公開日
2019/05/23

【獣医師監修】犬の心肺蘇生を知っておこう

愛犬の呼吸がない!心拍もない!このような緊急事態が起こったとき、飼い主さんはパニックになってしまうでしょう。しかし、慌てている数秒の間も、愛犬に心肺蘇生術を行えば、命を助けてあげられる可能性が高まります。今回は、獣医師監修のもと、犬の心配蘇生法についてご紹介します。

犬の心肺蘇生!もしもの時に備えて

「愛犬が倒れている!」飼い主さんは驚きパニックになってしまうかもしれません。事故や病気など愛犬にもしものことがあった際に、心肺蘇生法を知っていれば最悪の状況を防げる可能性があります。

心肺蘇生とは

心肺蘇生(CPR, cardio-pulmonary resuscitation)は、心肺停止に陥った犬に対して救命処置として、人工呼吸と胸部を圧迫する動作(心臓マッサージ)を組み合わせて行うものです。

心臓のポンプ機能は代償できないため、心停止は死に直結します。心肺蘇生の目的は一度止まった心臓を再拍動させることです。

心肺蘇生を行うことで、心肺停止状態の犬の脳や臓器に酸素の含まれた血液を送ることで、心拍や呼吸が再開するまでの間、臓器の機能の維持や細胞の酸欠、壊死の進行を抑えることができます。

心肺蘇生は時間との戦い

心肺蘇生は時間との勝負なので始める時間が遅れるほど、犬は深刻なダメージを受けます。心停止から心肺蘇生を実施するまでの時間が1分遅れるごとに7~10%蘇生率が低下するといわれています。

こんな時は心肺蘇生が必要

心肺蘇生が必要な状況と心肺停止を確認する手順を知っておくと、素早い対応ができます。

心肺蘇生を行うべきか、落ち着いて順番に確認しよう!

愛犬がぐったりと横たわる姿にびっくりしてしまうかもしれませんが、心肺蘇生を行うべきなのか、落ち着いて順番に状況を判断することが、愛犬を助けるために大切なことです。

心肺蘇生までの手順1:倒れている犬の確認と安全確保

もし愛犬が倒れていても、すぐに心肺蘇生を行ってはいけません。犬を驚かさず、周囲の安全を確認してからゆっくり近づきます。

※状況確認の際は、飼い主さんの安全確保が第一となり、怪我をしないように細心の注意を払わなければなりません。

心肺蘇生までの手順2:意識があるかの確認

犬が急に暴れる可能性があるので、注意しながら犬の下半身に触れて、反応がない場合は「意識がない」と判断をします。周囲に手伝ってくれる人がいる場合は、応援を求めましょう。

意識がある場合は心肺蘇生の必要はありませんが、すぐに動物病院に連絡をします。

心肺蘇生までの手順3:体の力が抜けているか

意識がないものの、体に力が入っている場合は、パニックになった犬に咬まれる恐れがあるので心肺蘇生はできません。

意識がないと思われる犬の後ろ足を少し持ち上げ、手を放したときに力がなく落ちたら「体の力が抜けている状態」と判断し、すみやかに心肺蘇生を行います。

※動物病院における心肺停止の見極めは「呼吸停止」と「意識消失」です。呼吸をしていない + 舌を引っ張っても戻る反応がない場合には意識がないと判断して心肺蘇生をスタートします。
心停止時に起こる「あえぎ呼吸」などによって判断が難しい場合には脈を確認し、脈なしなら即座に胸部圧迫を開始します。

飼主様がご自身で意識がないことを確認するには、上記の方法で確認するのも良いでしょう。

犬の心肺蘇生の方法

ステップ1.左側を上に体位変換

心肺蘇生を行う際は、より多くの刺激を与えるために、犬の左側の体を上にするのが基本です。もし右側が上の場合は、慎重に体位変換を行います。

ただし、左上、右上に関してはあまり重要なファクターではないという考えもあるほか、体位変換で犬に害が及ぶ可能性がある場合や周囲の応援がなく1人で行う場合は、そのまま処置を続けるのも判断の1つです。

ここからは、左側を上にした体勢での解説となります。

ステップ2.気道確保

1.空気が通りやすい体勢にするために、倒れている犬の背中側に回って膝をつく

2.右手で両犬歯の間に親指と中指を入れて犬の上顎だけを持ち、前にひっぱり首を伸ばす

※人間の気道確保のように下顎ごと首を伸ばそうとすると喉を圧迫して呼吸を止めてしまうので注意

3.空気が通りやすいようにマズルから肺をまでを一直線にするように首を反らす

4.舌根沈下による窒息を防ぐために、舌を少しだけ引っ張り出す

※滑ってしまう場合はタオルなどを使うこと。舌はひっぱりすぎると気道が狭くなるので注意

ステップ3.呼吸と脈拍(心拍)の確認

  1. 右手で上顎を持ち気道確保をしながら、お腹の膨らみ方やマズルからの音で呼吸をしているか確認する
  2. 左手は内股の動脈を触って脈拍があるか確認をする

呼吸があり脈が触れる

呼吸があって脈が触れる場合は、心肺蘇生の必要はないので、すぐに動物病院に連絡し、その後の対処方法を確認しましょう。

ただし、心停止をしていても腹部が動き、口をパクパク動かし呼吸をしているように見える場合もあるので、異常な呼吸をしている場合は人工呼吸が必要となります。

呼吸がなく脈が触れる

呼吸がなくて脈が触れる場合は、人工呼吸を行いすぐに動物病院に連絡し、その後の対処方法を確認します。もし脈が触れなくなったら、すぐに心肺蘇生(心臓マッサージ)を行います。

呼吸がなく、脈が触れない、または脈があるかわからない

呼吸がなく脈も触れない場合や脈があるか判断できない場合は、すぐに心臓マッサージを行います。同時に手の空いている人は動物病院への連絡と搬送する車の準備をしてください。

ステップ4.人工呼吸

呼吸が止まると犬はすぐに低酸素症になり、その後心停止を起こすため、呼吸がない、呼吸がおかしいと感じたらすぐに人工呼吸を行います。

1.首輪やハーネス、洋服など気道や胸を圧迫するものを外す

2.口を開けて何も詰まっていないことを確認し、もし詰まっていたら取り除く

3.少し舌を出したまま口を閉じ、マズルを両手で包み鼻だけを出すように持つ

4.気道を確保しながら頭を少し持ち上げる

5.鼻に口をつけて1秒息を吹き込み(マウストゥノーズ)、胸が膨らんでいるかを確認する

※1秒以上吹き込むと胸に圧力がかかり心拍を減らすので注意
※子犬や体が小さな犬は鼻と口を同時にくわえて息を吹き込む(マウストゥノーズアンドマウス)

6.鼻から口を放して息を吐かせる

7.胸の膨らみを見ながら1分間に10回を目安に人工呼吸を続ける

ステップ5.心臓マッサージ

呼吸も脈もなく心肺蘇生が必要の場合はすぐに心臓マッサージを行います。

犬を堅い場所に寝かせる

柔らかいベッドだと胸部圧迫ができないため、犬を堅い床や台の上で左側を上にして横に寝かせます。

圧迫点の確認

犬の背中側にまわって圧迫点がどこかを確認します。

・小〜中型犬の場合
犬の左肘が直角になるように曲げた時、肘で隠れる位置が圧迫点です。圧迫は肘を伸ばした状態で行います(心臓ポンプ法:直接心臓に圧迫を加える方法)

・大型犬の場合
横になった犬の胸の一番高い位置を圧迫する(胸腔ポンプ法:胸腔内全体に圧を加える方法)

・パグやブルドッグなどの胸部が丸い犬種の場合
犬を仰向けにした状態で胸の一番高い場所を真上から圧迫する(心臓ポンプ法)

胸部の圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を繰り返す

2人で行う場合、胸部圧迫を30回に対して人工呼吸を2回のペースで、1人は胸部の圧迫を、1人は人工呼吸を行います。1人で行う場合は、胸部の圧迫を優先してください。

胸部圧迫の速さと強さ

胸部圧迫の速さは1分間に100〜120回のペース、30回の圧迫だと15〜18秒が目安となります。圧迫の強さは、犬の大きさによっても異なりますが、強く押すと骨折や気胸を引き起こすので注意しながら、犬の体が1/2か1/3が沈む強さで行います。

胸部圧迫のコツ

犬の心臓マッサージを行う際は、手のひらを下にして圧迫点に両手を重ね、肘をしっかり伸ばして、腰を支点に真上から内側に少し引き寄せるように上半身の体重をかけて行います。圧迫し続けるのではなく、押した分だけ圧迫を戻して血液を全身に流すイメージで行ってください。

犬の心肺蘇生後の対応

犬が息を吹き返すなど蘇生に成功した場合でも、多臓器不全などを防ぐためにすぐに動物病院に搬送を行います。搬送中も再び心肺停止に陥る可能性があるので、状態をしっかり観察しなければなりません。

心肺蘇生後にスムーズに動物病院に搬送するために、手伝ってくれる人達と連携をして、動物病院への連絡や車に犬を乗せる準備などをしておくことが大切です。

最後に

心肺蘇生法は知っておくと役立つ知識なので、事故や病気などもしもの時に備えて手順を確認しておきましょう。万が一の場合にすぐに対応できるように、意識の確認、気道の確保、圧迫点の確認、心臓マッサージのペースなどイメージトレーニングをしておくと安心です。