犬を家族として迎え入れる場合、ペットショップで購入するだけが犬を迎える選択肢ではありません。ブリーダーから子犬を買う方法、保護犬の施設や団体から成犬を迎える方法もあります。今回は、犬を迎え入れる方法をそれぞれ紹介します。
ブリーダーから迎える場合
ブリーダーとは、犬を繁殖させて販売する業者のことをいいます。ブリーダーは都道府県に犬を販売するための”第一種動物取扱業”の登録を行い、基準を満たさなければ業務を行うことができません。必ず最初に、その業者が登録を受けているかを確認しましょう。
また、第一種動物取扱業の業者は、ペットを販売する際に、あらかじめ購入者に対して動物の現状を見せ、対面で文書を用いてその動物の特徴や適切な飼養方法などの18項目を説明しなければなりません。
犬種、性別、成犬になった際の大きさ、平均寿命、飼育方法、かかりやすい病気、不妊(避妊)・去勢手術について、動物愛護管理法について、病歴、ワクチン履歴、所有者について、動物取扱業の登録番号、繁殖者、遺伝性の病気についてなどの説明が販売業者からなかった場合は、トラブルを防ぐためにも、その業者がきちんと動物取扱業の認可を受けているかを、購入する前に必ず確認することが大切です。(詳しい内容は、この記事内の一番下に参考資料としてご紹介します。)
ブリーダーから犬を迎える流れ
ブリーダーから犬を迎え入れる場合には、探している犬種のブリーダーを自分で探したり、知人などに優良ブリーダーを紹介してもらうといった方法があるでしょう。
ブリーダーへの連絡
気に入ったブリーダーが見つかったら、まずは連絡を入れて以下のことを確認しましょう。
- 現在、購入できる子犬はいるか
- 母犬と子犬が暮らしている施設の見学は可能か
- 子犬の価格はいくらか
- その他条件があるのか
- もし購入する場合、受け取りが可能な日にちはいつからか
ブリーダーへの訪問
メス犬は1年に1~2回発情期を迎えるので、タイミングよく子犬がいて施設の見学が可能となった場合には、日程を相談してブリーダーのもとに訪問します。
ブリーダーへの訪問を断られたら?
もし、自分のもとにやってくる可能性のある子犬やその母犬を実際に見ることができない、見学を受け付けていないというブリーダーだとしたら、どうして見学ができないのかよく考えてみてください。劣悪な環境の中で繁殖が行われている可能性があるので、購入先の候補として選ばない方がよいでしょう。
中には、感染症を予防するために生後〇〇日までの訪問は行っていないとするブリーダーもいます。これは母犬と子犬の健康を守るためでもあるので、一切見ることもできないブリーダーとは意味合いが異なります。
この場合は、いつから見学可能なのか、見学の際に注意することは何かを直接聞いておくとよいでしょう。
ブリーダーを訪問する際のマナー
ペットショップや他のブリーダー訪問後は避けましょう
幼い子犬は感染症にかかりやすいので、ペットショップやブリーダーをはしごすることで思わぬ病気の菌を運んでしまう可能性があります。
先住犬は連れていかない
すでに犬と暮らしている場合、兄弟や姉妹として暮らすからと先住犬をブリーダーのところに連れて行くのはやめましょう。犬同士の感染が起こることも考えられます。どうしても連れていく必要がある場合には、必ず事前にブリーダーに事情を説明して許可を取りましょう。
訪問する人数を先に伝えておく
見学には何人行く予定なのかを事前に伝えておきましょう。特にお子さんがいる場合には伝えておくようにすることもマナーです。
見学後の連絡
実際に見学に行った時には、購入の条件や支払方法、引き渡し日時、子犬の食事のなど用意しておくグッズの確認、血統書がある犬を探している場合はその確認をします。
見学したブリーダーから犬を迎えるかどうかを検討して、後日返事をする時には、断る場合でも必ず連絡をするようにしましょう。
もし子犬をブリーダーから迎えることが決まったら、迎える当日の流れを事前にブリーダーに相談しておくことをおすすめします。
事前にバスタオルやおもちゃを預けておいて、母犬のニオイのついたタオルなどを引き取りの日に一緒に持って帰ってくると、初めて家にやってきた日に子犬が安心できるでしょう。
ブリーダーから犬を迎えるメリットとデメリット
メリット
ブリーダーから子犬を迎え入れる最大のメリットは、子犬が社会化を学ぶ最も重要な時期に、母犬や兄弟犬と過ごすことが出来るという点です。
この社会化期をどのように過ごすかによって、後々の性格形成や成犬になってからの行動に違いが出てくるといわれていて、母犬や兄弟犬と社会化期を過ごした犬は、問題行動を起こすことが少ないとされています。
そして、自分の家にやってくるかもしれない子犬とその母犬を実際に自分の目で見ることができること、大きくなったらどんな子に育つのかをイメージしやすいこと、ブリーダーと直接話ができるところも大きなメリットです。
また、優良なブリーダーはその犬種の専門家として、飼育方法やしつけの方法について分からないことが出てきた場合に、適切なアドバイスをもらうことができます。初めて犬を飼う初心者でも相談にのってもらえるなど、安心して犬を迎えることができるでしょう。
デメリット
優良なブリーダーでは、常に子犬が産まれている訳ではないので、自分が欲しいと思った時に連絡を入れても子犬がいない場合もありますし、次の出産予定がない場合もあります。
ここで注意するべきことは、たくさんの犬種や人気犬種の子犬が常時、数多く生まれているブリーダーは、パピーミル(子犬の工場)と呼ばれる大量の母犬を所有している悪質なブリーダーの可能性も否定できません。
ほとんどの優良ブリーダーは、限られた犬種を専門に扱っていて、犬種の特徴や病気について熟知した専門家でもあります。このため、犬と暮らす環境や条件が合わないと、子犬を購入させてもらえないことがあります。
生まれてからできるだけよい環境で育った子犬を探しているのであれば、優良ブリーダーのもとで、母犬と子犬が健康で大切に育てられた子を選ぶことを強くおすすめします。
ペットショップから迎える場合
ペットを購入する場合、最も簡単な方法はペットショップで選ぶことでしょう。
ペットショップには常に数種類の子犬が並んでいるので、その中から気にいった子犬を選ぶか、気になる子犬がいなければ条件に合った子犬を探して取り寄せてくれる場合もあります。
ペットショップもブリーダー同様に、”第一種動物取扱業”の登録を行い、基準を満たさなければ業務を行うことができません。
ペットショップから犬を迎える流れ
ペットショップの場合は、購入を決めた際に、早ければその日のうちに連れて帰ることができます。しかし、飼いたい気持ちが強くて飼い主の心構えや犬を迎える準備ができていなくてもショーケースに並んだ子犬を選んで購入できることから、飼育放棄であったり、やっぱり飼えないと愛護センターに自ら持ち込む飼い主や捨てられる犬も多く、このことが犬の殺処分につながっているともいえます。
ペットショップから犬を迎えるメリットとデメリット
メリット
ペットショップで犬を購入する最大のメリットは、常に数種類の犬種がいるので、どの犬種にするか迷っている場合には同時に見て比較できることです。また、ペットショップには、フードや犬用のグッズも扱われているので、必要な物が全てお店で揃えることができます。
ペットショップの中には、生体補償を付けて販売しているお店もあり、万が一指定の期日内に子犬が死んでしまった場合などでは、無償で別の子犬を受け取ることもできます。
また、ブリーダーへの見学のように、特に約束をする必要もなく自分の都合で来店して自由に見学することが出来る点もメリットといえます。
デメリット
現状、ペットショップに並んでいる子犬たちは、生後二ヶ月を迎える前には母犬や兄弟犬達と離されてしまっている場合がほとんどです。あまりにも早く離乳をが行われ、母犬と離されてしまった子犬達は、子犬にとって重要な社会化期を親や兄弟達と過ごせていないので、後になってそれが問題行動を引き起こす原因になる場合もあります。
※2019年に改正された動物愛護法では、56日規制といわれる生後57日を超えた子犬・子猫が販売可能とする規制が2年以内に施行されることが定められました。(国の天然記念物に指定された日本犬は生後50日から販売可)
また、ペットショップによっては衛生面に不安を覚えるような扱いをしているところや、不特定多数の人に消毒を行わずに長時間子犬を触らせるようなところもあります。
子犬を販売するためには、ある程度仕方のないことなのかもしれませんが、ペットショップで購入をする場合には、何度か訪問をして子犬に対する扱いをきちんと確認してから購入することをおすすめします。
たくさんの子犬を扱うショップの中には、子犬が遺伝的な病気や先天性の病気を持っていたり、感染症にかかっていたり、体調不良を起こしていても販売を行っている場合もあり、購入後にトラブルとなるケースも実際にあります。
購入を検討する際は、子犬がどこのブリーダーから来た子か、遺伝的な病気を抱えているリスクはないかをペットショップに確認することをおすすめします。
保護犬を迎える場合
犬を家族に迎え入れる方法はブリーダーやペットショップで子犬を購入するだけではありません。様々な事情で飼育困難とされ、ボランティア団体や公共の施設に保護されている犬を迎え入れる方法もあります。
保護犬を引き取る方法は、各自治体やそれぞれのボランティア団体によって違いがあるので、事前にしっかり確認をすることが必要です。
保護犬を迎えるときの流れ
一般的には、各自治体の愛護センターなどで定期的に開催されている譲渡会に参加するか、動物愛護団体(保護活動を行っているボランティア団体など)のある施設や譲渡会会場に行き保護犬の見学を行います。どちらから引き取る場合でも、犬を飼育することについての簡単な講習会や保護犬についての説明会のようなものへの参加が必須となっていることが多いようです。
また、各団体によって設定されている、飼育環境や家族構成、年齢など、保護犬の里親として迎え入れるためのいくつかの条件をクリアする必要があります。
保護犬を迎えるメリットとデメリット
メリット
保護犬の中には怖い思いや悲しい思い、辛い経験をしてきた犬がたくさんいます。こういった犬達を家族として迎え入れることで、殺処分をされてしまっていたかもしれない命を一つ救えることが、保護犬を迎える一番のメリットです。
しつけについては、トイレなどの基本のしつけが既にできている犬は、しつけの手間がかからない場合もあります。
費用面では、無料譲渡もあれば、団体によってはいくらかの寄付をお願いされる場合もありますが、ペットショップやブリーダーから購入する場合と比較すると費用負担はほとんどないといえます。
デメリット
保護犬は稀に子犬もいますが、ほとんどが成犬なので、子犬から飼育をしたい方には不向きといえます。また、どのような犬種がその時に保護されているかが分からないので、犬種や性別の希望があったとしても必ずそれに見合う犬と出会えるとも限りません。
気に入った犬が見つかっても、その犬が今度こそ幸せに暮らしていけるようにとの思いから、譲渡条件を厳しく設定している団体や、飼育環境の実地調査や住環境について書類の提出を行う団体もあり、正式譲渡にいたるまでにいくつかの手続きやトライアル(お試し期間)などが設けられていることもあります。
ペットショップのように気にいったから当日そのまますぐに連れて帰るようなことはできません。さまざまな条件をクリアして、本当の意味で家族として家に迎え入れるまでには少し時間がかかります。
保護犬は心に傷を抱えている子もいます。しつけができている子もいますが、中には虐待をされていた子、お散歩をしたことがない子、極度の怖がりな子、病気を患っている子など、さまざまなケースがあります。既に性格ができあがった犬と暮らしていくことは、しつけしにくいなど難しいこともあることを知っておきましょう。
まとめ
犬を家族として迎え入れる場合の、3つの方法について紹介してきました。
どの方法もメリットとデメリットがあります。可能であればブリーダーやペットショップだけでなく、保護団体も見学してみることをおすすめします。
海外では、子犬がショーケースに並んで販売されることが禁止されている国や地域もあります。 日本では、悪質なブリーダーによる見るに耐えないパピーミルの虐待映像や証言、悪質なペットショップの様子がメディアで取り上げられることも増えてきています。
飼えなくなって保健所に持ち込まれたり捨てられた犬達が殺処分になっている中、行政や企業、団体、ボランティアの人たちが日本の殺処分を減らす取り組みを行っています。
犬を迎える方法は、子犬を購入するだけでなく保護犬を迎える方法もあることを知っておきましょう。
※参考資料(業者による対面説明が必要な18項目)
- 品種等の名称
- 性成熟時の標準体重、標準体長その他の体の大きさに係る情報
- 平均寿命その他の飼養期間に係る情報
- 飼養又は保管に適した飼養施設の構造及び規模
- 適切な給餌及び給水の方法
- 適切な運動及び休養の方法
- 主な人と動物の共通感染症その他の当該動物がかかるおそれの高い疾病の種類及びその予防方法
- 不妊又は去勢の措置の方法及びその費用(哺乳類に属する動物に限る。)
- 前号に掲げるもののほかみだりな繁殖を制限するための措置(不妊又は去勢の措置を不可逆的な方法により実施している場合を除く。)
- 遺棄の禁止その他当該動物に係る関係法令の規定による規制の内容
- 性別の判定結果
- 生年月日(輸入等をされた動物であって、生年月日が明らかでない場合にあっては、推定される生年月日及び輸入年月日等)
- 不妊又は去勢の措置の実施状況(哺乳類に属する動物に限る。)
- 繁殖を行った者の氏名又は名称及び登録番号又は所在地(輸入された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては当該動物を輸出した者の氏名又は名称及び所在地、譲渡された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては当該動物を譲渡した者の氏名又は名称及び所在地)
- 所有者の氏名(自己の所有しない動物を販売しようとする場合に限る。)
- 当該動物の病歴、ワクチンの接種状況等
- 当該動物の親及び同腹子に係る遺伝性疾患の発生状況(哺乳類に属する動物に限り、かつ、関係者からの聴取り等によっても知ることが困難であるものを除く。)
- 前各号に掲げるもののほか、当該動物の適正な飼養又は保管に必要な事項
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