最近は気温が高い時期が長く、特に日本の高温多湿の梅雨から夏場にかけては犬にとても厳しい環境といえます。犬は気温25度以上、湿度50%以上の環境で熱中症のリスクが非常に高まります。犬の熱中症予防に必要なことをまとめました。
犬の熱中症と人の熱中症の似ているところ
7月1日から、「熱中症警戒アラート」が関東甲信の1都8県で運用が開始されたのを知っていますか?
湿球黒球温度(WBGT)と呼ばれる
①湿度
②日射・輻射などの周辺の熱環境
③気温
の3つを取り入れた指数が、33℃以上になると予想された場合に都道府県単位で発表されることになっています。
このシステムは私たち人間の日常生活における熱中症の危険度を示すものですが、私たちより暑さに弱い犬にとってはちょっとした油断が命の危機につながる状況を示していることに他なりません。
特に注意しなくてはならないのは、①の湿度です。
人は汗をかいて、それが乾く時の気化熱で涼しさを得て、体温を下げる効果が期待できますが、湿度が高いと汗が乾かずに熱が籠り、熱中症になりやすくなる、と言われています。
一方ワンちゃんの場合、もともと汗をかくこと苦手な動物であり、通常は長いマズル(鼻先)を通る空気が冷えることで体温を調節していますが、それによる体温のコントロールが追い付かないと、口を開けて呼吸をするパンティングという行動で体温を下げようとします。
しかし、人と同じで湿度が高いと熱の放出が上手くできずにやはり熱が籠って熱中症になってしまいます。
それに加えて全身を毛で覆われているわけですから、人より熱が籠りやすく熱中症のリスクは高いです。
犬の熱中症、死亡や後遺症の恐れも
人でも毎年熱中症による死亡例があるように、ワンちゃんでも熱中症による死亡例は毎年のように起きています。
熱中症で死亡する恐れ
熱中症による死亡率は、動物病院に緊急搬送された場合であっても約50%と想像以上に高いもので、絶対に楽観視することはできません。
とくに、体力のない若い犬やシニア犬や持病のある犬たちではリスクが高いとされていますが、持病がなくても、体力のある元気な犬であっても、熱中症にかかるリスクはあるのです。
死亡率の高さをしっかりと認識し、油断しないようにしましょう。
熱中症で後遺症が残ることも
命が助かった場合でも、重度の脱水によって起こる循環器障害や急性腎不全、
代謝性アシドーシス、凝固因子破壊による血液凝固異常、消化管潰瘍、出血性下痢、神経細胞死による脳障害など後遺症が残ることがあります。
犬の熱中症が起きやすいタイミング
気温や湿度に気をつけていても、ほんの少しの間違いや見逃しで熱中症に陥ってしまうことがあります。
夕方や夜の散歩後に熱中症にかかる
散歩の時間帯やアスファルトの熱に気をつけている飼い主は多いと思います。
しかし、午前中の散歩と午後の散歩では、犬の体力に差があり、その差によって熱中症になりえることを知っていますか?
朝早くは体力もあり、元気にお散歩に行くことでしょう。
しかし、朝の散歩を終え、ごはんを食べたり遊んだりしながら日中を過ごした犬は、少なからず朝と同じような体力はなくなっているはずです。
さらに、日中は空調の効いた室内で過ごしているため、多少気温が下がったとはいえ室内との気温差が大きい外を散歩することは、かなりの負担となります。
そうすると朝よりも熱中症のリスクは高くなります。
また、最近は熱帯夜が続くこともしばしば。
朝早くから夜中近くまで気温と湿度が高いこともあり、散歩による熱中症のリスクが高まっていることを覚えておきましょう。
扇風機で風を送っても私たちのような効果は少ない
私たちが扇風機などの風によって涼しさを感じるのは、汗が蒸発する際の気化熱のおかげです。
ということは、基本的に汗をかくことが苦手な犬では、風にあたっても涼しさを感じることは少なく、逆に目や口の中の水分が失われてしまうことになります。
そうすると、目を傷つけることになってしまったり、口の中のトラブルにもつながることもあります。
もちろん、室内の空気を循環させるために扇風機を動かすことは大切ですが、直接犬の体に風が当たることのないように気をつけましょう。
西日の差す部屋や窓際は要注意
空調を聞かせた室内であっても、夕方西日が差す部屋は、思った以上に気温が高くなります。
また、窓際はどうしても日差しや外の気温の影響を受けやすい場所です。
冬場であれば暖かく過ごしやすい場所であっても、夏場は危険です。
可能であれば夏場はそうした場所を避けて休憩スペースを作ること、どうしてもそこから離れたがらない場合には、窓ガラスに遮熱シールを貼ったり、冷感マットを敷くなどして対応しましょう。
エアコンや扇風機は止まる可能性があることを忘れない
夏場は特にゲリラ雷雨などによって停電が発生し、エアコンや扇風機が止まってしまうことがあります。
その他にも、故障で冷気が出なくなるということも考えられますし、リモコンをテーブルに置いておいたら、たまたま停止ボタンを押してしまって止まってしまったなんてことも。
在宅中ならまだしも、留守中にそんなことが起これば、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
そのため、冷感マットや凍らせたペットボトルなどをタオルで巻いたものを置いておき、犬が自分の意志で涼しさを求められるような場所を作っておきましょう。
最近はIOT家電など、外出中に部屋の気温をモニタリングし、操作できる機能を持つものも増えてきました。
このようなアイテムも上手に活用したいですね。
熱中症に気付いたときの対処法
熱中症は早期発見早期治療が第一!
とにかくいつもより元気がない、食欲がないといった些細な変化を見逃さず、手遅れになることを防ぎましょう。
かかりつけの動物病院へ連絡する
まずはかかりつけの動物病院へ連絡して様子を説明しましょう。
自宅で様子を見た方がいいのか、すぐに動物病院へ連れてきた方がいいのかはっきりします。
その際には、いつから様子がおかしいのか、どのような状況なのかなど、分かる限り詳細に伝えましょう。
連絡している間も身体を冷やしながらの方が理想です。
ぐったりしているような場合には、熱から脳を守るために頭部を冷やすことと、首、腋窩、鼠径部など太い血管の通る部分を重点的に冷やしましょう。
意識もしっかりしていて、自分で水が飲めそうな場合には、室温程度の水を与えてみましょう。
ここで冷えすぎた水を与えると、今度はお腹を壊す原因となり、さらなる脱水症状の引き金となってしまう場合があるので注意が必要です。
動物病院に向かうときは、身体を冷やしながら
動物病院に向かう必要がある時にも、上記で説明したように、脳や太い血管の通る場所を冷やしながら向かいましょう。
ここで注意が必要なのは、車を使用するときに、車内が暑い状態で乗せてしまうと熱中症を悪化させることに繋がる場合がありますので、急ぐ必要はありますが、車内を十分冷やしてから、使うようにしましょう。
最後に
同じような生活をしていても、はるかにワンちゃんの方が熱中症のリスクにさらされています。 正しい知識を持ち、安全に夏を楽しみましょう!
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