【ディスクドッグへの道vol.12】 自チームをプロデュースする

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これまで、中級者向けとしてディスクドッグチームのレベルアップを図るための内容に進み、前回まで2回にわたり、自チームの癖を犬・人それぞれについて考えてきました。
今回は、自分のチームの犬・人それぞれの癖・特徴を理解した上で、実戦に向けて人・犬各々がどのようなプレー(役割)をすることがベターなのか、それをプロデュースすることこそ、ディスクドッグ競技において、現時点での最良のパフォーマンスを発揮することに結びつくという考えに基づいてお話ししていきましょう。

大会出場クラスの戦況を予測する

愛犬とディスクドッグの練習を重ねていく過程で、競技に出場する機会も増えてくると思います。冒頭で自チームをプロデュースするとお話ししましたが、その為には自分たちが出場するクラスの戦況をある程度予測する必要があります。

予測というと、大袈裟に聞こえるかも知れません。初めの頃は想像と言うべきかも知れません。

また、ある程度は高い頻度で大会に出て、出場チームを見る機会が増えないと正確な予測は難しいかも知れません。これは、プレーだけでなく、他チームを見て特徴や優れた点、欠点などを冷静に見て、俯瞰した第三者的な視点でそのクラス全体の戦況を把握することが必要になるからです。

その為にも、大会に参加したら、出来るだけ出場チーム、特に自身の出場するクラスの他チームのプレーをよく見るようにしたいものです。

これは、ここでお話しするライバルチームの戦力分析だけでなく、自身のチームの参考にもなり得るからなのですが、その話しは今は控えることにします。

(この場面では、犬がよく集中して加速していくのが解ります。)

また、大会当日の気象条件もたいへん重要となってきます。どのチームも穏やかな気象条件下では目安となる1ラウンドあたりの獲得ポイントは数回見ているうちに分かってくるものですが、気象条件が加わると分析も難しくなってくるものだからです。

しかし、得意な風向きなどは早い段階で見て取れるでしょうし、その時に変化するディスクの軌道に対する犬の反応や癖なども見ることが出来ると思います。そんな事を考えながら各チームのプレーを見ていると、戦力分析に役立つことは勿論、退屈することはないと思います。

大会までに予習できること

私のような大会を生で見ている回数が多いチームにはすっかり遠ざかっていることかも知れないのですが、大会参加数がそれほど多くない時点でも他チームのことを知る手立てがあることをお話しします。

いま、ディスクドッグを主催する団体は大小幾つもありますが、NDAはじめ主立った団体では大会結果を詳しく調べることができます。(正会員か非会員かで異なる場合もあります)

その大会毎の結果(入賞記録ではなく、全チームのリザルト)を見ると、参加チームの細かい結果をも見ることができます。

例(1ラウンドのみ)を次に示してみましょう。

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 合計
A 6 6 6 6 6     30
B 4 6 6 4 2 6   28
C 10 × 8 10       28

ポイントが30P近く安定して獲得できているので、このラウンドの気象条件等のコンディションはまずまずだったということが解ります。

各チームのポイントに目を向けてみます。

Aチーム:6ポイント×5本の安定したゲーム運びです。ミドルエリアで正確にキャッチさせるのが上手いチームだと見て取れます。

Bチーム:ミドルエリアとショートエリアで6本投げ入れています。人は長距離のスローイングは得意でないかも知れませんが、犬のスピードを活かしたゲームが上手いチームだという特徴が解ります。

Cチーム:長距離が得意な投げ手なのが解ります。犬のキャッチもその長距離スローイングに付いていけるポテンシャルがあるようです。このラウンドはミスがあって28Pも挙げているので、ミスの有無で大きくポイントは変わりそうですが、爆発力のあるチームだということが解ります。

上の見立てはあくまでも単純な例ですが、これを数ゲーム並べて見比べると、ある程度の実力は見て取れるでしょう。こういったWEB上の予習なら、大会に参加できなくても可能なので、時間があれば試してみると発見も多くてなかなか面白いものですよ。

当日練習での軌道を見る

大会当日は公式にスローイングの練習時間を設けることが普通です。この時間を自らの練習に使うことは勿論なのですが、ライバルチームのスローイングの調子を見るにも貴重な時間になります。

もちろん、競技本番では、犬の動きを伴うので、まるで別人!とビックリするくらい変わってしまう方も中にはいらっしゃいますが、ポイント獲得の基本はスローイングの良し悪しです。この時のスローが風に対応できているのか、飛距離はどのくらいなのか、軌道から予測してどのような戦術で投げてくるのかなど、予測する材料は山ほど含まれています。

(この画像は私ですが、右足に重心移動が十分でないことが解ります。これでは、ディスクに角度を与え、しっかりと腕を振り切っていますが、ロングに届くかどうかは微妙なフォームです。この日の調子はいまイチといったところです。)

風に対して試験的に色々な投げ方をする方も居るので、投げ練習をまったく鵜呑みにしてはいけませんが、ディスク飛行の軌道・キレは戦況予測には必要な要素だと思います。

このように、自分の投げる順番待ちの時間も結構役立つものなのです。

自チームの戦術を組み立てる

さて、他チームの状況をみて、出場クラス全体の流れを予測できたら、何となくでも結構ですが、上位グループのポイントはどれくらいかを考えてみましょう。

その中で、今の自分と愛犬でどのようにゲームを組み立てるかを考えます。おおよそのラウンド合計ポイントを設定して、そのポイントを獲得するにはどのようなスローイングが必要かを考えます。

普段は出来ている以上のポイントを出すことは考えない方が得策ですので、先ずは可能な範囲でのゲームの組み立てをします。これは将来的にチーム力を高めていくのとは全く別の話で、あくまでも現在の自分たちの戦力をどう活かしていくかという考え方です。

【例1】あなたが普段は6Pゾーン(NDAでは飛距離30~37.5m)までをコンスタントに投げられ、愛犬は1分間に4回投げられるレトリーブが出来るとしましょう。
この時、無理をしない範囲でのベストは24Pとなりますが、気象コンディションが良く、自分がちょっと頑張れば8Pゾーン(37.5~45m)を投げられると確信出来るとします。
あなたの武器と言える8Pスローをこのゲームに組み入れるか否かを決めていくのがプロデュース力です。初めから、6Pを3本、8Pを1本と決めてかからなくても良いでしょう。
いざゲームを始めた段階で、流れを見ながら組み込むのも良いと思います。気をつけたいのは、「いざ、8ポイント!!!」と力みまくって伝家の宝刀?を抜くようなスローイングをすること。これは大体力んで失敗するパターン。距離を伸ばすのも平常心で行ないましょう。(私自身にも言ってやりたいことです…)

【例2】上記と同様のチームで話します。
何となく決勝進出が26Pあたりがボーダーラインになりそうだという戦況にあるとしましょう。先ほどのロングスローを1本混ぜるには、風向きが難しい状況に置かれている場合、チョロ(ラウンド終了間際にショートスローを1本挟んで、タイムアップギリギリにラストスローをミドル以上に投げ入れる為のベテラン技。大昔に私が考案・実戦し始めた戦術!)を挟んで、2Pを加え、ラスト5投目に6Pを成功させると合計が26Pに届きます。これも状況を見て先ほどの【例1】と同様のポイントを挙げる戦術が組み立てられます。

(場面はチョロですが、次の作戦を話しかけています。犬が注視してスタートしていることに注目。)

このように、ポイントの作り方は様々であることを先ず理解し、試していくことが実力アップに役だっていきます。

投げるのは自分ですが、作戦を立てるのはあくまでもプロデューサー、その戦術を冷静に実戦し、愛犬を活かしたゲームをすることを目指しましょう。

最後に

繰り返しになりますが、同じポイントでもどうポイント獲得をするのか、投げ手の自分と愛犬の動きを把握し、戦術を組み立てるプロデュース力を身につけられれば、アベレージポイントも上がり、ランキングも上向いていくでしょう。

大事にしなくてはいけないのが、愛犬に普段と違う短い距離や長い距離のスローイングをいきなり投げる様なことはしないこと、これは戦術を愛犬にも理解させなくてはいけないと言うこと。こういった愛犬と普段から戦術に必要な練習を積んだ上で、チーム全体をプロデュースする気持ちで大会に臨んでみてください。 きっと、違う風景が見られるはずです。

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大塚 裕

大塚 裕

1961年東京生まれ。現NDAコミッショナー。愛犬JACKEYと2001年にディスクドッグ世界大会に日本代表第1号として参戦。その後も2度日本代表となる。ディスクドッグの楽しさを広く知ってもらうことに喜びを感じている。

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