東日本大震災の発生から今日11日で10年となる中、各地では震災の記憶や教訓を語り継ぐ取り組みが行われました。そんな中、個人として、愛犬家としてできることは何でしょうか。この機会に改めて愛犬の防災対策について見直してみましょう。
災害時 ペットとの避難の難しさ
台風などの災害では、事前に心構えができたり準備ができたりして、ペットとの避難にも余裕をもつことができるかもしれません。
しかし、突然の地震に際しては、その準備ができないことも多くあります。
事実、東日本大震災では着の身着のままで避難し、ペットは自宅に置いていかざるを得なかったという方も多くいました。
そして幸い一緒に避難所に行けたとしても、ペットに対する苦情から、避難所を離れなければいけない状況になった方もいます。
後に実施された東日本大震災に伴う自治体へのアンケート調査では、避難所でのペットのトラブルが報告されています。
アンケートの結果最も多かったのは、犬の鳴き声や臭いなどの苦情、他には「避難所で犬が放し飼いにされ、寝ている避難者の周りを動き回っていた」「ペットによる子どもへの危害が心配」などの声もあったとのことです。
さらに、避難所にはアレルギー体質の人がいることもあり、避難所内では人と犬が同じスペースで過ごすことが難しい、という報告もありました。
このように、災害発生時にペット、愛犬との避難は困難が多いことを心にとめておきましょう。
同行避難、同伴避難について確認しよう
災害によって避難が必要となった時に、一緒に避難することと避難所で生活することを分けて説明しているのが「同行避難」と「同伴避難」です。
しかし、正しくその意味を理解しているでしょうか。
環境省が発表している「人とペットの災害対策ガイドライン」では、次のように説明しています。
同行避難とは
「災害の発生時に、災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。」とあります。
ようするに、「同行避難」とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではありません。
また、内閣府が発表している「避難所運営ガイドライン」にも、同行避難とは、ペットとともに安全な場所まで避難する避難行動を示しています。
同伴避難とは
同じく、内閣府が発表している「避難所運営ガイドライン」では、「同伴避難」についても説明されています。
それによると、「同伴避難」とは、被災者が避難所でペットを飼養管理すること、としています。ようするに、同行避難とは避難する行動を定義する言葉であり、同伴避難とは、避難所において一緒に避難してきたペットをお世話することを定義する言葉ということです。
ただし、同伴避難について、「同じ空間で過ごすことが出来る」と勘違いしている飼い主さんも多いのではないでしょうか?
ガイドライン示されているのはあくまでも避難所で飼養管理することであって、同じ空間で、とは示されていません。そのため、同伴避難とは、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要です。
>>同行避難と同伴避難についてペット災害危機管理士の記事をみる
愛犬の避難グッズは準備できていますか?
災害発生時にすぐに避難できるよう、愛犬の避難グッズの準備をしておきましょう。避難グッズは優先順位をつけて準備、持ち出しできるようにしておくと良いでしょう。
優先順位1 動物の健康や命に係わるもの
- 療法食、薬(出来るだけ多く)
- ペットフード、水(少なくとも5日分[できれば7 日分以上]) ※水は貴重です。ペットボトル数本に「ペット用」とボトルにマジックで書いておくと避難所でもトラブル回避に役立ちます
- キャリーバッグやケージ(猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)
- 予備の首輪、リード(伸びないもの。また樹や椅子などに係留できる機能があると便利)
- ペットシーツ
- 排泄物の処理用具
- トイレ用品(猫の場合は使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部)
- 食器(使い慣らした物が良い)
優先順位2 情報(以下の情報を一枚に記入し避難バッグに入れておくと良い)
- 飼い主の連絡先と、ペットに関した飼い主以外の緊急連絡先・預け先などの情報
- ペットの写真(印刷物とともに携帯電話などに画像を保存することも有効)
- ワクチン接種状況、既往症、投薬中の薬情報、検査結果、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報
▲こちらは警視庁警備部災害対策課推奨の情報カードです。これ1枚で全ての情報が入っていますので、是非ご利用下さい。
優先順位3 ペット用品
- タオル、ブラシ
- ウェットタオル(大小あると便利)や清浄綿(目や耳の掃除など多用途に利用可能)
- ビニール袋(排泄物の処理用は黒を用意。他用途に利用可能)
- お気に入りのおもちゃなど匂いがついた用品
- 洗濯ネット(猫の場合は屋外診療・保護の際に有用)など
- ガムテープやマジック(ケージの補修、段ボールを用いたハウス作り、動物情報の掲示、など多用途に使用可能)
- 古新聞(汚物処理やタオルの代替になる)
- ドライシャンプー、ティッシュペーパー、爪切り
優先順位4 緊急品
- 防災頭巾(雨合羽の代用にもなる)
- ラバーシューズ(危険物が散乱した地面の移動)
- ゴム手袋(出血したペットの移動を手伝ってもらう場合)
- 包帯・口輪(緊急治療が必要だが、被災した病院で必要となる)
- レスキューメディ=精神安定香料(ストレス軽減とペットの精神安定)
- 笛、鈴、反射材(負傷した時に救助要請)
愛犬も一緒に家族で避難訓練を
災害発生時に慌てることがないよう、日頃からできる準備はしておきましょう。
まず災害時の情報をまとめておくことが大切です。避難指示が出た場合に、どこに避難をしたらよいのか、また、どのような避難ルートをとるべきかなど、自治体の広報紙やウェブサイトなどで調べておきましょう。
そして同行避難に備えて、「ペットと一緒に避難できるか」「飼育環境はどうなるか」などの確認が必要です。
実際に愛犬をケージやキャリーバッグに入れ、ペットを含めた家族全員で「避難訓練」をしておきましょう。マンションではエレベーターも使えなくなっている可能性が高いです。ペットを抱えて非常階段などを伝って避難場所に行ってみると、具体的な所要時間、危険そうな場所がみえてきます。
愛犬の命、家族を守るために
東日本大震災では、多くの人命が失われました が、それと共に多数のペットの命も犠牲になりました。犬については、震災により死亡した頭数については、青森県で少なくとも 31 頭、 岩手県で 602 頭、福島県では約 2,500 頭との報告がある他は、不明とされています。
東日本大震災から10年という今日、犠牲となった生命に想いを馳せ、今ある自分たちの暮らしを見直してみてはいかがでしょうか。
あなたの側で暮らす愛犬、家族の命を守るために、今日からできる防災対策を行っていきましょう。
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