公開日
2018/11/29

うちの子がチョコレート・タマネギ・ブドウを食べちゃった!その時どうする?

我々が日頃食べているものの中には、犬が食べてはいけないものが沢山あります。その中で犬が中毒を起こして致死的な問題を起こす可能性があるものは、チョコレート、タマネギ、ブドウ、キシリトール、アボガド、アルコールなどです。今回は犬で中毒を起こす代表的な食べ物の概要と治療法や対処法について解説したいと思います。

チョコレート中毒

チョコレート中毒とは

カカオ豆を原料とするチョコレートやココアなどに含まれる、テオブロミン、カフェインなどのメチルキサンチンの過剰摂取による急性中毒です。
獣医の教科書にはメチルキサンチン中毒と書かれているものもあります。メチルキサンチン中毒は、カフェイン、テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミンなどメチルキサンチン類による中毒をさしますが、犬ではチョコレートの盗食によって起こすことが多いため、一般的にはチョコレート中毒と言われることが多いです。

チョコレートは甘く犬にとっても美味しく魅力的であるため、一度チョコレートを食べた犬はチョコレートの味を覚え、積極的にチョコレートを探して中毒になることがあるのです。
年間通して起こり得ますが、巷にチョコレートがあふれる、バレンタインデーやクリスマス、イースターなどの時期に発生頻度が高くなります。

チョコレートに含まれるメチルキサンチンの量は、テオブロミンとカフェインの合計で考えますが、犬はテオブロミンの代謝が遅く、血中半減期(摂取された成分の血中最高濃度が半分になるまでの時間)が17.5時間と長いため(カフェインは4.5時間)、テオブロミンが体内に長く留まり中毒を起こしやすいと考えられています。

症状と中毒量

主な症状は、嘔吐、下痢、興奮、発熱、頻脈、徐脈、不整脈、けいれん発作、昏睡などで、重症化すると死に至ることもあります。
犬に対するメチルキサンチンの感受性には個体差がありますが、メチルキサンチンを体重1kg当たり20~40mg摂取すると軽度~中等度の臨床症状、40~50mg摂取すると心臓性不整脈、さらに、60mgを超えるとけいれん発作など重篤な症状が発現する可能性があります。死亡原因の多くは心臓性不整脈、呼吸不全、高熱による播種性血管内凝固(DIC)によるものです。つまり、不整脈を発現する可能性がある摂取量40mg/kgを超えると死に至る可能性があります。
また、犬においてテオブロミンのLD50(摂取した犬の50%が死に至る量)は100~200mg/kgと言われており、体重1kg当たり100mgを超える摂取量は特に危険です。

※数字で言われても想像できないという方が多いと思います。実際のチョコレートの量については後半に記載致します。

また、中毒にならなかった場合でも、チョコレートには高用量の脂肪と砂糖が含有されているため下痢などの胃腸症状を起こしたり、急性膵炎を発症することもあるため注意が必要です。
心配な症状があれば、動物病院を受診しましょう。

病院での問診

こんな方がいるかも知れません。『飼犬がチョコレートを食べてしまい慌てて病院に連絡したところ、様子をみるようにいわれた。知り合いの犬がチョコレートを食べたときには動物病院ですぐに吐かせる処置をしたと聞いていたのに、うちの子本当に大丈夫かしら。』
そこにはいくつかの理由があります。

飼主様が、犬がチョコレートを食べてしまったと病院を受診した際に、我々獣医師が必ず確認することがあります。
それは、①どの種類のチョコレートを、②どのくらいの量、③何時間前に食べて、④今どんな症状が出ている(症状は出ていない)のか、です。

チョコレートの種類による違い

メチルキサンチンの含有量はチョコレートの種類によって異なり、どんな種類のチョコレートを食べたのかによって緊急性が変わってきます。

製品 メチルキサンチン含有量(1gあたり)
カカオ豆 14~53㎎
ココアパウダー 27~28㎎
製菓用チョコレート 13~16㎎
ダークチョコレート 5~8㎎
ミルクチョコレート 1.5~2.5㎎
ホワイトチョコレート 0.03~0.05㎎

ホワイトチョコレートはメチルキサンチンの含有量は少なく中毒を起こすことはまずないでしょう。(ただし脂肪分や砂糖が多いため胃腸症状を示すことがあります。)
仮に、体重5kgの犬が、ミルクチョコレートを食べた場合には、約50g食べると軽度な中毒症状を発現する可能性があり、約100g食べると命に関わる症状が発現する可能性があり、約250g~500g食べるとその50%が死に至る可能性があります。
体重5kgの犬が、ダークチョコレートを食べた場合には、約20g食べると軽度な中毒症状を発現する可能性があり、約40g食べると命に関わる症状が発現する可能性があり、約100g~200g食べるとその50%が死に至る可能性があります。

ちなみに現在販売されている一般的な板チョコは1枚50~60gです。板チョコで考えると想像しやすいかもしれません。
体重5kgの犬なら、ミルクチョコレートの板チョコ1枚食べたら症状が出るかも、2枚食べたら重篤な症状が出て命に関わるかも、2.5枚食べたら危険!といった感じです。
体重10kgなら2倍、20kgなら4倍という計算になります。(犬ごとにメチルキサンチンに対する感受性の個体差があるためあくまで目安としてください。)

お菓子作りの際に使用する製菓用のチョコレートやココアパウダーも高いメチルキサンチン含有量であるため、チョコレートケーキなどチョコレート菓子にも注意が必要です。

上記のとおり、チョコレートの種類によってメチルキサンチンの含有量は異なるため、色が薄くて甘いものほど中毒症状を起こしづらく、色が濃く苦いものほど中毒症状が出やすいと覚えておきましょう。

食べてしまったときの対処法と治療について

残念ながら、チョコレート中毒に対する有効な解毒薬は存在しません。
もし飼犬がチョコレートを食べたことを確認したらかかりつけの動物病院に連絡しましょう。食べた量が多い、もしくは臨床症状が出ている場合には必ず病院を受診して下さい。
チョコレートを食べて2~4時間以内で、けいれん発作が起こっていない状態であれば、動物病院での催吐処置や胃洗浄が勧められます。しかし、チョコレート摂取後、時間が経過している場合には、すでに吸収されていると考えて催吐処置や胃洗浄は行いません。催吐処置や胃洗浄は体にとって負担となるため、吸収されず胃内に残っていると考えられるときにのみ行います。必ず行う処置ではありません。
出ている症状に対して、対症療法を行います。けいれん発作が起きている場合には、抗痙攣薬を投与します。
また、多くの中毒と同様の処置として、点滴による水和や、吸着剤の投与を行います。
チョコレートの摂取量がごく少量で、症状の発現が認められない場合には、獣医師と相談し自宅で様子をみることもできます。

症状の発現はいつ?いつまで様子をみていればいいの?

チョコレート中毒を起こした場合には、チョコレート摂取後1~2時間で興奮などの活動性に関する症状が発現してきます。摂取後2~4時間で、嘔吐や下痢などの消化器症状が発現し、摂取後6~12時間後までには症状が発現することが多いとされています。
そのため、チョコレートを食べて中毒症状が発現していない場合、12時間監視して中毒症状が発現しなければ、中毒にはなっていないと安心しても良いでしょう。

中毒症状が発現してしまった場合、摂取したメチルキサンチンの量、中毒症状の程度、治療の積極性にもよりますが、一般的には症状は12~72時間で解決するでしょう。
ただし、二次的に急性膵炎になってしまったケースでは治療期間が長引くことがあります。

予防

前述したとおり、チョコレートは甘く犬にとっても魅力的なものです。無防備な状態で犬の手の届くところに置かないようにしましょう。

タマネギ中毒

タマネギ中毒とは

タマネギに含まれるアリルプロピルジスルフィドという化学物質が血液中の赤血球に対して酸化障害を及ぼし、赤血球を溶血させることで貧血に至る可能性があります。
犬の中でも秋田犬や柴犬などの日本犬は酸化障害の防御機能が弱く、タマネギ中毒を起こしやすいと言われています。
タマネギ中毒という名前ですが、タマネギに限らず、ニンニク、ネギ、ニラなどのネギ類の摂取で発症する可能性があります。また、タマネギの毒性は、茹でたり炒めたりといった加熱調理や、乾燥・粉末化といった加工をしても毒性が消失することがないため、注意が必要です。

中毒量

体重1kgあたり15~30gの摂取により、血液検査で貧血や赤血球の形態異常などの異常所見が検出される可能性があります。
例えば5kgの犬が、タマネギ1個を約200gとして、タマネギを半分弱食べると中毒症状を示す可能性があります。

症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、運動失調、頻脈、頻呼吸、粘膜の蒼白、黄疸、血尿などの症状を示す可能性があります。
一般的にはタマネギを摂取してから数日後に症状の発現が認められますが、大量に摂取した場合には1日以内に症状が出てくることもあります。

症状が発現していない場合でも、タマネギを摂取したことが確実である場合には、摂取してから数日以内に病院を受診し、血液検査を行って貧血や赤血球の形態異常がないか確認することが勧められます。

治療

残念ながら、タマネギ中毒に対して有効な解毒薬は存在しません。
タマネギ摂取後数時間以内であれば、催吐処置が有効です。時間が経過している場合には、症状に対する支持療法を行います。多くの中毒と同様の処置として、点滴による水和や、吸着剤の投与を行います。
また、貧血のモニタリングを行い、貧血が進行する場合には輸血が必要になる場合があります。
タマネギ摂取後早期に適切な治療が実施されれば、予後は比較的良いと考えられています。

予防

原因物質となるタマネギを含むネギ類を与えないことです。

ブドウ中毒

ブドウ中毒とは

ここ数年になって報告されている中毒です。ブドウの種類には関係なくその危険性が知られています。ブドウを原料としたレーズンも中毒物質となるため注意が必要です。
しかし実のところ、その原因物質は特定されていません。ブドウやレーズンに付着したカビ毒、残留農薬、ビタミンD類似物質、重金属、ブドウ由来の未知の成分などが原因物質の候補として考えられています。
私自身は、ブドウの皮を与えていた犬や、レーズン&ベリーミックスなどの人用健康食品を投与していた犬で嘔吐や腎臓病の発症を経験しています。

中毒量

体重1kg当りブドウは32g、レーズンは11~30gとされています。

症状

食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が発現することがあり、文献上はほぼすべての症例において6~12時間以内の嘔吐が認められたと報告されています。
また、のちに急性腎疾患、急性膵炎を発症する症例がおり、この腎臓病が問題となります。

治療

残念ながら、ブドウ中毒に対して有効な解毒薬は存在しません。
ブドウ摂取から数時間以内であれば催吐処置や胃洗浄が推奨されますが、経験的には、盗食というより、飼主様があげてはいけないことを知らずにあげてしまうケースが多く、時間が経過して、症状がすでに発現して来院されることが多いため、催吐処置や胃洗浄ではなく、症状に対する支持療法を行うことが多いです。

予防

他の中毒の可能性がある食べ物と同様に、無防備な状態で犬の手の届くところに置かないようにしましょう。

最後に

今回は代表的なチョコレート、タマネギ、ブドウの中毒について書きました。その他の中毒物質についてはまたいずれお話することに致します。