今では当たり前のように人間と生活している犬ですが、昔は他の野生動物と同じように野生の群れで生活していました。
では、野生だった犬がどのようにして人に懐き、生活を共にするようになったのでしょうか?
犬の起源から人と共に生活するまでの変化を一緒に見ていきましょう。
※犬の起源や歴史には諸説あります。ここでは、そのうちの1説をご紹介しています。
犬の起源
犬の祖先はミトコンドリアDNA(遺伝子)の研究からオオカミであることが確定しました。また、コヨーテも近縁です。
約100万年前に出現したといわれている犬の祖先は、アジアやユーラシア大陸にいました。
そして長い間、アメリカ大陸へと行き来していたと考えられています。
その頃の移動範囲はほぼ北半球だったようで、南半球では古代犬の化石は発掘されていません。
やがて広い範囲に分散し、草原地帯や砂漠地帯、水辺地帯などその地域の特性に合った体型や習性へと様々な変化をとげ、地域に合った犬の特徴が出来上がってきたと言われています。
犬とオオカミの似ているところ
外見はオオカミに似ています。
食性はオオカミともコヨーテとも似ています。
コヨーテは、げっ歯類などの小さい哺乳類や鳥類、両生類など様々な動物を狩ります。そして捕獲した草食動物の糞も食べることが分かっています。
オオカミは大きな獲物(鹿など)から、イノシシ、げっ歯目(ネズミ)などを捕獲して食べます。特に内臓を好んで食べるため、捕獲された動物の内臓に残っている一部消化された植物成分も食べています。
そして、両者とも果物や野菜なども食べていたことが分かっています。
このように、肉から野菜まで何でも食べる肉食寄りの雑食動物であることから、犬とオオカミやコヨーテは食性が非常に似ていることが分かります。
また犬も祖先のオオカミと同じように群れで生活する動物です。
犬の群れにもオオカミの群れにも、頼れる頼もしいリーダーが存在し、群れを引っ張っています。
人間社会で暮らす家庭犬にとってのリーダーは飼い主です。
犬が安心して頼れるように愛情をたっぷり注ぎ、信頼できるリーダーになる必要があります。
人と犬の結びついた歴史
人と暮らし始めた最も古い動物である犬は、壁画や化石などで人と犬の結びつきの記録が残されています。
約3,000年前の北アフリカの壁画には、人と犬が協力してバイソンというウシ科の動物を狩りしている様子が表されています。
またイスラエルでは、紀元前1万2,000年頃の人骨の化石の脇に犬の骨が丁寧に置かれているものが発見されています。
人の手が犬の体の上にきちんと置かれていたことから、その犬はペットとして飼われており、腕に抱かれていたことが分かります。
人と犬の出会いは諸説あります。
石器時代の子供が退屈しのぎに野生の犬の巣穴に入って、そこから子犬を連れて帰ってきたという説や、
オオカミの群れの中で最下位にいたオオカミが、餌にたどり着くこともままならず、群れから外れ人の住居付近でうろつくようになったことが出会いのきっかけになったという説などもあります。
このような説から、最初は子供の遊び相手だった犬を狩猟のパートナーとし、犬と共に生活をすることでお互いの利益になることを知り、生活を共にするようになったのではないかと思われます。
人は獲物を追跡して捕獲する技術が自分よりも格段に優れた犬というパートナーができ、犬はその報酬として食料と住居を確保することができたと推測することができます。
日本の犬の歴史
日本での犬の起源は不明です。
しかし、家畜化された犬を飼うという習慣が日本にも渡ってきたと考えられています。
日本人と犬の関わりの歴史について見ていきましょう。
縄文時代
縄文時代の早期の遺跡から犬が出土していて、この犬を縄文犬と言います。
埋葬されていた状態から、一部は家族の一員として飼われ、一部はそうではなく野生の犬もいたと考えられています。
日本書紀
日本書紀には、天武天皇から675年に4月1日から9月30日の間、牛・馬・犬・猿・鶏の肉食禁止令が出されています。このことからそれまで日本人は、犬を食べていたことが分かっています。
鎌倉時代
鎌倉時代には、武士の弓術修練の1つとして走り回る犬を丸い緩衝材付きの矢で射る犬追物や犬を闘わせる闘犬が盛んになりました。
江戸時代
江戸時代では、徳川綱吉が「生類憐みの令」を発布し、特に犬を保護していました。
犬を殺した江戸の町人が獄門という死刑になったということもあったそうです。
綱吉は愛犬家で狆(チン)という犬種の犬を100頭飼い、移動の際は駕籠(かご)で運ばせていたと言われています。
生類憐みの令は、綱吉の後を継いだ徳川家宣によって廃止されたとされています。
幕末
幕末の明治維新の頃には、開国や文明開化によって西洋人が日本に来日し、西洋の文化が入ってきました。
それに伴い洋犬を飼う習慣が流行したそうです。
現在の人間社会と犬の関わり
本来は番犬や狩猟のパートナーなどのために家畜化されたと考えられています。
しかし、現在ではほとんどが愛玩動物(ペット)として飼われています。
長い年月をかけて交配され、ラブラドール・レトリバーやトイ・プードルなど、用途に応じて様々な品種が作られてきました。
現在は、用途というよりは見た目の可愛さを求めて交配し作られた品種が増えてきています。
犬は次のような用途で人と関わってきています。
- ペット
- 人に癒しを与え、家族の一員として生活しています。
- 牧羊犬
- ヒツジや牛などの飼育のサポートをしてくれます。
- タレント犬・モデル犬
- テレビや雑誌などでタレントやモデルとして活躍しています。
- 番犬
- 人間の住居などを見張って、獣や不審者の侵入を防いでくれます。
- 補助犬
- 体の不自由な人を介助します。
- 麻薬探知犬
- 麻薬捜査の手助けをします。
- 警察犬
- 犯罪者の追跡や捜査の手助けをします。
- 猟犬
- 獲物を発見し追跡したり、撃ち落された獲物を捜索し回収したりします。
- 災害救助犬
- 東日本大震災などでも活躍してくれましたが、様々な被災地で被災者の発見や救助をしてくれます。
- セラピー犬
- 病院や老人ホームなどで患者さんの心理面のケアを行います。
この他にも、犬は私たち人間社会の色々なところで関わっています。
まとめ
犬の起源や歴史、人と犬の関りについていかがでしたでしょうか?
犬の起源や歴史は諸説ありますが、人と犬が長い間生活を共にしてきていることは確かな事実です。
そんな長い犬と人の歴史などについて一部をご紹介させていただきました。
まだまだ犬との歴史はたくさんありますし、いろいろな説があります。
犬の起源や歴史、人との関りなどを知るきっかけになってくれたらと思います。
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