公開日
2020/12/06

【獣医師監修】犬の生殖器に関する病気とは?不妊手術の意義について

近年、ワンちゃんを生後半年程度で不妊手術するのが一般的になっています。多くの飼い主さんはそのスケジュールに従って手術をしているでしょうが、果たして不妊手術の意義や意味合いを理解しているでしょうか。
今回は、犬の生殖器に関する病気をご紹介し、その上で不妊手術を行うメリット・デメリットについてご説明していきます。

犬の生殖器に関する病気は多くある

犬の生殖器に関する病気は、実は数多くあります。生殖器ということで、性質や罹患しやすい病気はオスとメスで大きく異なります。

オス犬特有の生殖器に関する病気

オス犬特有の生殖器に関する病気

まず、オス犬特有の病気についてみていきます。オス犬で注意すべき重要な病気は、前立腺肥大症と精巣腫瘍です。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は高齢のオス犬で見られ、未去勢のオス犬では、9歳を超えるとほぼ100%の発症率です。症状としては、前立腺の肥大による血尿や排尿障害、排便障害などが特徴的です。

精巣腫瘍

精巣腫瘍は、去勢していないオス犬で多く見られる腫瘍です。細かく分けると、セルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫に分類できます。

多くは良性の腫瘍ですが、転移する悪性腫瘍であることもあるので注意が必要です。

通常犬では、生後すぐの時期では腹腔内にあった精巣が30日ほどかけて陰嚢内へと下降していきます。しかし、稀にそのまま腹腔内に留まってしまうことがあり、これを潜在精巣と呼びます。この潜在精巣の状況では、精巣は通常と比べて約10倍腫瘍化しやすいと言われています。

高齢になるにつれて、精巣腫瘍の発症のリスクは高まります。

メス犬特有の生殖器に関する病気

メス犬特有の生殖器に関する病気

次に、メス犬に特有の病気についてみていきます。メス犬で注意すべき重要な病気は子宮蓄膿症と乳腺腫瘍です。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は子宮内に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。出産経験のない高齢のメス犬に多く見られます。性ホルモンが長期間子宮に作用することで細菌感染が起こりやすくなることが分かっています。

治療が遅れると死に至ることもある怖い病気です。

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は、乳腺の組織の一部が腫瘍化してしこりができる病気です。犬では、乳腺腫瘍のうち約半数が悪性化すると言われています。

乳腺腫瘍の発生には性ホルモンが深く関わっていると言われており、犬では避妊手術の時期によって発生率に違いが出ることが分かっています。

初回発情前に避妊手術を受けると、乳腺腫瘍の発生率は0.5%にまで抑制できます。一方、1回目発情後の避妊手術では8%、2回目発情後では26%にまで抑制効果は鈍くなります。

生殖器の病気に早く気付くためにできること

生殖器の病気に早く気付くためにできること

生殖器の病気で早期発見につながる特徴的な症状は残念ながら多くありません。子宮蓄膿症では陰部から汚れが排出される、乳腺腫瘍では胸にしこりが触れられる、などありますが、いずれも病気が進行して現れる症状です。

その他の症状としては、元気がない、食欲不振、多飲多尿(水をよく飲み、薄い尿を頻繁にする)、下痢などがありますが、生殖器の病気以外でも表れる症状です。

いずれにしても、異変に気づいたらどんなに些細なことでも動物病院で獣医師に相談することが重要です。また、1年に2回、最低でも1回は健康診断を受け、早期発見・早期治療へと進めるようにしておくことが重要です。

去勢・避妊手術で防げる病気もある

去勢・避妊手術で防げる病気もある

ここでご紹介した4つの病気は、すべて去勢・避妊手術で防ぐことができる病気です。

オス犬では、前立腺肥大症は、症状を呈した状況であっても去勢手術によって肥大していた前立腺が縮小し、症状を呈さなくなりますし、精巣腫瘍は転移していない限り、精巣を摘出したら予後は良好です。そもそも、早期に去勢手術によって精巣を摘出することで、この2つの病気には罹患しなくなります。

メス犬でも、避妊手術によって子宮蓄膿症に罹患することはなくなります。乳腺腫瘍に関しては、予防目的で避妊手術を行う場合、早期に行う必要がありますが、予防効果は絶大です。

この他にも、オスではマウンティングやマーキングなどの性行動を抑制することができ、共同生活を送る上でもメリットもあります。

一方、デメリットとしては、子供が作れなくなる点、また、手術後はホルモンバランスの変化によって太りやすくなる点があります。特に、太りやすくなる点には注意し、これまで食べていたフードを切り替える等の対策が必要になります。現在は、避妊・去勢手術を受けたワンちゃん用のフードが市販されているので、そちらを用いると良いでしょう。

また、もう一つデメリットとして、手術に当たって全身麻酔が必要になるという点が挙げられます。現在の進んだ医学でも、全身麻酔のリスクをゼロにすることはできていません

これらの点を考慮し、避妊・去勢手術を検討してみてください。

最後に

子供をどうしても残したい、等の特段の理由がない限り、私は避妊・去勢手術を早期に行うことをお勧めしています。確かにデメリットはありますが、致死的な病気を予防できる、というメリットの方が遥かに大きく感じるからです。ですが、飼い主さんにはぜひ、手術を受ける意義を理解したうえで検討していただきたいです。

なぜ行うのか、行わないとどのようなことになるのか、しっかり理解して、考えてあげましょうね。