犬の散歩は愛犬の健康管理にとって大切なことです。でも好き勝手に歩かせて飼い主さんが引っ張られると、交通事故に遭うこともあります。楽しいお散歩ができるようにお散歩のしつけを行いましょう。
犬の健康維持のためにお散歩は必要
犬にとってお散歩は、健康維持やストレス発散のために必要なものです。犬にお散歩が必要な理由を挙げると、
・外に出てさまざまな刺激を受けられる(社会化)
・他の犬とのふれあいができる
・体力・健康維持のため
・肥満防止・運動不足の解消
・精神的に安定させるための気分転換
・犬のストレス発散
・排泄を促せる
・飼い主さんとのスキンシップやコミュニケーションが取れる時間
・においチェックで、周辺の犬のにおいを嗅いで情報を得ることができる
・犬のしつけの一環である
このように、飼い主さんとのコミュニケーションや犬の体力を使わせて運動することはもちろん、特に毎日お留守番の多い犬にとっては、お散歩に出て歩き、外のにおいを嗅ぐことが心のリフレッシュとなります。
お散歩のしつけを始めよう
犬にとってお散歩で運動することはとても大切なことです。でも、お散歩のしつけを行わないと、グイグイ引っ張られたり、交通事故や他の人や犬とのトラブルになる危険もあります。安全にお出かけするためにもお散歩のしつけをはじめましょう。
飼い主主導のお散歩「リーダーウォーク」とは?
お散歩の基本である「リーダーウォーク」は、リードを持っている飼い主が主導になり犬と散歩をすることです。
リーダーウォークは、リードをつけて犬と散歩をするときに行います。リーダーであることを示すために、言うことを聞かない犬に対して、飼い主が力強くリードを引っ張って、自分のもとに引き寄せるためのものではありません。
犬がリードをつけられた範囲内において飼い主さんにコントロールされている状況で、犬が飼い主に従い、人間主導でともに歩くことと、犬の安全を守るための役割を持ちます。
リーダーウォークでトラブルを予防できる
いつも犬の好き勝手に行きたい方向に行かせて、飼い主さんが引っ張られて散歩をしていると、犬が急に道路に飛び出して思わぬ事故を起こす、他の犬とのケンカやトラブルに巻き込まれるといった可能性もあります。リーダーウォークでのお散歩ができることで、これらの危険性を未然に予防することができます。
楽しいお散歩ができるようになることが目的
リーダーウォークを行うことで犬が散歩をしたがらなくなるようなしつけ方法は、犬に大きなストレスがかかります。楽しく散歩をしながら、飼い主さんの指示に従うことが大切です。
また、犬の首は急所でもあります。思いっきりリードを引っ張ることで、首に大きな負荷がかかり頸椎や脊椎を痛めたりすることもあるので絶対に強く引っ張ってはいけません。
「リーダーウォーク」の練習をはじめる前に
リーダーウォークのしつけ方にはさまざまなアプローチがあります。犬の散歩時のひっぱりが強く、飼い主さんが引きずられるようなケースでは、専門のドッグトレーナーの訓練が必要な場合もあるでしょう。
多くの犬は散歩の時間に、歩くだけでなく外のニオイを嗅ぎ、他の犬と触れ合うことが楽しみでもあるので、外に出て興奮するのは当然のことです。
しかし、犬の瞬間的な飛び出しや強いひっぱり癖は、飼い主さんと愛犬だけでなく、街の通行人に対して思わぬ事故を起こす可能性もあるので、事故が起こる前にドッグトレーナに相談することをおすすめします。
まずはリードを正しく握ること
引っ張る原因の1つとして、飼い主さんが犬を前に引っ張らせるようなリードの握り方をしている場合があります。リードを使って犬と歩くときは、飼い主さんがリードをしっかり握ります。
リードの正しい握り方は、リードの輪の部分に右手の親指をかけてリードを垂らした状態で握ります。さらに左手でリードを上から掴むようにして持ち、両手を使って犬をコントロールしましょう。
犬の交通事故を防ぐために、基本は犬を飼い主の左側につけますが、反対の場合は左手の親指に輪を通して、右手で上からリードを掴みます。このリードの持ち方をして、リードを緩めて歩くことを目指します。
正しいリードの持ち方に変えることで、引っ張りがおさまることもあります。
リードをたるませることがポイント
常にリードがピンと張った状態では、リーダーウォークのしつけの方法の効果が発揮できません。お散歩中は飼い主さんと愛犬を繋いでいるリードがたるんだ状態になるように心がけましょう。
また伸縮性のあるロングリードは犬の自由な行動範囲を広げるので、ひっぱり癖のある犬は使用するべきではありません。
リーダーウォークの基本的なしつけ方法
リーダーウォークの基本的なしつけの方法は、リードをたるませた状態にさせて、犬が勝手な方向に行こうとしたら、飼い主さんは声をかけずに無言で正反対の方に引き返します。
引っ張られたらくるっと真逆の方向へ
左の方に行こうとしたら右へ、右の方に行こうとしたら左へ、くるっと回って逆方向に行くことを繰り返し徹底して行います。
犬にリードを引っ張らせずに、犬が引っ張ろうとする方向と反対の方向に誘導することを繰り返し、飼い主さん主導で行き先を決めて散歩をさせるようにしてください。
引きが弱くなったら手首で軽くリードを引く
これを繰り返して引っ張る力が弱くなってきたら、犬が勝手な方向に行こうとしたときに、人間の腕や洋服の裾を軽く引っ張るような強さで手首のスナップを使って、1回または2回軽くリードを引きます。
上手にできたら褒めることを繰り返す
犬が飼い主さんの方に近づいたか、勝手に行くのをやめたら「いいこ」と褒めることを繰り返すことで、リーダーウォークを学習させていきます。
練習を始めて間もない頃は、前に進み後ろに下がりを繰り返して、お散歩が進めないかもしれませんが、人間もイライラせず我慢して徹底して行います。
全く散歩にならないという場合は、まずは静かな公園などで集中してリーダーウォークを学ぶ短い時間を作って練習を行い、ひっぱり癖を弱くしていきましょう。
強い引っ張り癖のある犬の場合の対処法
犬の引っ張る状況によっても異なりますが、飼い主がリードを両手で綱引きをしてグイグイ引っ張られるような癖のある犬に対しては、飼い主が力で引っ張り返すことで、より抵抗して引っ張り癖が強くなってしまう可能性があります。
こういった場合は、力比べをするのではなく、大好きなおもちゃをポケットに忍ばせておいて、いうことを聞かなくなったらおもちゃで遊ぶほうが楽しいよ!ということを教える方法もあります。
引っ張るよりもおもちゃに集中することが、結果的に飼い主さんへの集中に繋がり、お互い無駄な力比べをする必要がなくなります。
これでも集中が取れない、暴走するという場合は、早い段階でドッグトレーナーに相談することをおすすめします。
おやつを使ったしつけの方法
おやつを使って興味を引かせることで集中を取り、リーダーウォークをさせる方法もあります。
1.まず飼い主がリードを常にたるんだ状態にさせておき、おやつを犬の鼻につけて与えることを繰り返し、集中を取らせ、引っ張らないようにコントロールします。
2.犬が集中して歩けるようになってきたら、「いいこ」と褒めながら、鼻につけたおやつを与える頻度を少なくしていきます。
3.さらに上手に歩けるようになってきたら、おやつを鼻につけるのをやめて、ときどきおやつを与えるようにし、引っ張りそうになったときだけおやつで集中をとるか、手首を使って軽くリードを引いてコントロールをし、最終的にはおやつがなくても引っ張らずに歩けるようになることを目指します。
成犬の「リーダーウォーク」のしつけ方
成犬のひっぱり癖は、子犬の頃から飼い主さん主導でのお散歩をしてこなかった、基本的な犬のしつけができていない、飼い主さんが犬をコントロールできていない、散歩への興奮が高すぎるといった理由で起こります。
基本的なリーダーウォークのしつけを行っても効果がみられない、対処できないという場合は、補助器具を用いて、矯正をすることもしつけ方法の1つです。
首輪やイージーウォークハーネス、ジェントルリーダーといった補助器具を使うことで、効果的にリーダーウォークの学習を行うことができますが、正しい使い方を行わないと犬が逃走したり、事故や怪我に繋がります。
対処できない犬に対してはドッグトレーナーに犬のひっぱり癖を相談するか、補助器具の正しい使い方のレクチャーを受けることをおすすめします。
他の犬に近づける前に飼い主さんに確認を
お散歩中に他の犬に会った際、犬同士が仲良く挨拶できることはとてもよいことです。でも、犬が大好きな犬もいれば、犬がとても苦手な犬もいます。
犬が苦手な犬に、むやみに他の犬を近づけてしまうと、怖いと犬が感じた瞬間にその場から逃げようとするでしょう。
動物には恐怖を感じたときに現れる闘争逃避反応という性質があります。もし逃げられない状況にあると次はフリーズといって固まり動かなくなります。さらに、恐怖(他の犬)が近づいて来たら最後に犬は攻撃をします。これが闘争逃避反応です。
大人しくしていた犬が急に他の犬に攻撃をしたり噛みついたりするのはこの闘争逃避反応によるものが多いですが、攻撃的な気質を持っている犬もいます。
犬の性格を知っているのは飼い主さんだけなので、お散歩中に犬同士がふれあう際には、飼い主さんに「ワンちゃんに犬を近づけてもいいですか?」と聞いてみましょう。これは、お互いの愛犬を守るとても大切なマナーのひと言です。
このとき、自分の犬が他の犬を苦手と感じているなら、無理に接触をさせないで「ごめんなさい犬が苦手です」と伝え、ふれあいを断る勇気も大切です。
通りすがりに吠えることをやめさせる基本の方法
お散歩時に他の人や犬に吠えてしまうと、楽しいお散歩の時間ではなくなってしまうことでしょう。
1. 前方から人や犬が来て犬が吠えそうになったら、その場に立ち止まりお座りか伏せをさせる
2. 犬に「大丈夫よ、平気よ」などと優しく声を掛けながら、頭や背中に触れる
3. 犬が吠えそうになったらリードを軽く引いて制し、「ダメ」と禁止の指示を1度だけ出す
4. 制止の言葉で吠えるのを我慢した時には、すかさず褒めてあげる
5. 対象の人や犬が通り過ぎるまで、お座りや伏せの体制は維持させる
最初のうちは吠えようとして立ちあがってしまったり、我慢できずに吠えてしまったりするかもしれませんが、繰り返し行っていくことで段々と我慢ができるようになっていきます。
我慢することができて飼い主さんに褒められたという良い経験を、たくさん積み重ねていくようにしましょう。
散歩中、他の人や犬に対して吠えてしまう!落ち着かせるしつけ方法
お散歩で歩かない犬への対処法
全ての犬がお散歩好きかといえば、そうではありません。犬によっては、散歩が嫌い、怖がってその場から動かない、自分の行きたい方法に行きたい、または抱っこして欲しくて頑固になっているなど、お散歩の途中で急に止まってしまい歩かないこともあります。
子犬が歩かなくなった場合
例えば、子犬を地面に下ろした時や交差点で信号が青に変わって急に車の大きな音を聴いた時に、驚きや恐怖で伏せるようにして動かなくなることがあります。
これは犬が不安や恐怖を感じて、身を守るためにお地蔵さんのように固まっている行動です。小学校付近の子供の声が聞こえる場所や踏切、大きな交差点、駅周辺、歩道橋、近所の吠えかかってくる犬がいる場所といった刺激の多い場所で歩かないケースが多いです。
犬が怖がって歩かない場合
最初に軽くリードを「ピッ、ピッ」と引っ張ってみましょう。からだをガタガタ震わせている場合は、無理をさせずに抱き上げて違う場所に連れて行くのも方法の1つです。
犬が大好きなボールやおもちゃをチラつかせて興味を引いたり、おやつを鼻の前まで持っていき、食べるか興味を持つかを試します犬が動くかを試してみましょう。
怖がっている犬に対して、怒ったり体罰を与える、無理に引っ張るという動作は恐怖を大きくするだけなので、飼い主さんが犬と楽しいお散歩をするように心がけましょう。
飼い主に甘えている場合
不安や恐怖を感じた場面で、飼い主さんに抱っこしてもらい危険を回避できた!と学習している犬は「不安」「恐怖」「抱っこしてほしい」などの歩きたくない時に動かなくなることがあります。甘えで歩かない場合は、抱っこはしないようにしましょう。確実に甘えによる原因がわかっている場合は、無視をして歩き続けて諦めさせる方法もあります。
こういった場合は、犬のペースに巻き込まれないように、飼い主が立ち止まることなく淡々と歩いてお散歩をするようにしてみましょう。
犬にとってつまらないお散歩コースの場合は、芝生でのにおい嗅ぎなど犬に刺激を与えることのできるお散歩コースに変更するのも方法の1つです。
お散歩の途中で、歩きながら「おすわり」「伏せ」「待て」といったトレーニングを行い、さらにできたらおやつをあげて、抱っこをしてもらうことへの集中を外していくと、おやつに興味が出て抱っこをせがまなくなるケースもあります。
頑固になっている
犬がお散歩で歩かないという理由の中には、草むらや電信柱のニオイを嗅ぎたい、大好きなお友達のワンちゃんや可愛がってくれる人のいるコース、川遊びができるコースや犬仲間達が集まるコースに行ってもっと遊びたい!まだお家に帰りたくない!どうしても違うお散歩コースに行きたい!あるいは、遠回りするのが嫌で、お散歩コースをショートカットして早くお家に帰りたい!という犬の主張から、引っ張っても歩かない、動かないケースがあります。
頑固になっている場合は、愛犬の好きにさせないようにして、次の犬の動きを予測して行動するようにしましょう。
大型犬のワンちゃんが、頑固になっていて動かない場合は、からだが大きいので引っ張ってもなかなか動いてくれないことでしょう。愛犬の思う通りにはいかないことを、学習させるためにはワンちゃんの動きを予想して、行動させない方法があります。
例えば、草むらや電信柱が大好きな犬は、最初からリードでコントロールして、草むらや電信柱に近づかないように歩かせましょう。
何かをひらめいたような雰囲気の高いトーンの声で「あ!そうだ!」「あれ?」「あ!」と声を出すか、ボールを床でバウンドさせて、犬が動いた瞬間にリードを軽く引くと動き出すことがあります。瞬間的に頑固の集中が途切れたタイミングを利用することがポイントです。
調子が悪く歩きたくない
体調が優れない場合や、暑い日にワンちゃんがすでに熱中症になっている場合「お散歩したくない」「歩きたくない」仕草をみせることがあります。特に高齢犬は、体調の良い日と悪い日のバラツキがみられるため、昨日は調子が良かったけれど、今日は歩かないということもよくあることです。
犬の調子が悪い時に無理にお散歩をさせる必要はありません。いつも元気でお散歩が大好きなワンちゃんが、歩かない時は、どこか具合が悪い状態なので、動物病院へ連れて行くか、お家で静かにからだを休める時間も必要です。
特に気をつけるのは熱中症です。熱中症は重度の場合は犬の命に関わります。お散歩の途中で歩かない場合は、お水をかけられるのであればからだに直接お水をかけて、風通しのよいところで様子をみるか、フラフラしていたり、横になってしまった場合は、すぐにかかりつけの動物病院に連絡を入れましょう。
ケガをして歩けない
脱臼や骨折、筋肉、靭帯の損傷、脊椎などの神経系からくる痛み(ヘルニアなど)で、急にワンちゃんが歩かなくなることもあります。走ったり、運動をしている時だけでなく、歩いてお散歩している時でもケガは起こる可能性はあります。
動けなくなる直前に大きな声で鳴いて痛がった、片足を上げたまま動かない、びっこをひいている、座ったまま立ち上がれない、遠くを見たまま固まって動かない場合は、無理に歩かせず一度犬を休ませ、どこが痛いのかを確認して、抱っこできる場合は抱えて家に連れて帰り、動物病院の診察を受けましょう。
病気で苦しくて歩けない
犬が何らかの病気で苦しさを感じて、4本足で立ったまま、伏せたまま、横になったまま、お散歩中に歩けない、動けなくなっているケースは気をつけなければなりません。例えば、心臓などに異変があった時に、さっきまで歩いていたのにピタリと動きを止めることもあります。
不安や頑固からくる「歩かない」ではなく「苦しさ」や「痛み」によって歩けないことがあるので、ワンちゃんを無理に歩かせずに呼吸や目の瞳孔の動き、歯茎の色などをチェックして、かかりつけの動物病院に連絡を入れましょう。特に心臓や気管支に疾患のあるワンちゃんは、普段から犬の様子を注意してみながらお散歩をさせましょう。
まとめ
犬と暮らすということは、飼い主さんが毎日一緒にお散歩に行って運動をさせてあげることが必要です。お散歩も人間と犬のコミュニケーションの1つです。犬が自分勝手の方向に引っ張ってお散歩をするのではなく、飼い主さんと一緒に歩くことができるようになることで、犬のわがままや思わぬ事故を防ぐことが出来ます。人間と犬との関係性のためにも「リーダーウォーク」は大切です。
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