

犬が家具や生活で使用するものなどを食べようとしたときに、止めさせるしつけをする飼い主さんは多いですが、人のご飯やおやつを拾い食いしてしまうことが悪い習慣へとつながってしまうため、拾い食いをしないようにしっかりとしつけを行うことが重要です。

このとき、後から犬を叱っても愛犬は理解することができずにストレスを与えてしまうだけになってしまうので、拾い食いなどがあったときにその場で犬に指摘をすることが大切になってきます。

②異物誤飲の予防には「室内を片付ける」ことも重要

②異物誤飲の予防には「室内を片付ける」ことも重要

犬の性格によっても異なりますが、成犬になっていろんなものを食べてしまう習慣を持っているワンちゃんをしつけで改善させることは、月齢の若い犬たちと比べてもかなり難しくなるケースが多いといわれています。

今回の相談者Aさんも、マロンちゃんの性格や習慣を理解していたので注意はしていましたが、それでも事故が起こってしまいました。

「気をつけていても異物誤飲が起こってしまった」という部分は、今回のケースで2つ目の重要な点となります。

生活の中で異物誤飲が起こらないようにするために具体的にどのような注意が必要か考えていきましょう。

今回の場合では、帰宅後に室内に置いてしまったマスクをちゃんと片付けていなかったことが原因ですが、室内が整理されていないことからワンちゃんに食べてしまうということはよくあることです。

犬の異物誤飲の予防策としてできることとしては、室内をしっかりと片付けることです。ペットと暮らす方は特に気をつけたいことですね。

犬はオオカミから進化した生き物で、おもちゃや小さな物を使って遊んでいるうちに狩猟本能から無意識に食べてしまおうすると考えている学者もいます。食べてしまいそうにない物であっても口にできないように、そして届かないように管理をすることは大切です。

そのほかにも、ドッグフードやおやつの袋、人の食べ物に関わるものも犬の届かない場所に保管する必要があります。 盗み食いをすることはもちろんいけないことですが、盗み食いをした際に破れた包装ごと飲み込んでしまうという事故も動物病院ではよくみられることなので、注意をする必要があります。

③愛犬に異変がみられたらそのままにせず動物病院を受診すること

3つ目に、「調子を崩した時に原因がわからなかった」という点も非常に重要なことです。

異物誤飲を起こして動物病院に来院される飼い主さんのなかには、元気がないけど原因がわからなかった。また、暑かったまたは寒かったなどの天候の変化などが原因なのではとご自身で判断されたことで動物が最初に調子を崩してから時間が経ってから受診をされる方がいます。

異物誤飲は命に関わるケースもあるので、早期発見、早期解決が求められます。

普段から異物誤飲を起こさないように生活環境を整え、愛犬の様子をよく観察し、もし元気が無くなったりお腹の調子に異変があった際に、お家の中で無くなったものがないか、散歩中に落ちているものに興味を持ったり食べようとしていなかったかなども考えることが大事です。

気になることがあればかかりつけの獣医師に相談するようにしてください。

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第1回ドッグパッド愛犬相談室、いかがでしたでしょうか?

愛犬の行動やしつけのことでわからないこと、気になること、獣医師に聞いてみたいことなどがある方はドッグパッドまでお気軽にお問い合わせください。

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獣医師T

獣医師。大学在学中はウイルス学の研究をしながら犬の行動学(しつけ)に関する学生団体に参加し、卒業後は動物病院での勤務を経てペット関係の企業で勤務。ワンちゃんについて勉強したことやこれから勉強することを社会に役立てられるように邁進中。

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